米首脳 貿易交渉の最終
合意を確認 共同声明に署名

日米貿易交渉は日本時間の26日未明にニューヨークで行われた首脳会談にあわせて署名式が行われ、安倍総理大臣とトランプ大統領は交渉が最終合意に達したことを確認し、共同声明に署名しました。日本はアメリカが求める牛肉や豚肉などの農産品の市場開放にTPP協定の水準を超えない範囲で応じる一方、アメリカは協定の履行中は日本車への追加関税を発動しない、などとしています。

安倍総理大臣とトランプ大統領との日米首脳会談はニューヨークで日本時間の午前1時半前から、1時間余り行われました。

会談に先立って、両首脳は新たな貿易交渉が最終合意に達したことを確認し、共同声明に署名しました。

安倍総理大臣は「両国のすべての国民に利益をもたらすウィンウィンの合意となった。間違いなく両国の経済を発展させていくことを確信している」と述べました。

そして、トランプ政権発足後、日本から累計で257億ドルに上る 投資が行われ、対米ナンバー1の投資国となり、雇用創出が5万人を超えたことなど、アメリカの雇用への貢献を説明し、トランプ大統領から、高い評価が示されました。

この後、同席した茂木外務大臣が記者会見し、合意内容を明らかにしました。

それによりますと、新たな貿易協定で、日本は、アメリカが求める農産品の市場開放にTPP=環太平洋パートナーシップ協定の水準を超えない範囲で応じるとしています。

アメリカからの輸入の分野では牛肉は現在38.5%の関税が最終的に9%に引き下げられるほか、豚肉は、価格の安い肉にかけている1キロ当たり最大482円の関税が最終的に50円になります。

また、小麦もTPP交渉時の合意内容を踏襲し、アメリカ産の小麦には最大15万トンの輸入枠を設けます。

一方、コメは、TPP交渉で日本がアメリカに設定した年間7万トンの無関税の輸入枠は設けられないことになり、乳製品も、バターや脱脂粉乳などの新たな輸入枠は設けないことになりました。

いずれもアメリカ側が譲歩した形です。

一方、アメリカへの輸出の分野では、牛肉は、低い関税が適用される枠が実質的に拡大することになり、日本産牛肉の輸出増加が期待されます。

工業品をめぐっては、日本が撤廃を求めている自動車と関連部品の関税の扱いは継続協議となる一方、協定には「さらなる交渉による関税撤廃」と書き込まれ、将来的な関税撤廃が明記されました。

また、共同声明には「協定が誠実に履行されている間、協定や共同声明の精神に反する行動は取らない」と明記され、これを踏まえて、両首脳は26日の会談で、協定の履行中はアメリカが通商拡大法232条に基づく日本車への追加関税を発動しないことを確認しました。

さらに、日本からの自動車の輸出を制限する数量規制については、茂木外務大臣とライトハイザー通商代表との間で、日本には発動されないことを確認したとしています。

一方、今回合意した以外の分野について、協定の発効後4か月以内を目安に交渉を行うかどうか協議するとしていて、日本側は、今回、継続協議となった自動車と関連部品の関税撤廃をめぐる議論が中心になると説明しています。

協定の正式な署名は、両国それぞれで法的な確認作業を終えた後に行われる予定で、日本政府は、来月の臨時国会に協定の国会承認を求める議案を提出し、早期の承認・発効を目指す方針です。

安倍首相「協定はすべての国民に利益」

トランプ大統領との日米首脳会談に先立って行われた共同声明の署名式で、安倍総理大臣は、「昨年9月に大統領と日米共同声明を発出して1年、精力的な交渉を続け、最終合意に至ったことを本当にうれしく思う」と述べました。

そのうえで「まさにこの協定は、両国の消費者、生産者、勤労者、すべての国民に利益をもたらす、両国にとってウィンウィンの合意となった。今回の合意は、工業製品、農産物から電子商取引に至るまで多岐にわたっているが、間違いなく両国の経済を発展させていくことを確信している」と述べました。

茂木外相「農産品と工業品のバランス取れた内容」

茂木外務大臣は記者会見で「発効済みのTPP=環太平洋パートナーシップ協定、そして、EU=ヨーロッパ連合とのEPA=経済連携協定に日米貿易協定を加えると、わが国は、世界のGDPのおよそ6割、13.4億人の巨大な共通市場を構築することになる。農産品と工業品のバランスの取れた内容になっており、農家の皆さんに安心していただき、日本の自動車業界、産業界にとっても十分納得していただけるものだと考えている」と述べました。

そのうえで「安倍総理大臣とトランプ大統領の個人的な信頼関係があったからこそ、国益と国益がぶつかりあう厳しい交渉でも一致点を見いだすことができた。とくに農産品は、過去の経済連携協定の内容が最大限とする日本の立場と、TPP参加国など他国に劣後した状況を一日も早く解消したいというアメリカの要求の最終的な一致点が今回の合意内容だった」と述べました。

JA北海道中央会会長「合意内容の詳細な説明を」

日米の貿易交渉が最終合意に至ったことについてJA北海道中央会の飛田稔章会長は「合意内容については、北海道の生産現場に配慮があったものと受け止められる一方、去年9月に確認された日米共同声明に沿ったものになっているのか、北海道の重要な農畜産物へどのような影響を及ぼすのかなど、現状では不透明な要素があることも事実だ」としたうえで「今回の合意により、農業者はこれまで以上に将来に対する不安を抱いていることから、政府に対して改めて合意内容の詳細や交渉の経過について迅速かつ丁寧な説明を求めたい」とコメントしています。