事なことは、
住民投票で決める!?

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

前回の記事では、「議会不要論」についての意見を紹介しましたが、それを受けて、今回は各地で行われている「住民投票」や、住民の議会への参加についての意見をご紹介します。

直接、住民の意見を!

60代の男性議員は、市民が賛否を表明できる機会が必要だといいます。
「市民要求、議案については市民が直接賛否を決する機会が設けられる制度作りが必要と考える」

せめてアンケートだけでも、というのは70代の男性議員です。
「議会として、住民アンケートを行い、ニーズを把握できるようにしたい」

40代の男性議員は、スイスの例を見習ってはと。
「世界の国々では徐々に増えてきていますが、住民の政治への関心を高めるためには、スイスのにような直接民主制度を日本でも導入すべきだと考えています」

いっそ、ネットを利用してはと50代の男性議員は主張します。
「究極はこれだけネットが発達しているのだから、間接民主主義の議会代表制ではなく、ネットを通じた直接民主主義でよい」

直接民主制への機運が高まっていると、70代の男性議員も述べます。
「2000年4月施行の地方分離一括法により、二元代表制による間接民主制から直接民主制に移行する機運が高まってきているように感じます。地方自治体も独自の自治基本条例を制定する方向にあります」

条例で住民投票を

70代の男性議員は、住民投票を条例で定めるべきだといいます。
「地方議会の今後に望むこととしては、権威主義を捨て、住民の目の高さ、住民の意見を生かした運営に転換することだ。
常設型の住民投票条例の制定、住民の意見表明の機会保証、議会での議論の公開性を高めるために、行政情報の住民との共有(情報公開の徹底)など進める必要がある。議員は議会という決定の場で議論することを委ねられているものであって、議会制民主主義とは、代議制民主主義というものはそのようなと理解するべきだと私は考えています。
住民が1000人の村だったら議員は不要だ。住民は議会の議論をみていることしかできない。したがって、議員の役割は見ている住民に議会での議論や結論に納得してもらうことにある」

重要な案件こそ住民投票で

別の70代の男性議員は、重要案件こそ住民投票で決めてはと。
「使い勝手のいい住民投票を制度化し、拘束力のある上位の議決とすべき(例えば、原子力立地及び軍事関連施設、大規模開発計画等)」

70代の男性議員は、議員の定数も住民投票でと提案します。
「議員定数の問題となりますが、民主的な議会制度を守る上で現制度が必要と考え、定数は議会で決めるのではなく、住民投票を持って決める形にすべきでると考える」

今回のアンケートでは、「重要課題は住民投票で決めるべき」かという問いに、「とてもそう思う」「ある程度そう思う」と回答した議員は、合わせて30%余りとなっています。

危険なのでは

直接民主制に危険性を感じているのは50代の男性議員です。
「住民投票を容認したのは、議会での多数決での判断でした。反対が少数。巨額の懸案事項であったので、一部、しかたない結果なのかもしれませんが、軽々に大衆迎合型の政治展開に至ったことに、私は、政治的な危険性を強く感じたシーンでありました。
議会では、反対多数で否決されていた議案について、その後に、再度、住民投票をする必要が本当にあったのか、大きな疑問でした。(住民投票に)賛成した議員の考えにとても大きな疑問を感じました。
議会制民主主義でいろいろな問題を解決できないこともありますが、それを直接民主主義で、解決するべきかどうか?はなはだ疑問ですね。もともとは直接政治では真摯(しんし)な政治結果が出せないから、間接政治が発展した歴史的な経緯があるのですが、最近特に、短絡的に直接政治を進めようとする政治傾向があるのは、とても危険に感じます」

50代の男性県議も、抵抗を感じると。
「間接民主主義の中、直接民主主義の視点で世論を起こそうとする流れには抵抗を感じます」

かえって混乱した

60代の男性議員は、住民投票のせいでかえって混乱したと主張します。
「住民投票の強行で、市民に判断を丸投げするなどの混乱を引起こしたことは残念でした。このため補正予算の採択が遅れるなどして、市民の生活に大きな迷惑をかけてしまいました」

権利はある

それでも、権利はあるはずだと40代の男性議員は主張します。
「それぞれの立場で何を重要とするかは違うため、何でもかんでも住民投票するということではない。しかし議会制民主主義という間接民主主義の制度をとっているからといって直接民主主義の権利は奪われてはならない」

ただ、市民は無関心で…

とはいえ、市民の参加をうながしてもうまくいかない、と60代の男性議員は嘆きます。
「『市民参加条例』も形骸化しており、市民から直接意見を聞く『パブリックコメント』も寄せられる意見はほとんどゼロか数件程度です。市民アンケートの結果も無関心、不信が増えていて議会不要論まで出ている。
市民の信頼を取り戻し、議会としての働きを正常なものにするために、議会改革の早急な実行が求められている」

ある男性議員も、議会だけの問題ではないと。
「住民の議会に対する関心の低さは、議会側の責任だけなのか。全国ニュースで何度も放送されたエアコン問題も、住民投票の投票率は、直後の市議会選挙よりも低かった。これからも議会改革を通し、住民の関心を高める努力を続けるが、その他の課題も考えていく必要を感じる」

まず、議会がしっかり

住民投票もいいが、まずは議会からだと、70代の男性議員は訴えます。
「住民投票や国民投票にかけるという手法より、議会民主主義を徹底することが重要。首長も議員もリーダーシップが発揮できる資質を備えるべきである。評論家よりひどい議員(言うだけで責任をとらない)が多すぎる。議員天国日本は日本の破壊につながる」

50代の男性議員も、住民投票に代わる手段があると述べます。
「市民の代表機関である議会は有権者の声ばかり聴くのではなく主権者である市民の声を広く聞く必要があります 多くの声を聴取し、熟議を重ねて結論を出す『熟議型議会』こそが、住民投票に代わり得る唯一の存在です」

参加型議会を

50代の男性議員は、こんな提案をします。
「『夜間ボランティア議会』を住民直接参加型議会として運用すればいい。公務員・議員のようなある種、特権階級(?)がぬるま湯につかった状態で運営する現在の地方議会。ここに、資本主義社会の厳しい現実と現場を知っている『民間』の知恵を導入すべき」

議員に直接文句を言う機会も必要、というのは60代の女性議員です。
「有権者の監視が甘すぎる。もっと議員に直接批判できる場があるとよい」

最後に、40代の男性議員が行った取り組みをご紹介します。
「議会議員が市民と直接意見交換をする場を作ろうという提案を、議会にさせていただき、現在行えるようになりました。以前、市民への議会報告会で、さんざん厳しい言葉を言われたことにより、最初は『直接意見交換会なんてやったら、余計紛糾することになってしまわないか』と心配される議員のかたもいましたが、ご理解いただくように努めました。
その後、実際に開催してみたところ、参加いただいた市民からは『このような意見交換会を開催してくれてありがたい。今後も続けて欲しい』などの意見をいただき、現在も様々なテーマを元に継続しています。
とにかく様々な手法を用いて、議会運営に新しい風を吹かせられるように、現在鋭意努力中であります」

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寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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