の100兆円超え
新年度予算が成立

一般会計の総額が初めて100兆円を超える新年度予算は、参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。

新年度予算案は、27日参議院予算委員会で、締めくくりの質疑のあと、採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決され、参議院本会議に緊急上程されました。

本会議では、討論が行われ、自民党の石井準一氏は「新しい時代の国づくりにつながる予算案を1日も早く成立させ、さまざまな施策を力強く実行していかなければならない」と述べました。

これに対し、立憲民主党の会派に所属する小西洋之氏は「統計不正の本丸、アベノミクス偽装の疑惑は、政府・与党の抵抗により、何ら解明されていない」と訴えました。

そして採決が行われた結果、新年度予算は、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。

新年度予算は、消費税率の引き上げに伴う景気対策の費用のほか、幼児教育と保育の無償化の経費や、新型迎撃ミサイルシステムを導入する費用などが盛り込まれていて、一般会計の総額が101兆4571億円と、初めて100兆円を超えました。

予算の主な内容は

成立した新年度予算は、一般会計の総額が101兆4571億円と、当初予算としては初めて100兆円の大台を超えました。

消費増税 景気対策

ことし10月に予定される消費税率の10%への引き上げに向けた、さまざまな景気対策が盛り込まれています。

このうち、増税後、中小の店舗でキャッシュレスで買い物すると購入額に応じてポイントが還元される制度に2798億円、購入した金額以上に買い物ができる「プレミアム付き商品券」の発行に1723億円が計上されています。また住宅市場が冷え込むのを防ぐため、省エネ性能などが高い住宅の新築やリフォームにポイントを付与する制度に1300億円が盛り込まれています。

これら消費税の増税に伴う景気対策は総額で2兆280億円に上ります。

歳出項目別で見ると

新年度予算を主な歳出項目別で見ますと、医療や年金などの「社会保障費」は高齢化による伸びに加え、幼児教育の無償化の経費も上積みされ、過去最大の34兆593億円、「防衛費」も新型迎撃ミサイルシステムを導入する費用などを盛り込み、過去最大の5兆2574億円となりました。

このほか「公共事業費」は国土強じん化に向けた費用を盛り込み、今年度より9310億円増えて6兆9099億円、「文化、教育、科学技術関連予算」は2513億円増えて5兆6025億円、自治体に配分する「地方交付税」は今年度より4701億円増えて15兆9850億円となりました。

歳入は

一方、「歳入」は税収が消費税率の引き上げで今年度より3兆4000億円余り増え、過去最高の62兆4950億円を見込んでいます。

借金に当たる新規の国債の発行額は32兆6605億円と、今年度よりおよそ1兆円減りますが、「歳入」全体の32.2%を借金に頼る厳しい状況が続きます。

安倍首相「経済運営に万全期す」

安倍総理大臣は国会内で記者団に対し、「世界経済が不透明感を増す中、予算の早期執行に全力を挙げるとともに、2兆円規模の消費税対策によって経済運営に万全を期していきたい」と述べました。

そのうえで、「成立した予算は、地方行政力の強化や農林漁業支援といった地方創生をさらに強化していくための予算だ。10月から幼児教育と保育の無償化を実現することができ、高齢者の年金額の増額や介護保険料の減額なども進めていくことになる。

全世代型の社会保障へ変えていくための歩みを大きく一歩進める予算だ」と述べました。そして安倍総理大臣は「後半国会では幼児教育や高等教育の無償化を実現するための法案、児童虐待防止のための法案を審議いただき、成立を目指していきたい」と述べました。

麻生副総理「予算の円滑な利用を期待」

麻生副総理兼財務大臣は、101兆円を超える新年度予算が成立したことについて、「日本が少子高齢化という国難を乗り越えて経済再生と財政健全化の両立を図るために、まずは来月以降、成立した予算が円滑に利用されることを期待している。消費税率引き上げに合わせて幼児教育の無償化などを実施するのでこの規模の金額になったが、前年度より新しく発行する国債を減額しているし、財政健全化も進めている内容になったと思っている」と述べました。

そのうえで麻生副総理は「この予算では、前回の消費税率引き上げの時に反動減が大きかったという反省を踏まえて万全の対策を打ったと思っている」としたものの、「実際に増税の際にどういう反応が出るかは今の時点では分からん」とも述べました。

自民 二階氏「残された重要法案の審議着実に」

自民党の二階幹事長は「新年度予算を成立させることができたのは、地に足をつけた審議の結果だ。今後、残された重要法案の審議を着実に進め、国民から寄せられた期待に、党一丸となって真摯(しんし)に応えていきたい」というコメントを出しました。

自民 岸田氏「予算成立は最大の景気対策」

自民党の岸田政務調査会長は記者会見で「予算の成立は、最大の景気対策であり、迅速に執行して経済の安定を図ることが重要だ。統計の問題は、政府や官僚組織の信頼そのものが問われる問題であり、しっかりと受け止めて反省すべきことは反省し、信頼回復に向けて政府・与党が協力して努力しなければいけない。後半国会では、児童虐待の問題など重要法案の成立に向けて、与党が力を合わせていかなければならない」と述べました。

自民 森山氏「野党の理解と協力に感謝」

自民党の森山国会対策委員長は記者団に対し、「野党の理解と協力もあり、国会が空転することなく、新年度予算案を成立させることができるのは非常にいいことだ。野党の審議への理解と協力に感謝したい」と述べました。

公明 山口氏「国民生活にプラスのメッセージ」

公明党の山口代表は記者団に対し、「早期に成立できたのは喜ばしいことで、国民生活や経済全体にとってプラスのメッセージになる。統計問題は政府の不手際が多々あったので、再発防止を徹底してほしい。児童虐待防止法などの改正案は、野党側も対案を出すので、スピーディーに合意を作る努力をお互いすべきだ」と述べました。

また閣僚の答弁について、「誤解を招くような発言が時折見られることは残念で、丁寧に気を引き締めてやるべきだ。後半国会では、一層緊張感を持って対応してもらいたい」と苦言を呈しました。

公明 高木氏「参議院の意思示すことを評価」

公明党の高木国会対策委員長は記者団に対し、「参議院でも丁寧な審議をして、自然成立を待たずに、参議院としての意思を示すことを評価している。早期の成立で景気にとってプラスになるのではないか」と述べました。

立民 福山氏「将来の日本経済に大きな禍根」

立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し、「消費増税を前提に天下の愚策である軽減税率を導入するという予算が通ったのは、将来の日本経済と国民生活に大きな禍根を残す。消費増税が適切かどうかは、今後もしっかりと国会で議論を深め、安倍政権のおかしなところをより強く追及していく」と述べました。

そのうえで福山氏は「毎月勤労統計調査の問題は、実質賃金が公表されておらず、特別監察委員会の報告書のずさんさ加減も問題解決に至っていないので、引き続きやらなければいけない」と述べました。

国民 玉木氏「十分な審議なく強く抗議」

国民民主党の玉木代表は、記者会見で「消費税増税を前提にした予算になっており、軽減税率やポイント還元は現場に混乱を生じさせる可能性が高く、政策効果もよく分からない。大変問題の多い予算と言わざるをえず、家計にも大きな悪影響を与えるのではないかと認識している。十分な審議がなく、強く抗議したい」と述べました。

共産 穀田氏「消費増税前提の予算案認めず」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「消費税の10%への増税を前提にした予算案で通すわけにはいかない。統計不正の問題が出てきた中で、予算案の前提となる『実質賃金がプラスだったのか、マイナスだったのか、値を示すべきだ』という事も出していないなど、予算案と政府の姿勢に問題がある」と述べました。

維新 馬場氏「納税者が納得できる政治を」

日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で「総額100兆円を超える史上最大規模の予算で、予算が増える分、行政サービスを充実させ、一人一人の可処分所得が増えて、納税者が納得できる政治を実現していかなければならないが、与党側にはそういった部分で、欠落しているところがあるのではないか」と述べました。

消費増税や景気対策へ準備本格化へ

ことし10月に消費税率を10%に引き上げることを前提とした新年度予算が成立したことを受けて、政府や自治体は、増税や景気対策の準備を本格化させることにしています。

このうち増税に伴う景気対策では、キャッシュレス決済によるポイント還元制度の実施に向けて、政府はすでに決済事業者の募集を始めています。これまでに「JCB」や「クレディセゾン」など大手カード会社のほか、「楽天」や「LINEPay」などのQRコード決済の事業者、それに交通系ICカードの「Suica」を発行するJR東日本なども参加を申請しています。

経済産業省は、来月上旬にも参加する事業者の名前を公表することにしています。実際にポイント還元が受けられる店舗の募集も来月から始めることにしていて、10月の開始に向けて準備を急ぐことにしています。

プレミアム付き商品券も、各自治体が担当部署を設けるなどして準備を始めていて、政府は、ことし11月上旬までに商品券の購入に必要な引換券を、対象となるすべての世帯に送付することにしています。

さらに今回の税率引き上げに伴って導入される軽減税率についても、対象となる商品や消費者への対応などについて、国税当局が小売店などを対象に、各地で繰り返し説明会を開くことにしています。

一方、増税分の使いみちでは、幼稚園や保育所などの無償化に向けて、予算とは別に実施のための法案の審議も続いていて、成立ししだい、政府は各自治体への説明など準備を本格化させることにしています。

暮らしはどう変わる?

成立した新年度予算には暮らしに身近な事業も盛り込まれています。私たちの暮らしはどう変わるのでしょうか。

子育て・教育
まず、子育ての分野です。保育園や幼稚園などの費用は、ことし10月から、3歳から5歳までのすべての子どもを対象に無償化されるほか、0歳から2歳までの子どもについても、住民税が非課税の世帯を対象に無償化されます。財源には、消費税率の引き上げによって得られる税収を充ることになっています。

介護・年金など
消費税率引き上げによる負担軽減に向けて、年金などの所得が年間およそ78万円を下回る65歳以上の人を対象に、原則として、月額最大5000円の給付金が支給されます。また、住民税が非課税の世帯の高齢者の介護保険料の負担も本人の収入に応じて軽減されます。このほか、年収360万円以下の未婚の1人親が受けられる児童扶養手当の支給額が、年1万7500円上乗せされます。

医療
医療機関に支払われる、「診療報酬」も消費税率引き上げに合わせて変わります。医師の人件費などにあたる「本体」部分が、0.41%引き上げられます。その一方で、薬の価格などの「薬価」部分は社会保障費を抑制するため、0.51%引き下げられます。75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度では、年金収入が年間168万円以下の人の保険料を最大9割軽減する特例措置が廃止されますが、新たな給付金などで負担が相殺されます。さらに給付金の支給対象にならない人は、1年間に限って負担が増えないように国から補填(ほてん)されることになっています。

軽減税率 煩雑な対応に
消費税率の引き上げに伴って導入されるのが、酒を除く飲食料品などに限って税率を8%に据え置く「軽減税率」です。
同じ食べ物でも「持ち帰り」は8%、「店内で飲食」する場合は10%の税率が適用されるため、店内に飲食スペースのあるスーパーは、客の混乱を避けるための対応が必要になります。
千葉県市原市のスーパーは、店内に4台のテーブルなどを置いた24席の飲食スペースを設けています。客が店で買った弁当やパンを食べる際などに利用されています。飲食スペースを残した場合、増税後は、レジで持ち帰りか飲食スペースで食べるのか客に確認する作業が必要になり、レジの作業が煩雑になります。
4か月ほど前に取材に訪れた際、担当者は、「正直どう対応すればよいか、かなり頭を悩ませている」と話し、対応に苦慮していました。
その後の検討では、「いっそ飲食禁止にすべき」という意見もあったということですが、スーパーの高橋洋社長は、飲食スペースが地域の人たちのいわば「憩いの場」になっているとして、10月以降も存続させることにしました。ただ、レジでの確認作業は従業員の負担になることから、このスーパーでは、飲食スペースを利用する客に、みずから申し出てもらうよう呼びかける貼り紙を作ることを検討しているということです。
高橋社長は、「お申し出のないまま飲食スペースで食べているお客様にどう対応すればよいかなど、課題はまだあると思います。事前にできる準備を着実に進めていきたい」と話していました。

景気対策見込んだ動きも
消費税率引き上げに伴う景気対策を見込んだ動きも、すでに始まっています。
クレジットカード大手の「クレディセゾン」は、景気対策として導入される、「キャッシュレス決済のポイント還元制度」をきっかけに地方の加盟店を増やそうと、営業を強化しています。
先週は、会社の担当者が、群馬県前橋市の商工会議所が開いたキャッシュレス決済に関する勉強会に参加し、集まった商店主たちに、カード決済の導入を呼びかけました。政府のポイント還元制度では、増税以降、消費者が中小の店舗で、カードを含めたキャッシュレスで買い物をすると、その購入額に応じて政府の補助金でポイントが還元されます。
会社の担当者は、制度の導入を契機に消費者の間でキャッシュレス決済が広がる可能性があるとして、店としても対応する必要性を訴えていました。
クレディセゾンの渋谷淳一北関東支社長は、「国のポイント還元制度は大きな武器となっていて、地方にキャッシュレスを広げる大きなチャンスだと認識している」と話していました。

小売店・飲食店 キャッシュレス導入するか
一方、小売店や飲食店の中には、キャッシュレス決済を導入するか、依然として悩み続けているところもあります。40年以上続く前橋市にあるそば店では、現金での支払いしか受け付けていません。しかし、このところ外国人の客が増え、カード払いができないか聞かれることも多くなったといいます。このため、今回のポイント還元制度をきっかけに、クレジットカードの決済端末の導入も検討し始めています。
しかし、カード会社に支払う手数料を考えると、なかなか決断できないと言います。今回の制度では、この手数料の一部も政府が補助することになっていますが、来年6月に制度が終了したあとは補助がなくなる予定で、負担に見合うだけのメリットがあるのか、まだ結論は出ていません。
また、導入するとしても、クレジットカードのほかに、QRコードや電子マネーなどさまざまな決済方法が乱立し、どれがいいのか決めるのが難しいと言います。
そば店の鹿沼元男社長は、「導入してみたはいいが、だめだったから別の端末にしようとはできない。われわれ店側への補助ももう少し多くしてもらえたらよかった」と話していました。