どうなる 決済アプリで賃金の“デジタル払い”制度最新案提示

決済アプリを使った賃金のいわゆるデジタル払いについて、厚生労働省は、労使の代表などで作る審議会に支払い先として認める業者の要件などを盛り込んだ制度の最新の案を示しました。
審議会ではおおむね議論は尽くしたとして、今後、国への答申に向けた詰めの作業を進めることになりました。

賃金は、労働基準法で現金での支払いが原則とされ、銀行口座への振り込みも認められていますが、キャッシュレス化が進む中、国はスマートフォンの決済アプリなどを使った支払いについて検討を進めています。

厚生労働省は9月13日、労使の代表などで作る審議会に制度の最新の案を示しました。

それによりますと、こうした支払いには労働者の同意が前提となり、対象となる決済アプリなどの業者は労働者を保護する要件を満たすかどうかをもとに国が指定するとしています。

具体的な要件としては、
▽1つのアカウントの残高の上限が100万円以下で、
▽業者が破綻した場合でも、4日から6日以内に保証機関を通じて全額が払い戻される仕組みを設けていることなどが挙げられています。

これに対し、企業側の委員からは「中小企業の送金の手数料の負担を少なくしてほしい」といった意見が、
労働側の委員からは「支払われた賃金の安全性が確実に担保されるよう国の体制作りを進めてほしい」という意見が出されました。

審議会ではおおむね議論は尽くしたとして、答申に向けた詰めの作業を進め、今年度中の制度化を目指すことにしています。

議論の背景と導入への課題

消費の利便性の向上や増加する外国人への対応などを理由に政府はキャッシュレス化を促進していて、決済アプリを使った賃金の支払いについても早期の制度化を図るという目標を掲げています。

厚生労働省では、2年前から労使で作る審議会での議論が始まりました。
検討されている方法は
現在、検討されているのは資金移動業者と呼ばれるスマートフォンの決済アプリなどのアカウントに送金する方法です。

「PayPay」「d払い」「au PAY」などが代表的で実際、どれが使えるのかは厚生労働省が指定するとしています。

メリットはどこに

厚生労働省が審議会に示した3年前の調査では、決済アプリなどを利用している4000人のうちおよそ4割が、賃金が決済アプリなどに支払われることになった場合「利用することを検討する」と回答していました。

労働者が賃金の受け取る方法の選択肢が増え、チャージの手間が省ける点や企業側にとってもこうした支払い方法を求める労働者を確保しやすくなることなどがメリットと考えられています。

安全性の担保や個人情報の取り扱いなどが課題

一方、課題もあります。

労働者側からは資金移動業者が破綻した際の安全性の担保や個人情報の取り扱いをめぐる懸念の声が上がっています。

企業側からも賃金を支払う際の手続きが煩雑になるのではないかといった指摘が出ています。