日韓事務レベル会合
日本側「対抗措置でない」

韓国への輸出規制を厳しくする措置をめぐって、日韓両政府による事務レベルの会合が、12日、初めて行われました。日本側は韓国側の貿易管理体制に課題があると指摘し、予防的な措置として実施したことなどを説明しました。また、貿易管理以外への対抗措置ではないと説明したということです。

日本と韓国両政府による事務レベルの会合は、日本が今月4日、韓国に対する半導体の原材料などの輸出規制を厳しくしてから初めてです。

経済産業省で行われた会合は非公開で、両政府から貿易管理を担当する課長などが出席しました。

会合は午後2時ごろから、当初の見込みを大幅に上回るおよそ5時間にわたって行われました。

経済産業省によりますと、会合では日本側が、規制を強化した半導体の原材料など軍事転用も可能な3品目について韓国側の貿易管理体制に課題があったと指摘し、予防的な措置として実施したと説明しました。

そのうえで、今回の措置は太平洋戦争中のいわゆる「徴用」の問題など、貿易管理の問題以外への対抗措置ではないことや、WTO=世界貿易機関のルールに反しないことなどを説明しました。

これに対して韓国側は、今回の一連の措置の詳しい内容の確認を求めたということですが、この場では措置の撤回は求めなかったほか、WTOへの提訴についても言及しなかったと、経済産業省では説明しています。

経済産業省では今後も韓国側の求めがあれば、この措置に関する技術的な問い合わせなどには応じると伝えたとしています。

韓国側「深い遺憾と懸念伝えた」

韓国産業通商資源省はソウルで記者会見を開き、日本側に「世界のサプライチェーンに悪影響を及ぼす」として、深い遺憾と懸念を伝えたことを明らかにしました。

また今月24日までに、再び両国の当局者間の会合を開くことを日本側に求めたということです。

韓国にはどのような影響が?

日本政府が韓国向けの輸出規制を厳しくした3品目のうち、テレビやスマートフォン向けの有機ELパネルなどに使われる「フッ化ポリイミド」と、半導体の基板に塗る感光液として使われる「レジスト」は、日本が韓国の輸入額の90%以上を占めています。

また半導体の基板を洗浄するのに使われる「高純度のフッ化水素」も、日本が韓国の輸入額の4割以上を占めていて、韓国では影響が懸念されています。

韓国の中小企業の経営支援を行う経済団体の「中小企業中央会」が先週、半導体や通信関連の中小企業およそ270社を対象に行った調査では、およそ60%の企業が、今回の措置が半年以上続いた場合、生産に大きな支障が出ると回答したほか、半数近くの企業が「対応策がない」と答えて、先行きへの不安が高まっていることが明らかになっています。

また、韓国のシンクタンク「韓国経済研究院」が、日本の措置により半導体の原材料が不足した場合、韓国のGDP=国内総生産が2.2%下がるというシミュレーション結果を明らかにしたほか、韓国メディアはアメリカの大手金融機関「モルガン・スタンレー」が韓国のことしの経済成長率の見通しを2.2%から1.8%に引き下げたと伝えています。

このため、世界の半導体市場で大きなシェアを誇るサムスン電子やSKハイニックスをそれぞれ傘下に収める企業グループなどの幹部は、10日に行われたムン・ジェイン(文在寅)大統領との会談で長期的な支援を求めるとともに、輸出先を多角化すべきだとして、化学分野に強みを持つドイツやロシアとの協力を強化する必要性を訴えました。

こうした中、韓国政府は、半導体の原材料の国内調達も視野に入れ、開発費などとして年間1兆ウォン、日本円でおよそ920億円規模の集中投資を行う方針を固め、国内企業への影響を最小限に食い止めるとの姿勢を繰り返し示し、懸念の払拭(ふっしょく)に努めています。

また日本政府に対しても「不当な措置」だとして、WTO=世界貿易機関への提訴も辞さない姿勢を示しています。

一方、韓国国会のムン・ヒサン(文喜相)議長は12日、与野党で議員団をつくり、参議院選挙後の今月末にも日本を訪問する方針を明らかにし、政府間だけではなく、議員外交でも問題解決を促す姿勢を示しました。