旧統一教会「質問権」行使へ 専門家の会議始まる

旧統一教会に対して宗教法人法に基づく「質問権」を行使するため、文部科学省は専門家による会議を開き、行使するにあたっての基準などについて検討を始めました。

旧統一教会をめぐる高額な献金や、いわゆる「霊感商法」の問題について、岸田総理大臣から「質問権」の行使による調査の指示を受けた文部科学省は、25日午前、初めての専門家会議を開きました。

会議は、冒頭のあいさつ以外は非公開で行われ、文化庁の合田哲雄次長が、「質問権の一般的な基準を定めるため本件の重大性、緊急性を踏まえ、さまざまな角度から議論していただき、次回の会議で一定の方向性を示したい」と述べました。

「質問権」とは、宗教法人の活動で解散命令に該当する疑いがある場合などに、文部科学省や都道府県が運営実態などについて報告を求めたり質問したりできるものですが、実際に行使された例はありません。

専門家会議は、25日を含めて数回開かれる見通しで、宗教団体の幹部や大学教授など10人余りが「質問権」を行使する条件や範囲などについて議論するとみられます。

文部科学省は専門家会議の議論を踏まえて、年内にも旧統一教会に対し宗教法人法に基づく「質問権」の行使による調査を実施し、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合には、裁判所への請求を検討する方針です。

旧統一教会「質問が実際に来た時には誠実に対応」

宗教法人法に規定されている「質問権」の行使について、「世界平和統一家庭連合」旧統一教会の勅使河原秀行教会改革推進本部長は、今月20日に行われた会見で、「仮に質問が、実際に私どものところに来た時には誠実に対応します。質問権の行使にかかわらず、すでに宣言している、“教会改革”を進めることを粛々と続けて参りたい」と話しています。

宗教法人法に詳しい専門家「冷静な議論を期待」

宗教法人法に詳しい近畿大学の田近肇教授は、25日から行われる専門家会議について、「政治問題化して政治や世論に押される形で始まることになったが、『質問権』の行使は前例がなく、今後、ほかの宗教法人に影響を与える可能性もある。宗教法人法の解釈や運用の正しい在り方について冷静な議論を期待したい」と話しています。

「質問権」の行使について田近教授は、原則として法人の管理や資金に関することが対象になるとして、「あまり踏み込みすぎると、憲法で保障される『信教の自由』との関係で問題が生じるおそれがある。違法な活動が問題になった際に宗教上の問題にまで踏み込んで質問することができるのか、あるいは、どういう形であれば質問できるのか、考え方を整理しておく必要がある」と指摘しました。

一方、「質問権」は、警察の捜査のように強い権限はなく、帳簿などを強制的に提出させることができないことなどから、「組織的、あるいは継続的に悪質な行為をしていることを証明するのは、決して簡単なことではない」としています。

「解散命令」が出された場合の影響について、「法人格が剥奪されても活動を続けることはできるが、これまでのように宗教施設は所有できなくなる。税制上の優遇措置から外れると、税金の申告が必要になると共に資金の流れを税務当局に把握される。これまでどおりの活動は、事実上難しくなるのではないか」と話しています。

憲法学の専門家「法律の基準は時代や社会の変化に応じ柔軟に」

憲法学が専門の九州大学の南野森教授は、専門家会議で議論が始まる「質問権」の行使について、「政府の相談窓口に寄せられた内容が事実なのか、旧統一教会に説明を求めることが想定される。しかし検察の捜査のような強制権限はないので、悪質性、組織性、継続性を証明できるような新たな事実を出すのは難しいと思う」と指摘しました。

これまでの宗教法人に対する国などの対応について南野教授は、「宗教法人を疑わない、性善説を元に設計され、宗教法人に厳しい態度を取ることに抵抗感のようなものがあると感じる。しかし信教の自由も、他者の権利と衝突する場合は制限を受けるべきで、何をやってもよいということにはならない」と話しました。

そのうえで、宗教法人法に基づく解散命令の請求について、「非常にバランスが求められる案件だが、信教の自由に対する直接的な制約にはならない。法律の基準は時代や社会の変化に応じて柔軟に考えるべきで、過去に2例しかない基準に縛られる必要はない。政治判断が求められる案件で、被害の実態を岸田内閣がどう判断するかが問われている」と話していました。