倍首相発言「解決一方的
に押しつける試み」ロ外務省

ロシア外務省は、平和条約交渉に関する安倍総理大臣の最近の発言をめぐって、解決のシナリオを一方的に押しつける試みだと批判し、日本側に伝えたことを明らかにしました。交渉はこれから始まると日本をけん制するとともに、ロシア国内向けには領土の引き渡しが決まったわけではないと強調するねらいもあるとみられます。

ロシア外務省は、9日、声明を発表し、安倍総理大臣が平和条約交渉に関連して「北方領土に住むロシア人の住民に帰属が日本に変わることに納得してもらうことも必要だ」などと発言したとして、ロシアに駐在する上月豊久大使を外務省に呼び、モルグロフ次官と面会したことを明らかにしました。

この中でモルグロフ次官はこうした発言について「双方の国民を混乱させるものだ。平和条約問題をめぐる雰囲気を故意に悪化させ、解決のシナリオを一方的に押しつける試みとしか受け取れない」と批判したということです。

ロシア国内では、今月、河野外務大臣に続いて安倍総理大臣がロシアを訪問し交渉に臨むのを前に、北方領土の引き渡しに警戒する世論が高まっていて、モスクワでも領土の引き渡しに反対する集会が計画されています。

ロシア政府としては、交渉はこれから始まると日本をけん制するとともに、ロシア国内向けには北方領土の引き渡しが決まったわけではないと強調するねらいもあるとみられます。

官房長官「粘り強く対応していく」

菅官房長官は記者会見で「わが国の考え方を説明したが、その具体的なやり取りは控えたいと思う」と述べ、反論を避けました。

そのうえで、菅官房長官は「いずれにしても政府としては、領土問題を解決して、平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く対応していきたい」と述べ、引き続き、北方領土問題を含む平和条約交渉の前進に取り組む考えを示しました。