コレラ ワクチン接種へ
防疫指針の改定を調整

ブタの伝染病、豚コレラが先週、関東地方で初めて埼玉県で確認されるなど、感染に歯止めがかからないことから農林水産省は国による予防的なブタへのワクチン接種ができるよう、感染拡大を防ぐための防疫指針の改定にむけ調整を進めることになりました。

豚コレラは去年9月、岐阜県で国内では26年ぶりに発生が確認された後、先週から今週にかけて埼玉県や長野県でも確認されるなど、感染は8つの府県に拡大し、歯止めがかかっていません。

農林水産省はこれまでブタへのワクチンの接種に慎重でしたが、豚肉の一大産地である関東地方に感染が広がった事態を重く受け止めています。

このため関係者によりますと、農林水産省は国の責任で時期や地域などを決めたうえで、予防的にワクチン接種ができるよう、防疫指針の改定に向けて調整を進めることになりました。

農林水産省では自民党などの了解を求めたうえで、今後、専門家の意見などを聞く手続きをとる予定です。

ワクチンの接種は流通や輸出に影響が出るため根強い反対の声がありますが感染を拡大させているとみられる野生のイノシシの捕獲などは効果が十分に出ていません。

このため感染の拡大にともない各地の養豚業者などから接種を求める声が強まっています。

豚コレラのワクチンは13年前の平成18年までは接種していましたがその後は接種していません。

農林水産省によりますと仮にワクチンを接種したブタの肉を食べたとしても人の健康に影響はないということです。

群馬県知事 ワクチン接種を要請

群馬県の山本一太知事は豚コレラの感染が隣接する埼玉県や長野県で広がっていることを受け、19日江藤農林水産大臣に対し、農家が飼育しているブタへのワクチン接種などを速やかに行うよう要請しました。

群馬県はブタの飼育頭数がことし2月時点でおよそ63万頭と、全国で4位の産地ですが、先週から今週にかけて群馬県と隣接する埼玉県や長野県で豚コレラの感染が確認されたことから、群馬県内の養豚農家などが県に対して感染防止対策を強化するよう求めています。

これを受け群馬県の山本知事は19日、農林水産省を訪れ江藤農林水産大臣に国が主導して対策を講じるよう要請しました。

そのうえで山本知事は群馬県に限らず、全国で飼育されているすべてのブタにワクチンを速やかに接種し、流通や価格に影響が出ないようにすることも求めたほか、野生のイノシシが感染拡大の原因の1つとされていることから、ワクチンを混ぜた餌の散布なども要請しました。

山本知事は「豚コレラがいかに群馬県にとって重大かということを大臣が十分理解していて、その点は心強く感じた。国の今後の動向も注視しながら県として最大限の対策を講じていきたい」とするコメントを出しました。

長野 高森町 養豚場の112頭すべて処分

長野県南部にある高森町の養豚場で飼育されている豚が豚コレラに感染していることが確認され、県は養豚場のすべての豚を処分し、感染拡大を防ぐ防疫作業を進めることを確認しました。

長野県によりますと、17日、高森町の養豚場で飼育されている豚8頭が発熱しているのが見つかりました。

県が豚の血液を調べたところ、豚コレラウイルスの陽性反応が出たことから、このうち5頭の遺伝子検査を行った結果、19日朝、5頭すべてが豚コレラに感染していることが確認されたということです。

これを受けて県は緊急の対策本部会議を開き、この養豚場で飼育している112頭すべての豚を処分し、感染拡大を防ぐ防疫作業を進めることを確認しました。

この養豚場では、防護服を着用した県の職員が飼育されている豚の数を確認したり、施設の周りに消石灰をまいたりする作業を進めているほか、施設のそばでは重機で穴を掘る作業も行われています。

長野県内では今月14日、塩尻市の県畜産試験場で飼育されている豚が豚コレラに感染していることが確認されていますが、県によりますと、2つの場所での感染に関連があるかは分かっていないということです。

県は、今回の養豚場と同じ食肉処理場を使うなど感染のおそれがある養豚場を調べたうえで、豚の様子を細かく監視し警戒にあたることにしています。

滋賀で初めて野生のイノシシが豚コレラ感染

滋賀県多賀町の山林で死んでいるのが見つかった野生のイノシシが、豚コレラに感染していたことが国の研究機関の検査で確定しました。野生のイノシシへの豚コレラの感染は、滋賀県内では初めてです。

豚コレラに感染していたのは、今月13日、多賀町の山林で死んでいるのが見つかった野生のイノシシです。

国の研究機関で詳しく検査した結果、19日、陽性が確定しました。

野生のイノシシへの豚コレラの感染は、滋賀県に隣接する岐阜県や三重県、それに福井県など7つの県に広がっていましたが、滋賀県内では初めての感染例です。

豚コレラは人には感染せず、豚肉を食べても健康に影響はありませんが、ブタやイノシシが感染すると高い確率で死に至ります。

滋賀県内の養豚場では、これまでのところ異常は確認されていませんが、県は19日夕方対策会議を開いて、養豚場での衛生管理の徹底や、野生のイノシシに対しワクチンを混ぜた餌をまくなどといった今後の対応を協議することにしています。

これを受けて滋賀県庁で19日、緊急の対策会議が開かれ、今月中に最大1万5000個のワクチンを混ぜた餌をまくなどの対策を急ぐことを確認しました。

県によりますと県内の養豚場ではこれまでのところ異常は確認されていないということで、県農政水産部の西川忠雄部長は「まずは慌てず養豚農家を守ることを第一に対策に取り組んでいきたい」と話しています。