ゲーム条例は憲法に違反せず “合理性がある” 高松地裁

ゲームなどの依存症対策として利用時間の目安を定めた香川県の条例について、高校生だった男性らが権利を必要以上に制限され憲法違反だと訴えた裁判で、高松地方裁判所は条例の目的は合理性があり、憲法に違反しないと判断し、訴えを退けました。

おととし香川県が全国で初めて施行した「ネット・ゲーム依存症対策条例」は、18歳未満の子どものゲーム利用について、「平日は60分まで」などの目安を示し、保護者に対して利用時間のルールを定めるよう求めています。

この条例について当時、高校生だった男性らが、ゲームの利用時間は本来自分で決めるべきで、憲法で保障された自己決定権やプライバシー権を侵害していると訴えていました。

8月30日の判決で、高松地方裁判所の天野智子裁判長は「過度なゲームの利用は社会生活上の問題を引き起こす可能性が指摘されている。青少年は特に影響を受けやすく、予防すべき社会的要請が認められる」と述べ、条例の目的は合理性があると判断しました。

そのうえで「条例が何らかの権利を制限すると考える余地があるとしても、努力目標で、罰則もなく必要最小限度の制約だ」として憲法に違反しないと結論づけ、訴えを退けました。

“ゲーム条例” 制定の経緯は

香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」は、賛否や制定過程をめぐってさまざまな議論を呼びました。

おととし1月、県議会の委員会で初めて素案が示されました。

18歳未満の子どもを対象に、ゲームなどの利用の上限を一日当たり平日は60分、休日は90分を目安とすることなどが盛り込まれ、家庭でルールを定めるよう保護者に求める内容でした。

これについて、県民からは肯定的な意見が聞かれる一方、反対の署名が県議会に提出されるなど、賛否が分かれる形となりました。

3月、条例案は県議会に提案され、3つの会派の議員が反対、棄権する中、賛成多数で可決。ゲームやインターネットの依存症対策に特化した全国初の条例が成立しました。

この制定過程をめぐっても議論を呼びました。

県議会は、採決に先立って、県民を対象にパブリックコメントを募り、2686件の意見が寄せられました。

しかし、採決前に意見の原文は公開されず、採決後になって全体のおよそ9割を占めた賛成意見の中に、文言の内容や送信日が全く同じものが複数あったことが判明し、条例の施行後、制定過程の検証などを求める動きが相次ぎました。

裁判の争点と原告側 県側双方の主張は

今回の裁判の主な争点は、条例の内容が憲法に違反していないか、条例によって原告に損害が生じていないかです。

原告側は、条例が示した「一日60分まで」などとしたゲームの利用時間の目安について、科学的根拠が不明確だと主張しました。

そして、ゲームをどのくらいするかは本来、自由に決めるべきもので、自己決定権やプライバシー権などを保障した憲法に違反するとしています。

そのうえで、条例によって基本的人権が侵害され、損害が発生したと訴えました。

これに対し、県側は、依存症の治療や予防という条例の目的には、相当の医学的ないし科学的根拠があると反論しました。

また、そもそも条例は家庭内の「目安」を定めたもので努力目標に過ぎず、原告に損害は発生していないと主張しました。