阪都構想「身分にこだわ
れば実現不可能」松井知事

大阪府の松井知事と大阪市の吉村市長は、いわゆる「大阪都構想」の実現に向けて改めて民意の後押しを得たいとして、府議会と市議会の議長に辞職願を提出し、松井氏が市長選挙に、吉村氏が知事選挙に立候補することを正式に表明しました。

いわゆる「大阪都構想」をめぐって、7日、構想の設計図を検討する法定協議会が開かれましたが、構想の是非を問う住民投票について、各党の意見がまとまらず、決裂しました。

これを受けて、大阪維新の会の代表を務める大阪府の松井知事と、大阪市の吉村市長は、「大阪都構想」の実現に向けて、改めて選挙で民意の後押しを得たいとして、任期満了を前に8日午後、府議会と市議会の議長に辞職願を提出しました。

このあと松井氏は、大阪維新の会の会合で、「知事と市長のポジションを入れ替えて選挙に臨む。税金の使い方にこだわってきたので、1年に2回も選挙を行うのは効率が悪いからだ。公約実現のために全力で戦い抜いて、都構想の住民投票を実現したい。死力をかけて戦いたい」と述べみずからが市長選挙に、吉村氏が知事選挙に、入れ代わって立候補することを正式に表明しました。

2人は、午後6時すぎから記者会見し、松井氏は、「いままさに都構想がつぶされかけている。この状況を打破するには自分の身分にこだわっていたら実現不可能だ。もう一度、世の中の意見をきいて、公約を守りたい」と述べました。

また吉村氏は、「都構想という1丁目1番地の公約がある。このままでは1票を託してくれた人たちに説明できない。もう1度、再挑戦するため、いったん府民、市民の皆さんに首を預けて信を問いたい」と述べました。

2人の辞職に伴う大阪府知事選挙と大阪市長選挙は、統一地方選挙前半の来月7日に行われることになり、自民党が、候補者を擁立するために調整を急ぐなど、各党の動きが加速することになります。

維新 片山 共同代表「党の存亡と運命かかる」

日本維新の会の片山共同代表は党の参議院議員総会で、「この選挙は、ある意味で、わが党の存亡と運命がかかっている。われわれの、いわば、1丁目1番地である『大阪都構想』実現のためにはやむを得ない過程ではないかと思うので、ぜひ、総力を挙げて党として参加し戦い抜きたい」と述べました。

各党の対応

自民党は、知事選挙と市長選挙にそれぞれ候補者を擁立するため人選を急ぐことにしていて、大阪府連の幹部は、反維新勢力の結集を図りたいとしています。

また、公明党や共産党も、自民党の動きや今後の情勢を見極めながら、具体的な対応を決めることにしています。

自民 甘利選対委員長「東京では理解されづらい」

自民党の甘利選挙対策委員長は、さいたま市で、記者団に対し、「住民投票をもう一度仕掛けたいというのが、選挙の理由だが、4年前は一回かぎりで民意を問いたいと言っていたはずだ。あれからまだ4年で、理解されるかは、大阪の市民や府民の判断だが、たすき掛けで選挙を行うというのは、東京では理解されづらいと思う」と述べました。

そのうえで、「自民党大阪府連から、候補者をしっかり擁立したいという話が来ている。まだ具体的な名前は挙がっていないが、時間はそう残されておらず、立てるなら、早く選定するようお願いしている」と述べました。

立民 大阪府連 辻元代表「投げ出し選挙」

立憲民主党大阪府連の辻元代表は大阪中央区で記者会見し「『大阪都構想』は決着がついているのに、未練がましい。松井知事の独り相撲のような対応であり、府民を巻き込まないでほしい。クロス選挙、出直し選挙ではなく、『投げ出し選挙』だ。府民、市民と力を合わせて、ただしていかないといけない」と述べました。

国民 玉木代表「一般の人は意味が分からず」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「一般の人にとっては『意味がよく分からない』というのが正直な印象ではないか。選挙になるのであれば、候補者が出そろった時点で、党として判断していきたい」と述べました。

公明 大阪府本部 佐藤代表「職務 職責の放棄」

公明党大阪府本部の佐藤代表は、大阪市内で記者団に対し「残りの任期を投げだしたことは職務、職責の放棄だ。何のための選挙で、何の民意を問うのか、また、府民、市民の生活や大阪の成長のために何のメリットがあるのか、はなはだ疑問だ。まさに選挙の私物化、党利党略以外のなにものでもない。税金のむだづかい以外のなにものでもない」と述べました。

共産 大阪府委 柳委員長「最悪の党利党略」

共産党大阪府委員会の柳委員長は大阪市内で記者会見し「ダブル選挙には一片の大義もない。『大阪都』の行き詰まり、府市政投げだし選挙と言うべきものだ。まさに最悪の党利党略だ。維新政治を終わらせるチャンスなので、保守の人を含め広く共同して戦っていきたい」と述べました。

大阪都構想のこれまでの経緯

いわゆる「大阪都構想」は、政令指定都市の大阪市を廃止し、東京23区のように、住民サービスを担う複数の特別区に再編するというものです。大阪府との二重行政を解消するとして、橋下徹前大阪市長が実現を目指しました。

しかし、構想の是非をめぐり、4年前に行われた住民投票では、1万票余りの差で「否決」。これを受け、橋下氏は政界を引退しました。

住民投票から半年後、松井知事と吉村市長は、「大阪都構想」への再チャレンジを掲げて当選。

おととし、構想の設計図を検討する「法定協議会」が再び設置されました。住民投票を行うためには、法定協議会で、構想の設計図となる協定書を取りまとめたうえで、大阪府議会と大阪市議会での議決が必要です。

松井知事が代表を務める大阪維新の会は、府議会と市議会で過半数を確保していないため、前回、住民投票の実施に賛成した公明党に協力を求めました。しかし、住民投票の実施時期や議論の進め方などをめぐって折り合わず、交渉は物別れに終わりました。

法定協議会でも、今月中の結論を求める大阪維新の会と、これに反対する自民党、公明党、共産党の間で対立が深まりました。そして、7日、住民投票をことし秋に実施するとした維新の案が、自民、公明、共産の3党の反対で否決。協議は決裂しました。

なぜクロス選挙に

松井氏と吉村氏は、当初は、それぞれが、改めて知事選挙と市長選挙に立候補する意向でした。

ただ、仮に当選しても、任期は、辞職しなかった場合と同じ、ことし11月と12月までで、秋に再び知事と市長の選挙が行われることになります。

このため、「選挙費用が増えるおそれがある」といった批判や、各党が、候補者の擁立を見送る可能性があるのではないかという見方も出ていました。

2人が入れ代わって立候補することで、1年に2回の選挙が行われるのを避け批判をかわすとともに、自民党などを同じ土俵に引き込むねらいがあるものとみられます