安倍元首相国葬 半旗掲揚は45都道府県 出席は43知事 NHK調査

9月27日に行われる安倍晋三元総理大臣の国葬で弔意を示すかどうか、全国の都道府県と政令指定都市の合わせて67の自治体に取材したところ、8割余りの57自治体が庁舎などに半旗を掲げると答え、「弔意を示さない」と答えた自治体は2つでした。
一方、8つの自治体が「検討中」としていています。

都道府県と政令指定都市調査 8割余り半旗や弔旗 掲げる

安倍元総理大臣の国葬について政府は「国民ひとりひとりに弔意を求めるものではない」として地方自治体や教育委員会に弔意表明を求めないことを決め、対応は各自治体に委ねられています。

NHKは47都道府県と20の政令指定都市の合わせて67の自治体に国葬当日の対応について取材し、22日午後の時点でまとめました。

庁舎などで弔意を示す予定があるか聞いたところ、45の都道府県と12の市の合わせて57の自治体が半旗や弔旗を掲げると回答しました。

示さないとした自治体は沖縄県と川崎市の2つでした。

福岡県や名古屋市、静岡市、浜松市、堺市、福岡市、北九州市、熊本市の8つの自治体が、「検討中」としていました。

「検討中」としている自治体からは、「他の自治体の動向を見て決めたい」とか、「過去の例を参考に考えることになるが、最近の事情を踏まえると慎重にならないといけない」などといった声が聞かれ、国葬に対する意見が分かれる中、今も対応に苦慮している様子もうかがえます。

一方、教育委員会に弔意の表明に関する通知を出すかを尋ねたところ、「出す」と回答したのは安倍氏の地元の山口県のみで、62の自治体は「出さない」と答え、静岡市、浜松市、福岡市、北九州市の4つの自治体は「未定」としています。

都道府県と政令指定都市トップ 9割以上参列

都道府県と政令指定都市のトップに、安倍元総理大臣の国葬に参列するかどうかも尋ねました。

NHKの取材では67自治体のうち、47都道府県と20の政令指定都市のすべてで政府から案内状を受け取っていました。

このうち43の都道府県知事と19の市長の合わせて62の自治体のトップが、参列すると答えました。

参列するとした東京都の小池知事は9月9日の会見で「安倍氏とはさまざまな政策を一緒に対応してきた。日本の運営を戦略的に進めてきており、案内をもらえれば参加していきたい」と述べています。

北海道の鈴木知事は「さまざまな意見があることは承知している」としたうえで、「何らかの形で国民が哀悼の意を寄せる機会が設けられることには賛成だ」と述べています。

静岡市の田辺市長は「いろいろな意見がある中で公費の支出はしない」として、私費で出席する意向を示しています。

一方、欠席すると回答したのは沖縄県と静岡県、宮崎県、長野県、相模原市の5つの自治体でした。

欠席の理由について静岡県の川勝知事は「7月下旬に安倍氏が銃撃された現場に赴き、県知事として哀悼の誠をささげてきた。すでに弔意を表しており、改めて参列はしない」としています。

長野県の阿部知事は「当日行われる御嶽山噴火の犠牲者追悼式に出席するため」としています。

宮崎県の河野知事は、台風14号の復旧対応にあたるため国葬への参加を見送ることを明らかにし、相模原市は「議会出席のため」としています。

東京23区の対応は

東京23区に対して当日弔意を示す予定があるか聞きました。

その結果、庁舎に半旗を掲げて「弔意を示す」と答えたのは、千代田区、墨田区、足立区、葛飾区の4つの区でした。

足立区は、区役所の本庁舎と区の施設に半旗を掲揚するとしていて、理由については「国が国葬を行うと決めた以上、行政機関として弔意を示す必要がある」としています。

一方、「弔意を示さない」と答えたのは11の区でした。

その理由について、杉並区は「各種世論調査をみても、国民の合意は得られていないと考える。法整備や国費投入の課題も指摘されている」とし、世田谷区は、「国民の賛否が分かれる中で、新たな分断を起こさないようにしたい」と説明しています。

また、残る8つの区については対応を決めかねるとして「検討中」と答えました。

理由については「国葬をめぐる国民の賛否が割れるなか、ほかの自治体の対応をギリギリまでみて決めたい」とか「国からの通知がない」などとしています。

23区のなかで、区民や職員に黙とうを求めるとしたところはありませんでした。

国葬について大きく割れる世論

今回の国葬については、世論が大きく割れています。

NHKが、今月9日から3日間行った世論調査で、政府が、今月27日に安倍元総理大臣の「国葬」を行うことへの評価を聞いたところ、▽「評価する」が32%、▽「評価しない」が57%でした。

さらに「国葬」についての政府の説明は十分だと思うか尋ねたところ▽「十分だ」が15%、▽「不十分だ」が72%でした。
東京や神奈川県の自治体の中には、議会で国葬に反対する意見書を可決したところもあります。

このうち、神奈川県の鎌倉市議会では、国葬の実施の撤回を求める意見書を賛成多数で可決しました。

意見書では、「国葬に明確な法的根拠がない以上、国葬を行うのであれば、国会で議論が尽くされるべき」としたうえで、「国民を二分するような国葬を行うべきではない」としています。

東京の国立市議会も、国葬の中止を求める意見書を賛成多数で可決しました。

意見書では、国会審議を経ずに決定されたことは国会軽視で容認できず弔意の強制につながることを強く危惧するとして、国葬の中止などを求めています。

識者「どのような考えで判断か説明を」

行政学が専門で地方自治に詳しい同志社大学政策学部の真山達志教授は、弔意表明の判断を示した自治体について「判断に対して住民からは賛成や反対の声が出てくるので、それに自治体がどう説明するのかが非常に注目される。弔意の表明や参列について、どのような考えのもとで判断したのか、事後でもよいので説明してもらいたい」と求めています。

また大半の自治体が国葬に参列することについては、「国との関係において出席はしておいたほうがいいという無難な判断をしたのではないか」とみています。

一方、複数の自治体が弔意を表明するかどうかを未定としていることについて、「半旗の掲揚もしないのかと批判を受けることもあるだろうし、国葬に反対する世論も尊重しなければならないことからすると、判断に困っているのだろう。自治体は、世論や住民が持っている違和感に敏感に反応するので、それが判断をちゅうちょさせているのではないか」とみていました。

一方、自治体に判断を委ねた国に対しては、「政府は事前に十分に説明するといいながら実はあまり説明できていないのではないか。国葬に至った経緯や法的な根拠、財源の問題など、重要な政策決定をした過程を明確にすると、自治体も判断しやすくなる。政府は事後的にでも国葬に至った経緯をしっかりと説明する必要がある」と話していました。

国内外から約4300人の参列者見込み 政府

来週27日に実施される安倍元総理大臣の「国葬」について、政府は、国内外から、合わせておよそ4300人の参列者を見込んでいることを明らかにしました。

これは、松野官房長官が、9月22日午後の記者会見で公表しました。

それによりますと、安倍元総理大臣の「国葬」への参列者は、国内から3600人程度、海外から700人程度の、合わせておよそ4300人になる見込みだとしています。

このうち、国内の参列者は、
▽衆参両院議長ら「三権の長」に加え、
▽現職の国会議員と、その経験者が700人以上、
▽都道府県知事が44人となっているほか、
▽経済界を含めた各界から1000人以上が参列する見通しです。

また、海外からは、218の代表団が訪れ、首脳級の要人は35人が参列するということで、このうち中国側からは、22日になって、国政の助言機関「全国政治協商会議」の万鋼副主席が参列する意向が伝えられたことを明らかにしました。

松野官房長官は「多くの参列の意向に心から感謝したい。弔意に応える厳粛、かつ心のこもった式典とすべく、準備に遺漏がないよう期していく」と述べました。