費増税対策 ポイント
還元は5% 9か月間で

安倍総理大臣は、来年10月に予定される消費税率の引き上げに伴う景気対策の一環として、クレジットカードなどのポイント還元について、還元率を5%とし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの9か月間、実施することを検討する考えを示しました。

自民党の岸田政務調査会長は22日、総理大臣官邸で安倍総理大臣と会談し、来年10月に予定される消費税率の10%への引き上げに伴う景気対策について党の提言を手渡しました。

これに対し、安倍総理大臣は「来年の消費税率の引き上げは、デフレ脱却への1つの試練であり、思い切った対策をしっかり行いたい」と述べました。

そのうえで、クレジットカードなどのポイント還元について、還元率を5%として、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの9か月間、実施することを検討する考えを示しました。

ポイント還元をめぐっては、これまで政府内で、消費税率の引き上げ幅に合わせて、購入額の2%分をカード会社のポイントなどで還元することが検討されていました。

還元率が5%となれば、クレジットカードや電子マネー、それにQRコードなど現金を使わないキャッシュレスで例えば1000円の買い物をした場合、50円分がポイントとして還元されることになります。

また、安倍総理大臣はマイナンバーカードを活用して、買い物に使えるプレミアムつきのポイントを販売するよう求める、自民党の提言についても、「しっかりと準備したうえで、導入していきたい」と述べました。

安倍総理大臣としては、ことし7月から9月までのGDP=国内総生産が2期ぶりにマイナスに転じたことなども踏まえ、消費税率の引き上げによる個人消費の冷え込みを避ける狙いがあるものとみられます。

官房長官「利用しやすい環境整える」

菅官房長官は午後の記者会見で、「期間を集中し、十分な還元率を確保するという自民党の提言があったことを踏まえ、今後、2020年のオリンピック前までの9か月間に限定したうえで、還元率をたとえば5%程度まで引き上げることを検討していきたい」と述べました。

そのうえで、菅官房長官は「クレジットカードにかぎらず多様な選択肢を用意し、消費者が利用しやすい環境を整えるとともに制度が固まり次第、周知にも万全を期していきたい」と述べました。

また、菅官房長官は記者団が「増税分以上に還元することになるが、財政健全化とどう整合性を図るのか」と質問したのに対し、「十分な還元率を確保して、駆け込み需要や反動減を抑制し、経済に変動を及ぼさないよう万全を期していくことが重要だ」と述べました。

立民 長妻政調会長「格差拡大する政策」

立憲民主党の長妻政務調査会長は、国会内でNHKの取材に対し、「バラマキのような形で、お金持ちも含め、実質的に5%も消費税率を減らすのは不可解だ。格差を拡大するような政策で、何のために消費税を上げるのか、ますます見えにくくなる。国民には『消費増税分は教育や社会保障に使ってほしい』という意見が多いと思うので、こういうやり方であれば、来年10月の消費増税は、ますます問題だと言わざるをえない」と述べました。

国民 玉木代表「思いつきの政策」

国民民主党の玉木代表は、東京都内で記者団に対し、「まるでバナナのたたき売りのようだ。よく考えて発信している政策なのかもわからないし、どれだけの財源が必要なのかも示されていない。かえって財政が悪化するおそれもあり、しっかりと安倍総理大臣にただしていきたい。思いつきの政策をさらなる思いつきで上書きしているような印象だ」と述べました。

増税分上回るポイント還元 なぜ?

ポイント還元制度は、来年10月の消費増税で消費が冷え込むのを防ぐ対策として政府が検討しています。クレジットカードや電子マネー、それにQRコードなどを使って、現金を使わずに買い物をした場合、その額に応じて、その後の買い物で使えるポイントとして消費者に還元する制度です。

中小の小売店で買う日用品のほか、税率が8%に据え置かれる酒を除く飲食料品や、外食や宿泊などのサービスの代金も対象にする方向です。

5%分の還元が実現した場合、軽減税率の対象となる飲食料品の税率は実質3%となる計算です。例えば、中小の小売店で飲食料品を1000円分買った場合、現在は税込み価格が1080円となりますが、増税後、軽減税率が適用され、5%=50円分のポイント還元も受けると、実質的な負担は1030円で済む計算です。

政府内では、これまで消費税率の引き上げ幅に合わせて2%分を還元する方向で検討が進められていました。安倍総理大臣はこれをさらに拡大し、増税分以上の還元を検討する意向を表明したことになります。

また、ポイント還元の期間は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの9か月間、実施することを検討するとしています。

背景には4年前、消費税率を8%に引き上げた際、消費が大きく落ち込んだ反省から、増税分だけ負担を軽くする措置では、消費刺激策としては不十分で、より思い切った対策が必要だという判断があったものとみられます。

ただ、こうしたポイント還元は、現金を使わず買い物した場合に限られ、クレジットカードを持たない人などには恩恵が行き渡りません。

また、増税分を上回るポイント還元を9か月間にわたって続けることになれば、景気対策の費用が一層膨らむことになり、社会保障の充実と財政再建という消費増税の意義そのものを問う声も出ています。

「景気の波平準化に効果 やりすぎの印象も」

伊藤忠経済研究所の武田淳チーフエコノミストは「増税後の景気の落ち込みをカバーしようという政権の強い決意を示したものだ。5%の還元となると増税後の消費の落ち込みをカバーするのはもちろんだが、増税前の駆け込み需要も後ろにずらすことができ、景気の波を平準化する効果が期待できる」と分析しています。

一方で、「来年の消費増税は前回より負担は小さいのに、ここまでの景気刺激策を行うのはやりすぎの印象が強い。ただでさえオリンピックのあとの景気が不安なところに、ポイント還元の終了というマイナスの要素が加わることになる。オリンピック後の景気を支えるために、また新たな財政支出をする事態になれば、財政健全化が相当遅れることになる。そうしたリスクをはらんでいる政策だ」と指摘しています。