国に約束順守求める考え
河野外相 外交演説

河野外務大臣は衆参両院の本会議で外交演説を行い、「徴用」をめぐる判決などを踏まえ、韓国に対し、日韓請求権・経済協力協定や慰安婦問題をめぐる日韓合意など国際的な約束事を守るよう強く求めていく考えを強調しました。

この中で、河野外務大臣はまず、北方領土問題を含む平和条約交渉について、「領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、交渉責任者として粘り強く交渉に取り組む」と述べました。

そして、日韓関係について「徴用」をめぐる判決や慰安婦問題の日韓合意に基づく財団を韓国政府が一方的に解散するとしたことなどを念頭に、「韓国に対しては、日韓請求権・経済協力協定や慰安婦問題に関する日韓合意など、国際的な約束事をしっかりと守ることを強く求めていく」と強調しました。

さらに北朝鮮問題では、すべての大量破壊兵器と弾道ミサイルの完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄の実現まで、国際社会の団結を維持するとともに、拉致問題の早期解決に向けた努力を続けると改めて表明しました。

一方、河野大臣は働き方改革についても触れ、外務省の業務が飛躍的に増大し、一部の職員の残業時間は大変深刻な状況にあるとして、答弁の作成業務などを念頭に、国会議員も業務の削減に協力するよう呼びかけました。

準備2か月「河野節」の内容に

河野外務大臣が衆参両院の本会議で行った外交演説は、およそ2か月かけて練り上げたということで、基本的な外交方針にとどまらず、職員の働き方改革や語学教育の在り方にまで言及していて、いわば「河野節」ともいえる内容となりました。

河野外務大臣が28日衆参両院の本会議で行った外交演説は文字数にして7758字で、去年、自身が行った演説より1000字以上増え、ここ数年の演説と比べるとおよそ1.5倍ほどの長さです。

外交演説は、事務方が作成した原案をもとに大臣が筆を入れるのが通常ですが、今回は河野大臣みずから書き下ろし、事務方が細かい事実関係を確認するという手順で、およそ2か月かけて練り上げたということです。

演説では「日米関係の強化」や「近隣諸国との関係の強化」、さらに「中東政策の強化」など外交の基本方針となる6本柱を紹介し、冒頭の3分の1はこれまでと同じ構成でした。しかし、この後、河野大臣は「今回は、これらに加えて、いくつかのことを申し上げたい」と切り出し、ここから、いわば「河野節」ともいえる演説が始まりました。

外務省職員も「働き方改革」を

まず、河野大臣が言及したのが、職員の働き方改革の必要性でした。

「外務省の業務は飛躍的に増大し、一部の職員の残業時間は大変深刻な状況にある。このような状況が続けば、外務省に優秀な人材が集められない状況にも陥る。職員が普通に家族と時間を過ごせる体制の整備に取り組む必要がある」

そのうえで「立法府にもぜひ、このような状況をご理解いただきたい」と述べ、答弁の作成業務などを念頭に、国会議員も業務の削減に協力するよう呼びかけました。

「トップセールス」が重要

就任以来ハイペースで諸外国を回り、1年半で延べ94の国と地域を訪問した河野大臣。外交演説ではその重要性をこう強調しました。

「国連安保理の非常任理事国選挙を始め、国際司法裁判所の選挙など、国際場裏で日本への支持を獲得するためにはトップセールスが欠かせない。また、多くの国際会議はますます各国の利害が激しくぶつかり合う場になっており、日本の立場を反映させるためには、事前の連携や事後の調整が欠かせない。『どの国も取り残さない』という精神で身を粉にして職務に努める」

英語教育の抜本的な改革は急務

また、英語が堪能な河野大臣は演説の中で日本の英語教育の現状を嘆きました。

「日本で高等教育を受けても英語ができるようにならないことが、国際機関だけでなく、日本人がさまざまな場面で活躍する際の障壁となっている。美しい日本語か英語かの選択ではない。どちらも必要だ」そのうえで、英語教育の抜本的な改革が急務だとして、文部科学省と連携していくことを打ち出しました。

国際機関トップ 日本も政治家を候補者に

そして演説の最後、河野大臣は国会議員にも外交への参加を呼びかけました。

「国際機関の中でも重要な組織のトップを取るために、各国は首相や閣僚経験者を始め政治家の候補者を擁立してきている。これに対抗し、国際機関のトップを取るためには日本も政治家を候補者として擁立していく必要がある。そのためにも与野党の枠を超え、適材を適所に擁立することが必要だ。われこそはと思う方はぜひ名乗りを上げていただきたい」