TICAD閉幕 「チュニス宣言」採択 国際ルール順守の開発金融を

チュニジアで開かれたTICAD=アフリカ開発会議は、中国によるアフリカへの巨額融資を念頭に国際ルールを順守する健全な開発金融の重要性などを盛り込んだ「チュニス宣言」を採択して閉幕しました。

北アフリカのチュニジアで開かれたTICADは、日本時間の28日夜、2日間の議論の成果を盛り込んだ「チュニス宣言」を採択して閉幕しました。

「チュニス宣言」ではアフリカの持続可能な経済成長には民間の投資が不可欠だとして、日本とアフリカの間の技術移転や人材育成を強化するとともに若者や女性によるスタートアップ企業を支援するとしています。

また中国によるアフリカへの巨額融資を念頭に、国際ルールを順守する健全な開発金融が重要だとしてすべての債権者に対して公正で開かれた貸し付けを行うことを求めています。

そして新型コロナの感染拡大を踏まえすべての人に質のよい保健・医療サービスを提供する「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の達成に向けて取り組み、危機的な状況の際にはワクチンや医薬品にアクセスできるようにするとしています。

さらに気候変動や自然災害、廃棄物の管理や砂漠化などといったアフリカの環境問題に取り組むことが急務だとして、国際社会に対して支援の拡大を呼びかけています。

一方、ウクライナ情勢をめぐっては深刻な懸念を表明するとしたうえで、対話と国際法の原則を尊重して平和と安定を保全することが重要だと強調し、食料やエネルギー価格の上昇を克服するためアフリカ諸国を支援するよう求めています。

このほか核兵器の使用がもたらす非人道的な結末を認識して「核兵器のない世界」の実現に向けた関与を再確認し、NPT=核拡散防止条約の維持強化に取り組むことや国連安全保障理事会の改革を加速させるために協力していくことも盛り込んでいます。

岸田総理大臣はオンラインで記者会見に臨み「日本はアフリカと『共に成長するパートナー』でありたいと考えており、課題の克服にともに取り組むことにより成長に力強く貢献し、それを通じて日本も学び成長する」と述べました。

TICAD 共同議長 “多くの課題を議論 大きな成果”

TICADの共同議長を務める開催地チュニジアのサイード大統領は共同記者会見で「今回多くの課題について議論できたことは大きな成果だ。一方でアフリカはいまも暴力や貧困、テロなどに悩まされている」と述べ、課題の解決に向けてさらなる協力が必要だという認識を示しました。

また「今後も世界のパートナーたちと協力して、アフリカが誇る豊富な人材やさまざまな天然資源を活用していきたい」と述べ、地域全体の経済発展のため引き続き日本などとの関係強化を進めていきたい考えを示しました。

AU=アフリカ連合 議長 “テロ対策に財政的な支援を”

AU=アフリカ連合の議長を務めるセネガルのサル大統領は共同記者会見で「アフリカは新型コロナウイルスとウクライナ情勢という2つの危機による経済的な打撃を受けている」と述べた上で、日本と協力を深めながら自由貿易の推進に欠かせない通信環境の整備などを進めたい考えを示しました。

また、サル大統領は協力が急がれる分野として、西アフリカの国々で深刻化するテロへの対策をあげ「平和と長期的な安定が発展に欠かせない。テロ対策のための財政的な支援を求めたい」と訴えました。

岸田首相 「アフリカの角」民主主義定着へ 担当特使任命の考え

岸田総理大臣はTICAD=アフリカ開発会議の会合にビデオメッセージを寄せ、戦略的に重要とされる「アフリカの角」と呼ばれる地域について民主主義の定着に向けた取り組みを後押しするため担当の特使を任命する考えを示しました。

北アフリカのチュニジアで開かれたTICAD=アフリカ開発会議は日本時間の28日夜、「平和と安定」をテーマに全体会合が開かれ、岸田総理大臣がビデオメッセージを寄せました。

この中で岸田総理大臣は「日本として各国とともに平和で安定したアフリカの実現に向けて主体的に取り組む決意だ。平和で安定した社会や持続可能な成長は法の支配があってはじめて成し遂げることが可能となる」と指摘しました。

そのうえで戦略的に重要とされる「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部の半島周辺の地域について、司法や行政分野の制度構築などを通じて民主主義の定着に向けた取り組みを後押しするため、担当の特使を任命する考えを示しました。

一方、岸田総理大臣はこれに先立って開かれた「社会」をテーマにした全体会合で、新型コロナの感染拡大を受けてアフリカでの感染症対策を強化するため今後3年間で3万5000人の医療人材を育成する考えを示しました。