環境活動家の絵画標的 相次ぐ理由は モネやゴッホ「モナリザ」も被害

モネ「積みわら」にマッシュポテト投げる

ヨーロッパで著名な絵画をねらって気候変動対策の必要性を訴える抗議活動が相次ぐ中、今度はドイツの美術館でフランスの画家モネの作品にマッシュポテトが投げつけられました。実行した活動家は石炭火力発電に反対する環境団体に所属しているということです。

ドイツ東部ポツダムのバルベリーニ美術館で、10月23日、環境活動家2人が印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネの作品「積みわら」にマッシュポテトを投げつけました。

その後、2人は作品の前に座り込んで「人々は飢え、凍えて死につつある。私たちは気候をめぐる大惨事に直面している。もし将来、人類が食料を取り合う事態になるのなら、この絵画には何の価値もない」などと訴えました。

ドイツ政府はロシアからの天然ガスの供給が減っていることを受けて石炭火力発電を一時的に拡大する方針を示していて、2人は石炭火力発電に反対する環境団体に所属しているということです。

美術館によりますと、作品はガラスで覆われていたため無事で、展示は近く再開されるということです。

ゴッホ「ひまわり」にトマトスープかける

ロンドン警視庁などによりますと、10月14日、ロンドンの美術館、ナショナル・ギャラリーでオランダの画家ゴッホの代表作「ひまわり」に、環境活動家2人がトマトスープをかける騒ぎがありました。

2人は、駆けつけた警察官に器物損壊などの疑いで逮捕されました。

額縁に若干の損傷があったものの、絵画はガラスで覆われていたため、無事だったということです。

現地メディアの映像には、2人の女が、手にそれぞれトマトスープの缶を持ち、中身を一気に絵画にかける様子が映っていて、このうち1人が「絵画と、地球と人々の命を守ること、どちらが大切なのか」などと叫んでいます。

逮捕された2人が所属する環境団体は、イギリス政府に化石燃料への投資などをやめるよう訴えていて、これは抗議の一環だと主張しています。

ナショナル・ギャラリーによりますと、この後「ひまわり」は、元の展示場所に戻されたということです。

有名絵画標的に気候変動対策の必要性訴える抗議活動相次ぐ

今回のように有名な絵画を標的にして気候変動対策の必要性を訴える抗議活動はヨーロッパで相次いでいます。

ことし5月にはパリのルーブル美術館で、環境活動家とみられる男が名画「モナリザ」にケーキを塗り付けました。

7月にはイタリアでも環境保護団体のメンバーが接着剤を使ってボッティチェリの「春」に手を貼り付ける抗議活動を行いました。

いずれの作品もガラスで保護されていたため、作品自体に被害はありませんでした。

ゴッホの「ひまわり」にトマトスープをかけた2人が所属する団体は、絵画を標的にした理由について「市民社会が崩壊したら芸術は何の役に立つのか。芸術を楽しむ世界に生きたいのなら、アーティストや芸術を愛する市民は抗議活動に踏み出す必要がある」としています。

専門家「行動非常に過激化」

環境と哲学が専門で環境保護団体の抗議活動に詳しい明星大学の浜野喬士准教授は「行動が非常に過激化していると感じる。ゴッホの絵を汚すという行動は社会の共感は得られず、ほとんどの人が嫌悪感を抱く行動だと思う。ただ、SNSなどでは限定的なフォロワーの間で共感の声が寄せられるとあたかも世界から称賛されているかのように感じる『エコーチェンバー効果』のようなことが起こる怖さがある」と指摘しました。
浜野准教授によりますと今回のように環境運動を理由に過激な行動を取る事件は「エコテロリズム」と呼ばれ、世界的に問題になっているということです。

浜野准教授は「こうした事件が起こることで環境運動はこんな極端な人たちがいるのでついていけないなどと感じさせてしまうおそれがあり中長期的に考えてもいいものではない。環境運動に取り組んでいる人たちの間でも『こういうやり方は間違っていて共感は生まない』などと声明を出すなど、しっかりと議論される必要があると思う」と話していました。