用」収束見通せず
関係改善は当面困難の見方

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる裁判で、資産を差し押さえる韓国の裁判所の決定が日本企業に通知されたことを受け、日本政府は、請求権の問題は解決済みだとする立場から日韓請求権協定に基づく協議を韓国政府に要請しました。ただ事態の収束は見通せておらず、日本政府内からは関係の改善は当面、困難だという見方が出ています。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる裁判で、原告側が求めていた資産の差し押さえを認める韓国の裁判所の決定が被告側の新日鉄住金に通知され、対象となる株式の売却などができなくなりました。

これを受け、外務省の秋葉事務次官は韓国のイ・スフン駐日大使を呼び、日韓請求権協定で、請求権をめぐる問題は完全かつ最終的に解決済みだとする立場から、協定に基づく協議を要請しました。

協定では、その解釈と実施に関する紛争が存在する場合、外交ルートを通じて解決すると定めていますが、協議は過去に行われたことがないことに加え、日本側は以前、韓国側の要請に応じなかった経緯もあり、韓国側が協議に応じるか不透明で、事態の収束は見通せていません。

一方、訴訟の対象となっている日本企業はほかにもあることに加え、同様の訴訟がさらに起こされることも懸念されています。

このため、日本政府は、韓国政府に対し、影響が拡大しないよう粘り強く働きかけるととともに、国際司法裁判所への提訴に加え、国際法に反しない範囲で具体的な措置を講じることを検討していて、政府関係者からは関係の改善は当面、困難だという見方が出ています。

ムン大統領の発言に注目

国政府は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる裁判で、日本企業の資産の差し押さえを認める韓国の裁判所の決定について、日本政府から日韓請求権協定に基づく協議を要請されたことを受けて、協議に応じるかどうか慎重に検討しているとみられます。ムン・ジェイン(文在寅)大統領は10日、年頭の記者会見に臨む予定で、発言が注目されます。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる裁判で、新日鉄住金の韓国にある資産の差し押さえを認める韓国の裁判所の決定が企業側に通知されたことから、日本政府は9日、1965年の日韓国交正常化に伴って締結した請求権協定に基づく協議を初めて韓国政府に要請しました。

これを受けて、韓国外務省が9日夜、発表したコメントでは、「要請については綿密に検討する。被害者の精神的な苦痛と傷を癒やさなければならないという点や、未来志向的な日韓関係などを総合的に勘案し、対応策をまとめていく」としていて、韓国政府は協議に応じるかどうか慎重に検討しているとみられます。

韓国政府は、「司法の判断を尊重する」としたうえで、知日派のイ・ナギョン(李洛淵)首相のもと対応策の取りまとめを続けていますが、これまで韓国政府も「徴用」をめぐる問題は日韓請求権協定によって解決済みだとしてきただけに難しい判断を迫られており、10日午前10時から年頭の記者会見に臨む予定のムン・ジェイン大統領の発言が注目されます。

河野外相は

政府が日韓請求権協定に基づく協議を韓国政府に要請したことについて河野外務大臣は両国の間に協定に関する紛争があるのは明らかだとして、「韓国政府は協議に応じると考えている」と述べました。

河野外務大臣は訪問先のネパールで日本時間の10日未明、記者団の取材に応じました。

この中で、河野大臣は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる裁判に関連して、政府が日韓請求権協定に基づく協議を韓国政府に要請したことについて「差し押さえに関する通知が届いたので、粛々と協議の申し入れを行った」と述べました。

そのうえで、河野大臣は、「請求権協定に関する紛争があるのが明確になったため、協議の申し入れをした。今回は明らかに紛争があり、韓国政府は協議に応じると考えている」と述べました。

そして、「韓国政府は1日も早く対応策を実施に移し、日本企業に不当な不利益が生じないようにしっかりと対応してほしい」と述べ、韓国政府が適切な対応をとるよう重ねて求めました。