志連合めぐり有識者から
さまざまな意見

アメリカが結成を目指す、中東のホルムズ海峡での有志連合をめぐって、有識者による講演会が東京都内で開かれ、防衛省顧問を務める河野克俊前統合幕僚長は、状況が危機的になれば、海上警備行動を発令して自衛隊を派遣すべきだという考えを示しました。

この講演会はシンクタンクの日本国際問題研究所が主催したもので、この中で、4年余りにわたって自衛隊トップを務め、ことし4月に退任し、現在は防衛省顧問を務める河野克俊前統合幕僚長は、「『直ちに自衛隊を出す』という状況ではない。ただ、日本のシーレーンにとって危機的な状況と判断されれば、自衛隊は日本のタンカーを守るためにあるので、海上警備行動を発令して派遣するのがいちばん適している」と述べました。

一方、日本船主協会の大森彰常務理事は、「現時点ではホルムズ海峡でゆゆしき事態になっていない。船舶の安全性が著しく阻害されるような状況になれば、そのときに対応を考えればよい」と指摘しました。

また、中東情勢に詳しい高橋和夫放送大学名誉教授は、「イランは『ペルシャ湾のことは自分たちでやるから、外国は入ってくるな』というスタンスだ。有志連合に入ることは、関係があまりよくならなくなる覚悟をしないといけない」と述べました。

有志連合の活動 想定される海域は

アメリカが結成を目指す有志連合が活動する海域は、ペルシャ湾やホルムズ海峡、それにオマーン湾など、アラビア半島周辺の複数の海域が想定されています。

このうちホルムズ海峡は、北はイラン、南はオマーンに挟まれていて、最も狭いところで幅はおよそ35キロしかありません。北側はイランの領海、南側はオマーンの領海ですが、国際海洋法条約で、すべての国の船に航行が認められています。

ホルムズ海峡は日本にとってエネルギー供給の生命線です。
去年、湾岸諸国のサウジアラビアやUAEなどの6か国から輸入した原油は輸入量全体のおよそ9割にのぼり、そのほとんどがホルムズ海峡を通過しています。
このホルムズ海峡の西側がペルシャ湾、東側がオマーン湾です。
オマーン湾では、ことし6月、日本の海運会社が運航していたタンカーを含むタンカー2隻が何者かによる攻撃を受けています。

一方、アラビア半島の南側、イエメンとソマリアの沖合にあるアデン湾も有志連合の活動海域として想定されています。
アデン湾では、海賊事件が頻発したことを受けて、2009年に各国が有志連合を組んで対応にあたり、日本も海上自衛隊がアフリカのジブチを拠点に艦艇や哨戒機を派遣して、民間の船舶を護衛する任務にあたっています。

アデン湾と紅海を結ぶバーブルマンデブ海峡も、スエズ運河にもつながるヨーロッパとアジアを結ぶ物流の要衝で、活動海域になる可能性があります。海峡の幅は、最も狭いところでわずか25キロです。
この海域にはイランは面していませんが、内戦中のイエメンからイランが支援する反政府勢力による攻撃なども起きていて、外務省もこの海域を航行する船舶に対し注意を呼びかけています。