朝鮮の漁船衝突 映像
「公表想定せず」

西村官房副長官は9日午前の記者会見で、自民党の外交部会などが、政府に対し、北朝鮮の漁船と衝突した状況やその後の救助活動の様子を記録した映像の公開を要請していることについて、「今後の捜査への影響もあるので、今回公表したもの以外の、映像などの公表は想定していない」と述べました。

中谷 元防衛相「できるかぎり情報出すべき」

自民党の中谷 元防衛大臣は、谷垣グループの会合で、水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突した事故について「事実関係がまだまだ明らかになっていないところがある。ビデオや写真があると思うので、できるかぎり情報を出すべきだ」と述べました。

また「水産庁による監視は、民間の船をチャーターして、そこに水産庁の職員が乗り込んでやっているということで、極めて危険な状態だ。しっかりと要員の安全確保や体制の整備を行うべきだ」と述べました。

安倍首相「公表以外の映像は捜査当局で適切に判断」

安倍総理大臣は、参議院本会議の代表質問で「北朝鮮船籍とみられる漁船は、いか釣りの装備を搭載し、わが国の排他的経済水域に侵入していたが、漁具を海中に投入するなど漁獲を行っている状態ではなかった。違法操業は確認されておらず、公海上であったことから、身柄の拘束といった強制力の行使はしていない」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「事案の調査のため、水産庁取締船『おおくに』は、きのう、新潟港へ入港し、海上保安庁が船長などから事情聴取している。すでに公表した画像以外の映像などを公開することについては、今後の捜査への影響も踏まえ、捜査当局において、適切に判断するものと考えている」と述べました。

全漁連が取締り徹底求める要望書

全漁連=全国漁業協同組合連合会の岸宏会長らは総理大臣官邸で菅官房長官とも面会し、北朝鮮の漁船などによる違法操業に対し、取締りの徹底などを求める要望書を提出しました。

これに対し、菅官房長官は「政府としても、毅然と対応していきたい」と伝えたということです。

野党 映像公開求める意見相次ぐ

立憲民主党など野党側は9日、国会内で水産庁や海上保安庁などの担当者からヒアリングを行いました。

出席した議員からは、漁船の乗組員全員が救助されたあと、別の北朝鮮の船に移って退去したことについて、「そのまま帰さず事情を聴くべきだった」とか、「事実関係を明らかにするために映像を公開すべきだ」といった意見が相次ぎました。

これに対し担当者は「人命優先で活動をしていたところ、北朝鮮籍の船が現れて乗り移っていった。映像の公開は考えていない」と述べました。

会合には北朝鮮に拉致された可能性が排除できない、いわゆる特定失踪者について調査している「特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表も出席し、荒木氏は「同様の事案が起きないような方策を考えてほしい」と求めました。