核兵器禁止条約 初の締約国会議 日本はオブザーバー出席せず

6月21日からオーストリアで開かれる核兵器禁止条約の初めての締約国会議について、政府は核兵器を保有する国が参加しておらず、現実的な取り組みを進めるのは難しいとして、オブザーバー出席はしない方針を明らかにしました。

核兵器の開発や保有、使用などを禁止する核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、6月21日からオーストリアで開かれる予定で、日本は条約に批准していませんが、唯一の戦争被爆国としてオブザーバー出席を求める声が被爆者などから出ています。

小野外務報道官は15日の記者会見で「現実を変えるには核兵器国の協力が必要だが、核兵器禁止条約には1か国も参加していない。わが国は現実的な取り組みを進めていく」と述べました。

そのうえで「こうした考えから、締約国会議に日本政府としてオブザーバー参加はせず、効果的な核軍縮措置を積み重ね、核兵器のない世界に一歩ずつ近づいていきたい」と述べました。

そしてまずは、核兵器国も加わりことし8月に予定されるNPT=核拡散防止条約の再検討会議で意義ある成果が得られるよう全力を尽くす考えを示しました。

広島の被爆者団体 市長に要望

核兵器禁止条約の締約国会議が来週、オーストリアで開かれるのを前に、広島県内の被爆者団体が、現地を訪れる広島市の松井市長に、被爆地を代表して積極的に会議に関わるよう求める要望書を手渡しました。

6月21日からオーストリアの首都ウィーンで、核兵器禁止条約の初めての締約国会議が開かれますが、広島市の松井市長は現地を訪れることになっています。

出発を前に15日、広島県内の6つの被爆者団体が広島市役所で松井市長に要望書を手渡しました。

要望書の中では、被爆地を代表して、会議へのオブザーバー参加に向けて岸田総理大臣に働きかけるほか、広島市として世界の被爆者の支援への協力を表明するよう要請しました。

また、ことし8月に予定されている、NPT=核拡散防止条約の再検討会議に向けては、世界の核軍縮を進めるための橋渡し役を日本が果たすように訴えてほしいと求めました。

要望書を受け取った松井市長は「ウィーンでは皆さんの思いについても言及し、各国の立場や活動についても学んできたい」と話していました。

広島県被団協の箕牧智之理事長は「松井市長には、核兵器をなくすための具体的な策を持って会議に臨んでほしい」と話していました。

もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長は「本当に核兵器をなくすためには条約への批准が大切。被爆国として核兵器をなくそうという思いを明確に示してほしい」と話していました。

会議 催しに参加 胎内被爆者など会見

一方、会議に合わせて現地で行われる催しにオンラインで参加する「原爆小頭症」の人や支援者で作る団体などが広島市で会見を開き、核兵器廃絶への思いを語りました。

15日、広島市役所で開かれた会見には、母親の胎内で被爆したことで、脳の発育が妨げられ、知能や体に障害がある「原爆小頭症」の人や、支援者などで作る「きのこ会」のメンバーなどが出席しました。

オーストリアの首都ウィーンで開かれる核兵器禁止条約の締約国会議に合わせ、6月19日にNGOが現地で開く催しでは、広島や長崎ともオンラインでつなぐことになっていて、広島からは「きのこ会」の人たちが、核の被害が世代を超えて続くことなどを世界中に訴えることにしています。

当日発言する、原爆小頭症の川下ヒロエさん(76)は「戦争というものが、この世から消えてほしい、戦争に使うような核兵器は絶対に禁止にしてほしい」と話していました。
また、きのこ会の長岡義夫会長は「ロシアが核兵器の使用をほのめかす中、核兵器は人類史上類を見ない悪魔の兵器であるということを伝え、核兵器廃絶への思いを共有したいと思います」と話していました。

イベントの様子は、今月19日の午後5時から、YouTubeでオンライン配信されることになっています。

被爆者の半生を歌った合唱曲DVD 核禁止条約締約国会議で配布へ

車いすで世界を回って核兵器廃絶を訴えた長崎の被爆者の半生を歌った合唱曲を収めたDVDが完成しました。制作した合唱団では今月、オーストリアのウィーンで開かれる核兵器禁止条約の締約国会議の関係者に配布すると発表しました。

15日は、長崎市民を中心とする合唱団のメンバーが会見を開き、合唱曲「平和の旅へ」を収めたDVDが完成したことを発表しました。

「平和の旅へ」は、長崎に投下された原爆で下半身不随になりながら車いすで世界を回って核兵器廃絶を訴え、平成5年に亡くなった渡辺千恵子さんの半生を歌ったもので、合唱団が歌いつないできました。

DVDには、合唱の映像に合わせて原爆投下後の長崎や渡辺さんの写真などが収められています。

合唱団では、国外の人にも被爆の実相を知ってもらおうと、今月開かれる核兵器禁止条約の締約国会議に合わせてウィーンを訪れる人たちに託して現地でDVDを配布してもらうことも発表しました。

合唱団の佐藤由美子団長は「まだまだ被爆の実相が世界に伝わっていないので、核による威嚇などが行われていると思う。被爆者が高齢化する中、私たちが世界に発信していかないといけない」と話していました。

また、合唱団では、DVDを長崎原爆資料館や県内の学校にも寄贈することにしています。