井克行 法務大臣が
安倍首相に辞表提出

河井法務大臣は、先の参議院選挙で当選した妻の河井案里参議院議員の事務所が運動員に法律の規定を上回る報酬を支払っていた疑いがあるなどと一部で報じられたことを受け、法務行政への信頼が損なわれてはならないとして安倍総理大臣に辞表を提出しました。

河井法務大臣は、「週刊文春」で、先の参議院選挙で当選した妻の河井案里参議院議員の事務所が運動員に法律の規定を上回る報酬を支払っていたほか、みずからの選挙区の有権者らに、じゃがいもやトウモロコシなどの贈答品を配っていた疑いがあるなどと報じられました。

こうした中、河井大臣は、法務行政への影響を避けたいなどとして、辞任する意向を固め、31日午前8時すぎ、総理大臣官邸で安倍総理大臣と面会し、辞表を提出しました。

このあと河井大臣は記者団に対し、「報道の件は、わたしも妻も全くあずかり知らないところだが、今後、しっかりと調査して、説明責任を果たしていきたい。確認・調査を行う間、国民の法務行政への信頼は停止してしまい、1分1秒たりとも法務行政への信頼が損なわれてはいけないと考え、けさ決断した」と述べました。

河井氏は、衆議院広島3区選出の当選7回で、56歳。平成8年の衆議院選挙で初当選し、法務副大臣、衆議院外務委員長などを歴任したほか、総理大臣補佐官や自民党の総裁外交特別補佐を務め、安倍総理大臣の外交をサポートしました。そして、先月の内閣改造で初めての入閣を果たしました。

安倍内閣では、先週25日にも、選挙区内で秘書が香典を手渡していたなどと報じられた菅原・前経済産業大臣が辞任していて、この1週間で2人の閣僚が相次いで辞任したことになります。

「週刊文春」が報じた内容は

31日発売の「週刊文春」は河井克行法務大臣の妻でことし7月の参議院選挙の広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏の事務所がウグイス嬢13人に法律の上限の2倍の日当3万円の報酬を支払っていたなどと報じています。

記事では同じウグイス嬢がサインした2枚の領収書の写しや、稼動日数に日当3万円を掛け合わせた実際の支払い額が記された裏帳簿を入手したとしています。

入手したとする1枚目の領収書には投開票日だった7月21日の日付で法律の範囲内の金額が書かれていますが、2枚目の領収書に残りの分の金額が書かれ選挙の公示前に事務作業などをした人件費として支払ったように装っていたとしています。

また案里氏の選挙運動は河井大臣が実質的に取りしきっていたとしていて、河井大臣がウグイス嬢がしゃべる内容を細かく指示していたなどと報じています。

このほか河井大臣の秘書が選挙区内の支援者にジャガイモを配っていたなどと報じています。

公職選挙法の運動員買収とは

公職選挙法では、選挙期間中、選挙カーで投票を呼びかけるいわゆる「ウグイス嬢」への報酬の支払いは、1日当たり1万5000円以内と定められていて、これ以上支払うことは、買収にあたるとして禁じられています。

このほか、選挙期間中に支払える報酬の上限は演説会や政見放送などの手話通訳者が1日当たり1万5000円以内、事務員が1日当たり1万円以内となっています。

選挙管理委員会は、選挙のあと、陣営の出納責任者から支払った報酬の額などについて報告書の提出を受け、限度額を超えていないかチェックすることになっています。

ウグイス嬢への報酬めぐる違反は過去にも

選挙カーで投票を呼びかける、いわゆるウグイス嬢への報酬をめぐっては、過去にも国会議員の陣営の関係者が公職選挙法に違反したとして逮捕・起訴されるケースが相次いでいます。

平成25年の参議院選挙では、当時の生活の党から立候補した広野允士元参議院議員の元秘書らがウグイス嬢に法律の上限の2倍の日当3万円を支払ったとして逮捕・起訴されました。その後、元秘書の有罪が確定したことを受けて広野元議員には連座制が適用され、参議院選挙の比例代表での立候補が5年間、禁止されました。

平成24年の衆議院選挙では、愛知3区で当選した自民党の池田佳隆議員の運動員が、ウグイス嬢5人に日当3万円の報酬を支払う約束をしたとして有罪判決を受けています。

また平成26年の東京都知事選挙で落選した田母神俊雄元航空幕僚長らによる選挙違反事件では上限を超える日当を受けとっていたとして、ウグイス嬢も略式起訴されました。