参院選1票の格差訴訟出そろう “著しい不平等状態”が半数超

ことしの参議院選挙で1票の価値に最大で3.03倍の格差があったことをめぐり、全国で起こされていた16件の裁判は11月15日、高等裁判所の判決が出そろいました。
著しい不平等状態だとする司法判断が半数を超える9件となり、格差是正に取り組む国会の姿勢に厳しい評価が示された形です。

ことし7月の参議院選挙では、選挙区によって議員1人当たりの有権者の数に最大で3.03倍の格差があり、2つの弁護士グループが「投票価値の平等に反し、憲法に違反する」などとして選挙の無効を求める訴えを全国の高等裁判所や高裁の支部に16件起こしました。

11月15日、一連の裁判で最後の高裁判決が仙台高裁秋田支部で言い渡され、「投票価値は著しい不平等状態にあった」として「違憲状態」だとする判断が示されました。

これで高裁判決は出そろい、選挙を無効とするものはなかったものの、「憲法違反」が1件、「違憲状態」が8件あり、1票の格差を著しい不平等状態とする司法判断が半数を超えました。

こうした判決の多くは国会に対し格差是正に取り組む姿勢が後退しているなどと批判していて、中には格差が2倍前後の衆議院選挙に近づけるよう求めるものもありました。

一方、残り7件の判決は「合憲」と判断しました。

一連の裁判は今後、最高裁判所で一括して審理され、統一判断が示される見通しです。

秋田の原告側弁護士「最高裁は『違憲状態』の判決を」

仙台高裁秋田支部の判決後、原告側の弁護士らが会見を行い、「期待していた判決が出て喜んでいる。人口に比例した選挙制度を実現するために訴えを起こしてきた。われわれの主張の正当性が認められたと感じている」と評価しました。

また、15日で一連の裁判の判決がすべて出そろったことに対し、「全勝したと思っている。どの裁判所も格差是正について見直しができていないことを明確に指摘しており、中には立法府の姿勢を厳しく批判している判決もある。現在は、根本的な選挙制度が揺らいでいる状況なので、最高裁判所には1人1票の法則を明らかにしてもらうためにも『違憲状態』という判決を出してほしい」と述べました。

松野官房長官「最高裁の審理を注視」

松野官房長官は午後の記者会見で「これまでに言い渡された高裁判決に対して上告がなされ、今後、最高裁で審理が行われる見込みがあることから、その推移を注視していく」と述べました。