級マンションの一般販売
ない部屋 千代田区長が所有

東京・千代田区の区長が家族とともに所有する区内のおよそ1億円の高級人気マンションの部屋が、一般には販売されず通常、土地の所有者などに提供される「事業協力者住戸」と呼ばれる部屋だったことが分かりました。このマンションは区の許可を受けて高さ制限が緩和されていて、専門家は「抽せんをせずに部屋を優先的に入手した疑いがあり、きちんとした説明が必要だ」と指摘しています。取材に対して区長は「購入の手続きは家族が行ったので、詳しい経緯は知らない」などと話しています。

登記簿などによりますと、東京・千代田区の石川雅己区長(79)は東京・千代田区三番町にある地上18階建ての高級マンションのおよそ1億円の部屋を妻と次男と共同でおととしから所有しています。

関係者への取材やNHKが入手した資料によりますと、マンションの92部屋のうち3部屋は一般向けには販売されない「事業協力者住戸」と呼ばれる、通常、マンションの土地の所有者や得意客に提供される部屋でしたが、区長が所有する部屋はこの「事業協力者住戸」だったことが分かりました。

このマンションは立地のよさなどから販売前から人気が高く専門誌の特集にも取り上げられ、ほとんどの部屋が抽せんになったということです。

また、建設する際に区の許可を受けて高さ制限が緩和され、マンションはこのエリアの通常の場合よりおよそ10メートル高くなっています。

地方行政などに詳しい千葉大学の新藤宗幸名誉教授は「立地がよく購入するための競争率が高かったはずで、抽せんに外れた人は憤りを感じると思う。何らかの便宜供与があったのではないかという疑いが持たれ、行政の公正性の観点からも逸脱している。区長はきちんと説明すべきだ」と指摘しています。

取材に対して石川区長は「購入費用は自分も負担したが、手続きをしたのは現在住んでいる次男で詳しい経緯は知らない」などと話しています。

また、マンションを販売した三井不動産レジデンシャルの親会社、三井不動産は当該の部屋が「事業協力者住戸」であることを認めたうえで、「お客様の資産およびプライバシーに関することには回答できない」としています。

事業協力者住戸とは

「事業協力者住戸」は、通常、マンションを建設する土地の地権者などに優先的に提供される部屋のことで、一般には分譲されません。

地権者が土地の売却代金の代わりに部屋を提供してもらう「等価交換」と呼ばれるケースのほか、追加の代金を支払って土地の価格以上の部屋を提供してもらう場合もあります。

不動産関係者によりますと、最近は「VIP」と呼ばれる得意客が購入の意思を示している場合、抽せんを避けて確実に購入できるよう、あらかじめ「事業協力者住戸」を確保して提供することもあるということです。

石川区長とは

石川雅己区長は、東京・文京区出身の79歳。昭和38年に東京都の職員になり、災害対策部長や港湾局長、福祉局長などを歴任したあと、平成13年に千代田区長選挙に立候補して初当選しました。3年前の区長選挙では小池知事の支援を受け、自民党が推薦する新人などと3人の争いになりましたが、ほかの2人に大差をつけて圧勝し、5回目の当選を果たしています。