島先行返還論が一部に
みられる」外交文書に明記

日ソ共同宣言から4年後の1960年に外務省が作成した資料に、北方領土交渉をめぐって歯舞群島と色丹島の返還を先行して行う、いわゆる「二島先行返還論」が一部にみられると明記されていたことが、19日公開された外交文書で明らかになりました。

1960年1月に作成された当時の岸総理大臣のアメリカ訪問に向けた準備資料には、領土問題について「行き詰まり状態になっている」と記されています。

その一方で「最近わが国に、歯舞、色丹プラスアルファをもって本問題を解決し、平和条約を締結すべきであるとの議論が一部に見られる」といわゆる「二島先行返還論」が一部にみられると明記されています。

具体的な例として「日本国民が是認しうる最小限度の条件で速やかに平和条約を締結するよう努力すべし」という水産関連団体の要望が紹介されています。

そして、この要望について、真意は国後島と択捉島に対する日本の主権を認めさせたうえで歯舞群島と色丹島の返還によって平和条約を締結しようということだと分析しています。

また資料には、「ソビエト側において、従来の基本的態度を変化した兆候はなく、目下のところ解決に見通しが立たない」とも記されています。

資料が作成された4年前、1956年には、日ソ両国が、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことなどを明記した「日ソ共同宣言」に署名しています。

外交史が専門の筑波大学の波多野澄雄名誉教授は「『二島返還で解決すべきだ』という国内の意見をアメリカに伝えようとした資料は初めてではないか。潜在主権が沖縄だけではなく北方領土にもあるということをアメリカに確認したかったのではないか」と分析しています。