全国の町長と村長 デジタル化「非常に有効」1割台にとどまる

統一地方選挙を前に、NHKが全国すべての知事と市区町村長に行ったアンケートで、デジタル化について8割以上が「有効だ」と回答した一方、財政や人材の面での課題を挙げる声が多く寄せられました。

NHKは、統一地方選挙を前に、ことし1月から2月にかけて全国の知事と市区町村長1788人すべてを対象に、初めての大規模一斉アンケートを行い、93%にあたる1664人から回答を得ました。

この中で、デジタル化は、費用対効果の面からどの程度有効だと考えるか尋ねたところ
▽「非常に有効だ」が26.6%
▽「ある程度有効だ」が59.6%となった一方
▽「あまり有効ではない」が11.8%
▽「まったく有効でない」が0.6%で、「有効だ」との回答が大きく上回りました。

ただ効果に対する評価は自治体の規模で差があり、
「非常に有効だ」と答えたのは、
▽知事と政令指定都市の市長で7割を超えた一方
▽東京23区の区長はおよそ5割
▽政令市以外の市長で3割余り
▽町長と村長では1割台にとどまっています。

また、「有効ではない」と回答した市町村長らにその理由を聞いたところ、
▽「財政的な問題で導入が進められない」
▽「設備投資と維持管理費が、導入効果よりも高くなると予想される」などといった財政面での課題のほか、
▽「人材確保が困難」
▽「高齢化率が高く、メリットを感じない」
▽「小規模自治体はアナログ方式でも住民対応は出来る」などの指摘があがりました。

デジタル庁の浅岡孝充参事官は「デジタル化に前向きではあってもさまざまな事情で進められない自治体は一定数あると感じている」としたうえで、先行自治体の職員をデジタル化を進めたい自治体に派遣するなどして、支援にあたっていきたいと話しています。

デジタル化に取り組む自治体は

今回のアンケートで「非常に有効だ」と回答した人口およそ1万3000の長野県高森町では、行政の効率化を進めることで、町民と向き合う時間を増やそうとデジタル化に積極的に取り組んでいます。

新たに設けた「DX推進係」には民間からの人材を登用し、職員全員にノートパソコンを貸与してテレワークができるようにしたほか、決裁をオンラインでできるようにしました。

さらに去年には、外部の業者との契約にも「電子契約サービス」を取り入れました。

契約の際、クラウド上で署名するだけで契約が完了できるようになり、書面での契約で行っていた印刷、郵送、押印などの必要がなくなり、業者側は収入印紙も不要となります。

サービスの運営会社によるとこの「電子契約サービス」を導入したのは全国の町村で初めてだということです。

電子サービスで契約した町内の建設業者は、書類をやりとりするために役場との間を何度も往復することもなくなり、ほかの業務に充てる時間が生まれたとしています。

高森町では、今後、部局横断的に10人規模のチームを作ってデジタル化を行政サービスの向上につなげる具体化を急ぐ方針です。
壬生照玄町長は「ある程度機械化していく部分と、人として守らなければいけない部分を明確化するためにも、DXは必要な手段だと思っている。本来、町の職員がやらなければいけないことは町民が安心・安全で豊かに暮らしているかを検証しながら、政策に落とし込み実行することだ。少ない人材の中で職員が町民と向かい合う時間を作るために機械を有効に活用していく」と話していました。

専門家「行政効率化だけではなく住民サービス向上の観点を」

地方自治体のデジタル化に詳しい東北大学大学院の河村和徳准教授は、今回のアンケート結果について「コロナ禍を経て、デジタル化は費用がかかるが効果を強く認識し、進めていく必要があると考えた首長が多かったのではないか」と分析しています。

一方、自治体の規模によって効果に対する評価が分かれたことについては「ある程度財政に余裕があったり人口が多かったりして、デジタル化が明らかに行政効率にプラスになっているところは、積極的に賛成という方向に行くが、小さい自治体であったり、高齢化が進んでいたりするところでは財源もなく、職員や住民もなかなか得意ではないという事情があり、濃淡が分かれている」と指摘しています。

そのうえで「行政効率化の側面だけでデジタル化を捉えるのは視野が狭く、住民に対するサービスを、ひいては地方自治をよりよくしていくためという観点を持つ必要がある。紙で行政を執り行う明治以来の文化を変える出来事なので、数年間という短い期間ではなく長期的なスパンで、デジタル化について考えてほしい」と話しています。