放送法「政治的公平」 解釈めぐる内部文書 行政文書と確認

放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐり、立憲民主党が、衆議院本会議で、安倍政権当時の総理大臣補佐官が、一方的に解釈変更を迫ったことが明らかになったとして、徹底調査を求めたのに対し、岸田総理大臣は「経緯について総務省が国民に分かりやすく説明することが重要だ」と述べました。

放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐり、総務省は7日、立憲民主党が入手した文書について、総務省の行政文書だと認めたうえで公表しました。

7日の衆議院本会議で、立憲民主党の中谷一馬氏は「総務省の説明を無視して、安倍元総理大臣の意向で礒崎元総理大臣補佐官が、一方的に解釈変更を迫ったのではないか。総理主導で徹底調査し、結果を公表すると約束してもらいたい。ねつ造だと断言した高市経済安全保障担当大臣は、大臣はもちろん、衆議院議員も辞めるべきではないか」とただしました。


これに対し、岸田総理大臣は「総務省の行政文書であることを確認したが、内容が正確なものかなどについて、総務省で引き続き精査を行っている」と説明しました。

そのうえで、岸田総理大臣は「放送法の解釈については総務省が責任を持って整理し、従来の解釈を変更することなく補充的な説明を行ったと承知しており、経緯については総務省が国民に分かりやすく適切に説明することが重要だ」と述べました。

松本総務大臣 放送法「政治的公平」解釈めぐる内部文書 行政文書と確認

松本総務大臣は、7日、閣議の後の記者会見で「総務省に保存されている文書と同一で、すべて総務省の行政文書であることが確認できた」と述べ、行政文書であることを認めました。
一方、文書の中身については、「関係者の認識が異なって正確性が確認できないものがあり、引き続き精査、確認を進めているが、8年が経過しており、いろいろな課題がある」と述べ、精査を続ける考えを示しました。

また、作成者については、確認できたものとできなかったものがあるものの、前後の資料などから行政文書と判断したとしています。その上で「当時の礒崎総理大臣補佐官から『政治的公平』の解釈に関する問い合わせがあり、総務省の本来の業務の一環として適切に対応した。放送行政に変更があったとは認識していない」と述べ、法解釈は変更していないと重ねて説明しました。

松野官房長官「文書に記載内容は、総務省で引き続き精査行う」

松野官房長官は、7日、閣議のあとの記者会見で「総務省で、総務省の行政文書であることを確認し、本日中に公表する予定と聞いている。一方で、文書に記載されている内容については、総務省で引き続き精査を行っている」と述べました。また「放送法の解釈については、所管する総務省で責任を持って整理し、従来の解釈を変更することなく、補充的な説明を行ったものと承知している」と述べました。

高市経済安全保障担当大臣「内容が不正確だと確信を持っている」

高市経済安全保障担当大臣は、7日、記者会見で「私に関しての部分は4枚だが、作成者が書いていないし、日時が特定できていない。同席していたとされる方々にも確認し、認識は一緒だった。私と安倍元総理が電話をしたという内容が書かれていたが、していないし、そのような話もしていない。出来る範囲のことは調べ、内容が不正確だと確信を持っている」と述べました。その上で、みずからに関わる文書は、いまもねつ造だという認識を持っているか記者団に問われ「ありもしないことを、あったかのように書くのはねつ造だ。私に関して書かれた4枚はそう認識している」と述べました。

また、文書がねつ造でなければ、大臣や議員を辞職する考えかどうかについては「私に対して大臣や議員の辞職を迫るのであれば、相手も4枚の文書が完全に正確なものだと立証しなければならないのではないか」と述べました。

立民 安住国対委員長「高市大臣は責任とるべき」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「総務省が責任を持って文書を作っているので、書かれていることは事実だと認定したい。『安倍政治』の負の遺産のひとつが報道介入で、それを端的に示した例であり、自分たちの意に沿わない番組に『放送法の解釈を変えて潰せるぞ』と圧力をかけることは、民主主義社会の中で一番あってはならないことだ」と述べました。

その上で「高市経済安全保障担当大臣は『ねつ造だ』と言い張り、議員辞職まで言及している。事実とわかった以上、責任をとるべきだ」と述べました。

立民 小西参院議員「大臣と議員を辞職すべき」

立憲民主党の小西洋之参議院議員は、みずからのツイッターに「総務大臣が、私が公表した内部文書のすべてが総務省に存在し、行政文書であることを認めた。岸田総理大臣は、放送法解釈の改変プロセスの不正と内容の違法性を認め、解釈を撤回する必要がある」と投稿しました。

そのうえで「行政文書を『ねつ造』と国会で批判した高市大臣は、当時の事実関係の説明責任を果たした上で、速やかに大臣と議員を辞職すべきだ」とコメントしています。

また「行政文書と認めた文書の正確性などを精査するのであれば、総務行政の否定に等しく、これ以上の国会審議の妨害は許されない」と批判しています。

参議院予算委 理事会で報告

7日、参議院予算委員会の理事会で、与党側は、立憲民主党が、放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐる総務省の内部文書だとして公表した文書は、総務省の行政文書であると確認されたと報告しました。これに対して立憲民主党は「行政文書と認める以上は、正確かどうかも判断しているはずだ」などと指摘し、引き続き、説明を求めていく考えを示しました。

【これまでの議論の経緯】

立憲民主党は3月3日、参議院予算委員会で、放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐる総務省の内部文書を入手したとして、当時の安倍政権の圧力で法解釈が変更されたことが示されていると指摘しました。また、立憲民主党は、3月6日の予算委員会の質疑でもこの問題を取り上げ、松本総務大臣は、文書の確認作業を続ける考えを示しました。

安倍政権時にまとめた統一見解とは

放送法が定める「政治的公平」について、政府は、安倍政権当時の平成28年に、放送局の番組全体を見て判断するとしつつ、1つの番組のみでも、不偏不党の立場から明らかに逸脱している場合などは、政治的公平を確保しているとは認められないとした統一見解をまとめました。

立憲民主党が入手した内部文書めぐり 参予算委で議論

3月3日の参議院予算委員会で、立憲民主党の小西洋之氏は、当時の総務省の内部文書を入手したとしたうえで、その時の総理大臣補佐官が、特定の民放番組が政治的に偏っているとして法解釈の変更を発案し、安倍元総理大臣がそれを認めたことが示されていると指摘しました。

そして、「総務省は抵抗したが政治的な圧力によって、解釈をつくったことが見て取れる」とただしました。

これに対して松本総務大臣は、「文書は、正確性を期すための手順もとられておらず、作成者の確認など精査が必要だ。統一見解は、これまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたもので、従来の解釈を変更したものではない」と説明しました。

一方、当時、総務大臣だった高市経済安全保障担当大臣は、安倍氏と電話で解釈変更を協議したのではないかと指摘されたのに対し、「放送法について安倍氏と打ち合わせをしたことはない。全くのねつ造文書だ」と述べました。

そして、「もし、ねつ造でなければ大臣や議員を辞職するということでいいのか」と問われたのに対し、「結構だ」と応じました。

6日も引き続き質疑続く

また、3月6日の参議院予算委員会でも、立憲民主党が入手したとしている安倍政権当時の総務省の内部文書について取り上げられました。

松本総務大臣は、「文書を精査、確認する事態となり、はなはだ遺憾で申し訳なく思っている」と陳謝しました。

そして、「平成27年ごろ、当時の礒崎総理大臣補佐官から問い合わせを受け、解釈の補充的な説明が示されたことは確認されている」と述べ確認作業を続ける考えを示しました。

立憲民主党は、事実関係を直接ただす必要があるとして、礒崎氏らの国会招致を求めました。