岸田首相 来週前半に物価高など受けた経済対策の柱を示す方針

岸田総理大臣は、訪問先のニューヨークで記者会見し、ロシアによるウクライナ侵攻で法の支配が揺らぐ今こそ国連改革が必要だとして、実現を目指す決意を強調しました。また来週前半には物価高などを受けた経済対策の柱を示し、検討を本格化させる方針も示しました。

国連総会に出席するため、ニューヨークを訪れている岸田総理大臣は、日本時間の21日朝に記者会見を行いました。
岸田総理大臣は、総会で行った一般討論演説などについて「厳しい世界を前に協調のための国際社会を実現するには人類全体で語れることばが必要だという考えから、『人間の尊厳』が守られる世界を目指すべきだと強く訴えた」と振り返りました。
そして「人間の尊厳」が守られる世界の実現には、法の支配が不可欠だとして、ロシアによるウクライナ侵攻を改めて強く非難し、侵攻の即時停止と軍の撤退を重ねて求めました。
そのうえで「今こそ国連が効果的な課題解決能力を発揮すべき時で、安保理改革を含む国連の機能強化のため、直ちに具体的行動に移らなければならない。分断と対立ではなく、協調して困難に立ち向かう場としての国連を実現すべく加盟国と協力していく」と述べ国連改革の実現を目指す決意を強調しました。
またみずからのライフワークとする核軍縮・不拡散の重要性も各国に呼びかけたことに触れ「『核兵器のない世界』は到達可能な理想だ。今後も、核兵器国・非核兵器国を問わず幅広く関与を得つつ、取り組みを着実に実行していく」と述べました。
一方、岸田総理大臣は、物価高などを受けた経済対策をめぐり「30年近くデフレマインドが支配的だった日本経済にさまざまな動きや変化が出てきている。変化を日本経済の力としていくために、構造的な賃上げや官民による投資拡大に重点をおいた大胆な内容の経済対策をスピーディーに実行していく」と述べました。
そして日本に帰国後、来週前半には経済対策の柱を示し、検討を本格化させる方針を示しました。
そのうえで「対策の柱立ては急激な物価高への対応、賃上げや投資拡大の流れの強化などを中心に、政府・与党幹部とも相談した上で提示していきたい」と述べました。
対策のとりまとめ時期は、来月中をめどとする考えを重ねて示しましたが、裏付けとなる補正予算案の国会への提出時期については「適切な時期に提出する」と述べるにとどめました。
一方、記者団から衆議院の解散戦略を問われたのに対し「先週、新体制を発足させたところであり、先送りできない問題に、一意専心に取り組んでいく。いまはそれ以外のことは考えていないのが現状だ」と述べました。
岸田総理大臣は、日本時間の21日夜から22日未明にかけて、国際保健に関するハイレベル会合に出席するほか、アメリカの経済関係者を前にスピーチを行い、日本の経済政策をアピールするなどしたあと、帰国の途に就くことにしています。
“処理水放出は演説の焦点ではなかったため触れず”
また岸田総理大臣は記者会見で、国連総会の一般討論演説で東京電力福島第一原発の処理水放出に言及しなかった理由を問われ「演説の焦点が国際社会の協調に向けた協力だったため触れなかった。処理水をめぐる日本の立場は国際会議の場や2国間会談の機会に丁寧に説明し、幅広い理解を得てきているところで、これからもそうした努力は続けていきたい」と述べました。