事長の定年延長
口頭決裁「適正な手続き」

東京高等検察庁の検事長の定年延長をめぐり、森法務大臣は衆議院予算委員会で、法務省が国会に提出した定年延長は妥当だとする文書は、法務省の規則に基づく決裁を取る必要がないものだとしたうえで、口頭での決裁を取っており、適正な手続きだと強調しました。

この中で、立憲民主党の黒岩宇洋氏は、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長が妥当だとして法務省が国会に提出した文書について、「法務省の規則では、決裁文書は、基本的に電子決裁か押印決裁だが、なぜその手続きを経なかったのか」とただしました。

これに対し、森法務大臣は、「法務省では、法律案の作成の過程で検討のために作成された文書については、書面による決裁や電子決裁を逐一経ることは要しないものと理解し、そのような運用がこれまでもなされてきた」と述べました。

そのうえで、森大臣は、「書面による決裁は取らないが、今回の解釈は大事だと思ったので、口頭で事務次官までの決裁を取り、内閣法制局と人事院の協議を経ている。適法であり適正な手続きだ」と述べました。

一方、法務省は、衆議院予算委員会の理事会で、「定年制度の趣旨自体は、一般の国家公務員と検察官とで異なるものではなく、検察官も、国家公務員法の延長制度の適用は排除されていない」などと記された先月16日に作成したとする文書を提出しました。

これに対し、野党側は、「信ぴょう性に乏しく、政府解釈が行われたと証明するものではない」などとして、さらに追及することにしています。

首相「何ら問題ない」

東京高等検察庁の検事長の定年延長について、安倍総理大臣は衆議院予算委員会の集中審議で「何ら問題ない」と述べ、改めて正当性を強調しました。

国民民主党の玉木代表は「検察官は総理大臣さえ逮捕する強大な権限を持っているからこそ、その時の内閣や総理大臣などの恣意的(しいてき)な判断で、定年延長を認めてはならない」と述べ、決定の撤回を求めました。

これに対し、安倍総理大臣は「検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、閣議決定されたものだが、何ら問題ない」と述べ、改めて正当性を強調しました。

また立憲民主党の枝野代表は「人事院の規則では勤務延長後は原則として他の官職に異動させることができないと書いてある。黒川検事長を検事総長にしたら規則の解説に反する」と指摘し、森法務大臣は「人事について、安倍総理大臣や菅官房長官から指示があったことはない」と述べました。

自民 中谷氏「政府は透明性を持った説明」

自民党の中谷 元防衛大臣は、谷垣グループの会合で「公正さが求められる検察官の人事や身分に関わるだけに、政治的・恣意(しい)的な介入がないようにしなければならない。政府は、理由や経過について、しっかりと透明性を持った説明をする責任が求められる」と述べました。

国民 玉木氏「とても法相を任せることはできない」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し、「検事長の定年延長は法治国家なのか人治国家なのか、国の根本が問われる問題で、政府側の答弁は、うそが雪だるま式に膨らんでいると思う。突然、法律の解釈を変更して定年延長を認めるという、法律をじゅうりんする所業は絶対に認められず、引き続き厳しく追及する」と述べました。

また記者団が森法務大臣の不信任決議案を提出するか質問したのに対し、「最終的には国会対策委員長らが協議して決めるが、とても法務大臣を任せることはできないという印象だ」と述べました。

維新 馬場氏「法相の責任問う時ではない」

日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で「定年を延長するのであれば、きちんとした法的な根拠を示すべきで、仮に法的根拠がないのであれば、新たに立法すべきではないか。こうしたことについて、まだきちんと説明がなされておらず、今の段階では、森法務大臣の責任を問う時ではない」と述べました。

共産 穀田氏「国会提出のメモ お粗末なもの」

共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で「日付の入った法務省刑事局の担当者のメモが国会に提出されたが、決済過程を示すものではないお粗末なもので、いいかげんにしてほしい。法をつかさどる部局が、このようなメモを『証拠だ』と言うこと自体が腐りきっていることの証拠ではないか」と批判しました。