防衛力強化 鈴木財務大臣「国債に頼らず」 自民会合「増税は唐突」

鈴木財務大臣は、防衛力の抜本的強化に向けて、岸田総理大臣から5年後に防衛費と関連する経費を合わせてGDPの2%に達する予算措置を講じるよう指示を受けたことについて、国債発行に頼ることなく、安定的な財源の確保を目指す考えを改めて示しました。

岸田総理大臣は、鈴木財務大臣と浜田防衛大臣に対する指示の中で、防衛力の強化について、財源がないからできないということではなく、必要な内容を迅速に確保するよう求めました。

これについて鈴木大臣は、11月29日の閣議のあとの記者会見で「『財源がないから渋るな』ということが、必ずしも国債ということにはつながらない」と述べ、防衛力強化の経費を国債で賄おうという意見をけん制しました。

そのうえで鈴木大臣は「防衛力を安定的に支えるための措置は不可欠だ。有識者会議の提言も踏まえつつ、与党ともよく連携して防衛力強化の内容、規模、財源を一体的に検討していきたい」と述べ、歳出改革にも取り組んだうえで、増税も含めて安定的な財源の確保を目指す考えを改めて示しました。

自民会合で「増税は唐突」批判意見相次ぐ

防衛費増額の財源として、増税を含めた国民負担が必要だとした、政府の有識者会議の報告書に対し、自民党の会合では「増税を念頭においた議論が出てくるのは唐突だ」などと批判的な意見が相次ぎました。

防衛力強化のための政府の有識者会議は今月22日、防衛費増額の財源として「幅広い税目」による増税を含めた国民負担が必要だとする報告書を、岸田総理大臣に提出しました。

これについて、29日開かれた自民党の安全保障関連の合同会議で、出席者からは「増税を念頭においた議論が出てくるのは唐突だ」とか「税収の上振れ分を活用できないかなどの議論が先だ」などと批判的な意見が相次ぎました。

また、有識者会議のメンバーについて「安全保障や軍事の知見がある専門家が十分に入っていない」という意見も出されたいうことです。

一方、岸田総理大臣が、令和9年度(2027年度)に、防衛費と関連する経費を合わせて、GDPの2%に達する予算措置を講じるよう指示したことについて、党の安全保障調査会長を務める小野寺元防衛大臣は「問題は中身だ。どれだけしっかりとした防衛に資する予算が計上されるかが、これから大変重要だ」と指摘しました。

公明 山口代表「最終的には安定的に防衛費支える財源措置を」

公明党の山口代表は、防衛費を増額するための財源について「当面、国債に基づく歳入の活用は限定的に視野に入っていると思うが、継続的に国債に頼ることは否定されるべきだというのが岸田総理大臣の指示の趣旨と受け止める」と述べました。

そのうえで「岸田総理大臣の指示は、最終的には安定的に防衛費を支えるしっかりした財源措置を講じるべしということだ。最終的には政治決着を図ることであるので与党の協議をしっかり進めていきたい」と述べました。

また、政府が防衛装備品のさらなる移転を進めるため「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しを検討していることについて「運用面で現実にそぐわないところがあれば柔軟に検討していくことがあっていい。国民の理解を得られるよう慌てないで議論していくことが重要だ」と指摘しました。

国民 玉木代表「増税は当面必要ない」

国民民主党の玉木代表は、記者会見で「次の『中期防』=『中期防衛力整備計画』は増税がなくてもできると考えており、追加で必要な予算は外国為替資金特別会計の活用などを最優先に考えていくべきだ。既存の防衛費の見直しや削減も踏まえてやれば、増税は当面必要ない。財源の議論も与野党でやればよい」と述べました。

防衛費「GDPの2%」とは

令和9年度=2027年度に防衛費と関連する経費を合わせてGDPの2%に達する予算措置とはどういうことなのか、具体的に見てみます。

今年度=2022年度のGDP見通しを前提に計算すると、GDPの2%はおよそ11兆円になります。

日本の防衛費は今年度の当初予算で5兆4005億円。

GDPの0.96%に当たります。

さらに、NATO=北大西洋条約機構の基準を参考に政府が算定した日本の「国防関連支出」は、海上保安庁の予算2231億円などを含めて6兆1000億円で、GDPの1.09%となります。

2%にはおよそ5兆円足りない計算です。

政府は、新たな安全保障関連経費の枠組みは検討中だとしていますが、政府の有識者会議が先週まとめた報告書では、従来の防衛省や海上保安庁の予算を補うものとして、研究開発、公共インフラ、国際的協力、サイバー安全保障の4つの分野を総合的な防衛体制の強化に資する経費として計上するよう求めています。

このため、岸田総理大臣が28日に指示した「防衛費と関連する経費を合わせてGDPの2%」には防衛費本体の増額に加え、こうした4つの分野の経費も含まれるものとみられています。