銀短観次第で消費増税
延期も 自民 萩生田氏

ことし10月の消費税率の引き上げについて、自民党の萩生田幹事長代行は、日銀が7月に発表する短観=企業短期経済観測調査の内容次第では、延期もありえるという認識を示しました。また、「増税をやめることになれば、国民の信を問うことになる」とも指摘しました。

萩生田幹事長代行は、インターネット番組で、消費税率の10%への引き上げについて、「景気がちょっと落ちている。ここまで景気回復してきたのに、万一腰折れしたら、何のための増税かということになる」と述べました。

そのうえで、「次の日銀の短観をよく見て、『本当に、この先危ないぞ』となったら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかないので、違う展開はある」と述べ、日銀が7月に発表する短観の内容次第では、消費税率の引き上げの延期もありえるという認識を示しました。

また、萩生田氏は、「増税をやめることになれば、国民の信を問うことになる」とも指摘しました。

一方で、夏の参議院選挙に合わせた「衆参同日選挙」については、「G20サミットもあるので、なかなか日程的に難しい」と述べました。

萩生田氏は、安倍総理大臣のもと官房副長官を務めるなど、安倍総理大臣と近いことで知られています。

消費税率について、政府はリーマンショック級の出来事が起こらないかぎり、予定どおり10月に10%に引き上げるとしています。

自民 森山氏「党として議論していない」

自民党の森山国会対策委員長は記者団に対し、「林幹事長代理を通じて二階幹事長に確認したが、党として萩生田氏が発言したような議論をしているということは全くない。党として、そういうことを決めたということではない」と述べました。

自民 石破氏「国民に対して無責任だ」

自民党の石破元幹事長は、記者団に対し「どういう場合に消費税率の引き上げを延期するのか、萩生田氏の話だけでは分からない。自民党内で、どういう状況になったら延期し、全世代型の社会保障の財源はどうするのか、議論を詰めないと国民に対して無責任だ」と述べました。

自民党の幹部は「萩生田氏は、どういう立場で発言したのか。そんな発言をする権限はない。立場を考え、発言には気をつけるべきだ」と批判しました。

また、別の幹部は「萩生田幹事長代行は、安倍総理大臣から指示を受けて 発言したわけではない」と述べました。

菅官房長官「引き上げともう決めている」

菅官房長官は「リーマンショック級の出来事が起こらないかぎり、法律で定められたとおり引き上げる予定で、予定どおり引き上げられるよう経済運営に万全を期したい」と述べました。

そのうえで、「景気の現状は内需を中心とした成長が続いており、緩やかに回復しているという基調は変わっていない。リーマンショック級の事態について、安倍総理大臣は『たとえば世界的な経済危機や大震災などが考えられる』と述べてきたが、全く変わらない」と述べました。

また菅官房長官は、記者団が「日銀が7月に発表する短観で判断することにはならないという認識か」と質問したのに対し、「今まで言ってきたことと全く違うのではないか」と述べ、日銀短観で判断することはないという認識を示しました。

さらに、最終的に引き上げを判断するタイミングについて、菅官房長官は「リーマンショック級のものがないかぎり引き上げると、もう決めている」と述べました。

一方、記者団が「引き上げを見送る場合、衆議院を解散する必要があると考えるか」と質問したのに対し、菅官房長官は、「リーマンショック級のものがないかぎり、予定どおり引き上げる方針に全く変わりはないということだ」と述べるにとどめました。

公明 石田氏「延期する状況ではない」

公明党の石田政務調査会長は、記者団に対し「どういう思いで発言したか分からないが、引き上げを延期する状況ではない。引き上げに向けて、さまざまな準備をして、予算も成立し、幼児教育の無償化も実施する予定にしている。株価も安定してきているし、ヨーロッパやアメリカの経済も若干落ち着きを取り戻している」と述べました。

立民 福山氏「『信を問う』は衆院選と考える」

立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し、「いよいよ、アベノミクスの破綻が見えてきて与党も慌てだした。国民生活の現状を考えれば、消費税率は上げられるわけがなく、当然だ」と述べました。

そのうえで、「『信を問う』とは、当然、衆議院の解散・総選挙と考える。堂々と受けて立ち、ほかの野党と協力して安倍政権を倒す絶好の機会が得られる。衆議院選挙の準備も野党で協力して加速化していきたい」と述べました。

国民 舟山氏「信を問う前に反省を」

国民民主党の舟山参議院国会対策委員長は記者会見で「政府は、『アベノミクスがうまくいっている、経済はよくなっている、賃金も上がっている』と、ずっと言い続けてきた。誰が見ても、今は、景気が非常によくないが、まずは信を問う前に反省していただきたい」と述べました。

共産 志位氏「増税なら政権もろとも吹き飛ばす」

共産党の志位委員長は記者団に対し、「重大な発言だ。政権与党の中から『増税を確信をもって言えない』という声が出てきたのは、非常に大きい。消費税増税を断念に追い込む戦いをいよいよ強め、それでも増税するのであれば、安倍政権もろとも吹き飛ばす決意だ」と述べました。

希望 松沢氏「公言取り下げなら大失政」

希望の党の松沢代表は記者会見で「希望の党は『デフレを脱却しきれていない、経済が極めて不安定な時期に消費税増税は絶対にやるべきではない』と主張してきたので、その方向に政府がかじを切るのは非難するものではない。しかし、安倍政権として、消費税増税を公言しながら、毎回、理由を付けて取り下げることになったら政権の大失政だ」と述べました。

社民 又市氏「そういう声が出てきて当然」

社民党の又市党首は記者団に対し、「われわれは、『経済動向から言って、消費税を上げられる状況にない』と反対している。そういう声が出てきて当然で、日本の今後の経済を考えた時に、あり得ると思う」と述べました。

日商 三村会頭「信じられない発言」

日本商工会議所の三村会頭は、18日の定例の記者会見で「信じられない発言だ。安倍総理大臣が消費税率の引き上げは明言しているわけで、変更はないものと思っている。子育てや介護への支援、教育無償化についてはどうするのか。消費税は長期的に持続可能な社会を目指すもので、足元の景気のふれであきらめるべきものではない」と述べました。

連合 神津会長「負担の先送り繰り返すな」

連合の神津会長は記者会見で「社会保障と税の一体改革をめぐる、当時の民主党と自民党、公明党による3党合意はねじ曲げられているという認識だが、すでに将来世代に対して過大な負担を先送りしており、そのようなことを繰り返すべきではない」と述べ、予定どおり消費税率を引き上げるべきだという認識を示しました。

集中審議の開催求める

立憲民主党の辻元国会対策委員長は、自民党の森山国会対策委員長との会談で「景気の先行きが不透明だという認識に変わったのであれば、経済情勢の議論が必要だ」と述べ、衆議院予算委員会での集中審議の開催を改めて求めました。

これに対し、森山氏は「萩生田氏の発言のような議論を党として行っていることは全くない。集中審議の開催は非常に難しい」と述べました。

このあと、辻元氏は記者団に対し「政府は『戦後最長の景気回復』と言ってきたが、果たして本当にそうなのか。国民無視、国民不在の消費増税は無理だ」と述べました。