現の不自由展示 早けれ
ば来月6日の再開目指す

愛知県で開かれている国際芸術祭で、慰安婦問題を象徴する少女像などを展示し、その後、中止された「表現の不自由」をテーマにしたコーナーについて、愛知県は、中止前の状態と展示の一貫性を保ちつつ、事前に予約した人に整理券を配るなどの対策を講じ、早ければ来月6日から、遅くても来月8日からの再開を目指すことになりました。

先月1日から愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」では、「表現の不自由」をテーマに、慰安婦問題を象徴する少女像などを展示するコーナーが設けられましたが、テロ予告や脅迫ともとれる電話などが相次ぎ、開幕から3日で中止されました。

愛知県の大村知事が会長を務める芸術祭の実行委員会が、コーナーの企画に関わったメンバーに対し、
▽安全を維持するために事前に予約した人に整理券を配ることや、
▽中止前の状態と展示の一貫性を保ち、必要に応じて作品などを解説する教育プログラムを実施することなどを条件として、再開に向けた協議を呼びかけました。

愛知県などによりますと、メンバー側はこうした条件を受け入れる考えを示し、メンバー側が展示を再開するよう申し立てた仮処分について、30日、名古屋地方裁判所で和解が成立しました。

これを受けて愛知県は「表現の不自由」をテーマにしたコーナーについて、必要な対策を講じて、早ければ来月6日から、遅くても来月8日からの再開を目指すことになりました。

企画展のメンバーらが会見

少女像などの展示コーナーの企画に関わり、展示を再開するよう裁判所に仮処分を申し立てていたメンバーは、和解が成立したことを受け、記者会見を開きました。

代理人の中谷雄二弁護士は「展示の再開が約束され、合意できたのは高く評価できる。いい内容の和解協議ができたと思う」と述べました。

企画展のメンバーも和解を評価し、編集者の岡本有佳さんは「再開することで合意できたのは喜ばしく、諦めずに原則を主張し続けてよかった」と話しました。

そのうえで、文化庁が芸術祭に補助金を全額交付しないと決めたことに触れ、「文化庁が公金を出さないのは政治介入であり、今回、再開で合意できたことは、文化庁と堂々と闘える基盤ができたことにもなる」と話しました。

美術・文化社会批評が専門の新井博之さんは「今回の和解は社会を覆っている検閲という空気をはねのける最初の1歩になるのではないか」と評価しました。

また、富山大学の小倉利丸名誉教授は「展示が中止になってから、全国の方々が暴力に屈しないとメッセージを発し続けたことが県を動かしたと思っている。企画展が成功に終わるよう努力していきたい」と話しました。

大村知事「急ピッチで作業進める」

愛知県の大村知事は30日夕方、記者団に対し「これから具体的なところを交渉していかなければならず個々の条件をさらに詰めていく。きょうから協議がスタートだと思っていて、どうやって運営していくか真摯(しんし)に誠意を持って具体的な協議を重ねていきたい。急ピッチで作業を進める」と述べました。

河村市長 再開に反対する考え示す

名古屋市の河村市長は記者会見で、「大変なことだ。私は芸術祭の実行委員会の会長代行なのに何も聞いていない。名古屋市や愛知県が主催しているということは公共事業だということであり、市民の皆さんの公共のお金を使って本当に展示していいのか」と述べ、再開に反対する考えを示しました。