議院予算委の議論
「徴用工判決」など

国会では、1日から衆議院予算委員会で質疑が始まり、安倍総理大臣は、韓国の最高裁判所が太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で日本企業に賠償を命じた判決について、国際司法裁判所への提訴も含め、あらゆる手段を使って、きぜんとした対応をとるとともに、韓国政府の前向きな対応を求める考えを示しました。

自民党の岸田政務調査会長は、韓国の最高裁判所が、太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で日本企業に賠償を命じたことについて「判決は、両国友好の法的基盤を根底から覆しかねない事態だ。最近の日韓関係は好ましくない事態が立て続けに起こっており、日韓関係をどのようにマネージしていくのか」と質問しました。

これに対し、安倍総理大臣は「未来志向の日韓関係構築に向けた協力を、累次、確認してきたにもかかわらず、それに逆行するような動きが続いていることは、大変遺憾だ」と述べました。

そのうえで、「旧朝鮮半島出身労働者の問題については、1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決しており、判決は国際法に照らせば、ありえない判断だ。日本政府としては、国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れてきぜんとして対応していく。日韓の間の困難な諸課題をマネージしていくためには、日本側のみならず韓国側の尽力も必要不可欠で、今回の判決に対する韓国政府の前向きな対応を強く期待している」と述べました。

また、安倍総理大臣は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて、「財政の健全化を図りつつ、子育て世代、子どもたちの世代に対して、しっかり投資をしていくうえでもしっかりと消費税率を引き上げていく必要がある。来年、リーマンショック級の出来事がない限り、消費税率を2%引き上げ、10%としていきたいと考えている」と述べました。

公明党の石田政務調査会長は、韓国の最高裁判所が太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で日本企業に賠償を命じた判決について「率直に言って、1965年の日韓請求権協定で終わっている話ではなかったのかと思うが、今後どうしていくのか」と質問しました。

これに対し、安倍総理大臣は「この事案については、『旧朝鮮半島出身労働者』の問題と捉えている。当時の国家総動員法の下の国民徴用令では、『募集』、『官あっせん』、『徴用』があったが、今回の原告4人は、いずれも『募集』に応じた人たちだ」と述べました。そのうえで、安倍総理大臣は「本件は、1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決をしたもので、判決は国際法に照らして、ありえない判断であり、日本政府としては、国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れてきぜんと対応していく」と述べました。

立憲民主党の長妻代表代行は、財務省で不祥事が相次いだことに関連し、先の内閣改造で麻生副総理兼財務大臣を留任させた安倍総理大臣の任命責任について「どんなに能力があったとしても責任取らなければならないときは責任を取るものだ。けじめをつけなくていいのか」とただしました。

これについて、安倍総理大臣は「真摯(しんし)な反省のうえに二度ととこうしたことが起こらないように、再発防止策を講じ、組織を立て直していかなければならない。麻生財務大臣にはその先頭に立って責任を果たしていただきたい」と述べました。

また、麻生副総理兼財務大臣は「私どもとしては、きちんとした処分をさせていただいたうえで、今後の財務省の風土などの改正、改革に全力を挙げていくことをもって、責任を果たすということにしていきたい」と述べました。

さらに、外国人材の受け入れ拡大に向けた法律の改正案をめぐって、安倍総理大臣は「外国人に対して自国の価値観などを強制するようなことがあってはならない。生活環境を確保するため、現在、検討を進めている共生のための総合的対応策をしっかりと実行に移し、来る側も、受け入れる側も、お互いが尊重し合えるような共生社会の実現に向けた環境整備を進めていくことが大切だ」と述べました。

山下法務大臣は、受け入れる外国人材の人数について「今回は数値ということで上限を設けることは考えていない。制度の運用にあたっては、できるだけ客観的な指標により人手不足の状況を確認して、国内人材の確保や、生産性の向上に向けた取り組みを行ってもなお、外国人材の受け入れが必要と認められる業種に限り、人材の受け入れを行うということだ」と述べました。

一方、片山地方創生担当大臣は、国税当局への口利きの見返りに会社経営者から100万円を受け取ったなどと一部週刊誌で報じられたことについて「お騒がせしていることは大変申し訳なく思っているが、私が企業への違法な口利きをしたこともなければ、100万円を受け取ったこともないので、私の名誉を毀損することから提訴した」と述べました。

そのうえで、片山大臣は「随所に事実と異なる記事があるので、今後、記事が事実ではないことを司法の場を通じてしっかりと明らかにしていきたい」と述べ、改めて疑惑を否定しました。

また、柴山文部科学大臣は医学部の不正入試問題について「入試における不適切な事案が明らかになった際には、補助金の減額も含めて適正に対処する」と述べました。