質賃金検討会「結論の
先延ばしだ」野党が批判

厚生労働省の毎月勤労統計調査をめぐり、野党側が求めている方法で実質賃金の伸び率を算出すべきか話し合う厚生労働省の検討会が初会合を行いました。検討を終える時期は示されず、野党からは結論の先延ばしだという批判も上がっています。

毎月勤労統計調査をめぐっては、調査対象となる事業所の入れ替えが去年行われたことから、野党側は、実質賃金の伸び率を正確に把握するには前の年も調査対象となった「共通事業所」と呼ばれる事業所だけで集計すべきだとしています。

これについて、厚生労働省は、専門家の意見を聞いて判断したいとして、22日、統計や経済の専門家らによる検討会を立ち上げて初会合を行いました。

22日の検討会では、すでに公表している数値と野党側が求める「共通事業所」だけで算出した数値との特性の違いをどう考えるかなど、今後の論点が示されました。

一方で、検討を終える時期は示されず、野党からは結論の先延ばしで検討会そのものが時間稼ぎにすぎないという批判も上がっています。

「共通事業所」だけで算出した数値はすでに野党側が独自に試算し、去年の実質賃金の伸びは大半の月でマイナスだったとしていて、厚生労働省も同様の傾向になることを認めています。

調査方法 変更の経緯は

毎月勤労統計調査をめぐっては、去年1月に行われた調査方法の変更について、野党側は、総理秘書官の指示があったのではないかとしています。

従業員30人から499人の事業所について、以前は2、3年に一度、調査対象をすべて入れ替えて行われていましたが、去年1月からは毎年一部ずつ調査対象を入れ替える新たな方法に変更されました。

この変更にあたって、厚生労働省は、平成27年の3月から9月にかけて6回にわたり有識者による検討会を開きました。

この過程で、5回目の検討会は従来の方法が適当だとする方向で議論を終えました。ところが、最後の6回目の検討会は、従来の方法と新たな方法の2つを併記するという結論を示さない形での報告書をまとめました。

厚生労働省によりますと、当時の姉崎統計情報部長の指示で、6回目の検討会の2日前の平成27年9月14日に、新たな方法も併記する形に報告書案を修正したということです。

姉崎氏が当時の中江総理大臣秘書官と面会していたのは同じ9月14日でした。姉崎氏は、この日の午後の早い時間に面会したと説明しています。

また、有識者検討会の座長を務める中央大学の阿部正浩教授によりますと、この日の午後4時すぎに厚生労働省の担当者から電子メールが届き、「検討会の委員以外の関係者から新たな方法で行うべきという意見が出てきた」と伝えられていました。

野党側は、総理大臣秘書官の指示で、報告書案がそれまでの議論と異なる内容に書き換えられたのではないかと批判しています。

一方、姉崎氏は22日の衆議院予算委員会で「当時はもともと報告書を修正している最中で、総理大臣秘書官との面会が大きな原因になったのではない」と述べ、秘書官の影響を否定しています。

また、検討会の阿部座長はNHKの取材に対して「新たな方法はコストが高くなるため、いったんは従来の方法を続ける方向でまとまりかけたが、コストの問題が解決されるなら新たな方法のほうが望ましいと以前から考えていた。9月14日にメールを受け取ったあと、担当者と電話でやり取りし、結論の修正を了承した」と述べ、変更経緯に問題はないとする考えを示しています。

賃金データ上振れの背景

厚生労働省によりますと、毎月勤労統計調査の賃金データは去年1月以降、2つの要因で上振れしています。

調査対象入れ替え
1つは調査対象の入れ替え方法の変更です。従業員30人から499人の事業所については、調査対象となる事業所を2、3年に1度すべて入れ替えていましたが、入れ替えのたびにデータに大きな差が生じるため、公表済みの過去の数値まで下方修正することもありました。そのため、調査対象の事業所を毎年一部ずつ入れ替える方法に変更されました。これによって賃金のデータが0.1%上振れしたということです。

経済情勢反映の補正せず
もう1つの上振れ要因とされるのは、産業ごとの労働者の数など経済情勢を調査結果に反映させる「ベンチマーク更新」です。「ベンチマーク更新」を行うとそれまでのデータとの間に段差が生じることから、従来は、その段差を小さくするため、過去に公表したデータを補正していました。ところが、去年1月に6年ぶりに行われた「ベンチマーク更新」では、過去のデータの補正が行われませんでした。この影響で、賃金のデータが0.4%上振れしたということです。

批判と見解
これについて野党側は「数値を意図的に上振れさせ賃金を高く見せかけたアベノミクス偽装にほかならない」と批判しています。厚生労働省は「一連の調査方法の変更は過去にさかのぼってデータ修正をすることがないようにするための措置で、賃金を高く見せようという意図はない」と説明しています。