織として虚偽説明」も
「隠蔽の意図ない」特別委

厚生労働省の毎月勤労統計調査の不正問題で、再検証を進めてきた特別監察委員会はその結果を取りまとめ公表しました。「担当部署が組織として公的な場で虚偽の説明をしていた」と指摘した一方で、前回と同じく、「隠蔽の意図は認められなかった」と結論づけています。

毎月勤労統計調査の不正をめぐって、厚生労働省は先月、外部の有識者からなる特別監察委員会を立ち上げ、「不正を隠蔽する意図は認められなかった」などとする検証結果をまとめましたが、拙速などという批判を受け、検証をやり直していました。

特別監察委員会は27日午前、会合を開いて再検証の結果について報告書を取りまとめました。

報告書などによりますと、不正は平成16年に始まりましたが、平成25年に統計に詳しい課長が着任し、歴代の課長では初めて不正に気付いたということです。しかし、この課長は不正を正さなかったうえ、統計調査のマニュアルから不正に関する記述を削除していました。平成26年に全国の都道府県に配付された統計調査のマニュアルから東京都の抽出調査に関する記述を削除したことについて、当時の担当課長は「他の県に知らせる必要はないと考えた」と説明しているということです。

この説明について報告書では「不合理なものではない」としています。

また、後任にあたる室長は不正について引き継ぎを受け、去年、ゆがんだデータを補正する処理を初めて行いましたが、補正を行ったことは公表せず、上司にも報告していませんでした。これについては「隠蔽するために補正処理をしたのではないかという疑問も生じるが、室長は隠蔽を否定しており、それを覆す証拠は得られなかった」としています。

さらに、担当部署が平成27年と28年に外部の有識者を交えた検討会などでは、正しい手法で統計調査を行っていると虚偽の説明をしていたことを今回の報告書に新たに盛り込みました。報告書によりますと、平成27年に外部の有識者を交えた検討会で、当時の課長らが東京都でルールに反した抽出調査が行われていることを知りながら「全数調査をしている」と説明していました。また平成28年に厚生労働省が総務省に提出した調査計画の書類でも「全数調査を行う」と記述していました。これについて報告書では、課長と室長の指示のもと、担当部署が組織として公的な場で虚偽の説明をしていたと認定しました。

一方、統計部門のトップを務めた部長や政策統括官の幹部全員が不正によって統計データがゆがんでいることを知らなかったと証言しているということで、特別監察委員会は、前回と同じく、「組織的な隠蔽は認められなかった」と結論づけました。

特別監察委員会は一連の行為を隠蔽と認定しなかったことについて、「積極的に隠そうとした意図までは認められなかった」と説明しています。

毎月勤労統計調査では、調査方法の変更をめぐっては総理大臣官邸の関与があったのではないかと野党側が指摘し、国会で議論が行われていますが、特別監察委員会は変更には統計学的な合理性があるとして、野党側の指摘については検証していないということです。

根本厚労相「組織ガバナンスの確立を進めたい」

特別監察委員会の樋口美雄委員長は、再検証の結果をまとめた報告書を根本厚生労働大臣に手渡しました。

これに対し、根本大臣は「集中的、精力的に検討していただいたことに感謝している。これからしっかり読ませていただくが、再発防止や厚生労働省の信頼回復を進めることの責任は私にある。統計行政の姿勢を根本から正していけるよう、先頭に立ってしっかりした組織ガバナンスの確立を進めていきたい」と述べました。

このあと、根本大臣は記者団に対し「厳しい批判があることは真摯(しんし)に受け止め、これからの対策に生かしていきたい」と述べました。

特別監察委 委員長「甚だしい職務怠慢」

特別監察委員会は27日、再検証の結果の公表に合わせて記者会見を行いました。

会見で樋口美雄委員長は「公的統計の意義や重要性に対する意識の低さを指摘せざるをえず、甚だしい職務怠慢で、公務員として到底許されない」と指摘しました。

そのうえで、隠蔽を認めなかった理由について「不適切な行為に関わった担当職員は深刻な不正があると捉えておらず、意図的に隠したとは認められないことから、隠蔽行為があったとは言えない」と述べました。

一方、毎月勤労統計調査をめぐっては調査方法の変更に総理大臣官邸の関与があったのではないかと野党側が指摘し、国会で議論が行われていますが、この点についての詳しい検証は行われていません。

これについて樋口委員長は「調査方法の変更はきちんと手続きを踏んだうえで採用されており、統計学的にも十分、合理性を認められると判断したことから検証の対象に入れる必要はないと判断した」と説明しています。

野党ヒアリングでは批判相次ぐ

厚生労働省の統計不正問題で、再検証を進めてきた特別監察委員会が、組織的な隠蔽は認められなかったとする報告書をまとめたことについて、野党側からは「報告書自体が問題を隠蔽しようとしている」といった批判が相次ぎました。

厚生労働省の毎月勤労統計調査の不正問題で、再検証を進めてきた特別監察委員会は、組織的な隠蔽は認められなかったとする報告書をまとめました。

これを受けて、野党側のヒアリングが行われ、議員からは「不正が延々と引き継がれ、虚偽の報告もしているのに、なぜ組織的な隠蔽ではないのか」とか、「相当、甘い分析で、報告書自体が問題を隠蔽しようとしている」といった批判が相次ぎました。

これに対し、厚生労働省の担当者は「報告書は特別監察委員会として、議論されて、まとめられたものだ」などと説明するにとどまりました。

批判受け検証やり直し 特別監察委

報告書をまとめた特別監察委員会は、一連の問題のうち最初に明らかになった「毎月勤労統計調査」をめぐる不正について検証を行ってきました。

問題発覚後の先月、第三者による客観的な調査が必要だとして、外部の有識者をメンバーに厚生労働省が立ち上げ、その6日後にいったん調査結果を取りまとめ、公表しました。

ところが、関係職員への聞き取りに厚生労働省の幹部が同席していたことや、わずかな期間で結論を出したことに批判が上がりました。

このため特別監察委員会は検証をやり直すことになり、第三者性を高めるため弁護士からなる事務局を設置するとともに、改めて関係職員への聞き取りなどを進めてきました。

特別監察委の委員長を28日に参考人招致

自民党の森山国会対策委員長は立憲民主党の辻元国会対策委員長と会談し、厚生労働省の統計不正問題をめぐって、再検証の結果をまとめた特別監察委員会の樋口美雄委員長を、28日に衆議院予算委員会に参考人として招致することを伝えました。

一方、衆議院予算委員会での新年度予算案の審議をめぐって、辻元氏が「審議を続けてほしい」と改めて求めたのに対し、森山氏は「野党の質問時間も積み上がっており、採決をお願いしなければいけない」と述べて、折り合いませんでした。