赤字路線“廃線”議論で浮上
「BRT」って何?

「BRT」をご存じでしょうか。
今、地方の鉄道が岐路に立たされる中、鉄道に代わる交通機関として注目されています。
電車やバスと何が違うの? BRTのメリットや課題は?
詳しく解説します!
(政治部 山田康博)

Q)一体どんな乗り物なの?

A)「BRT」は、『Bus Rapid Transit』の略称です。
「バス高速輸送システム」を意味します。
専用道路を設けるなどして、スムーズな輸送を可能にする交通システムを指します。

国土交通省によると、「BRT」は広い概念で、たとえば、専用道路を設けなくても、バスの車体の2両分を「連節バス」とすることで、大量輸送を可能にするケースも「BRT」と呼んでいます。
つまり“効率の良いバス輸送システム”を幅広く指す概念なんです。
ただ、地方鉄道の代替手段として議論されるときは、専用道路にバスを走らせるシステムのことを指すことが多いようです。

Q)なぜ地方鉄道の代替手段として「BRT」が効果的なの?

A)バス輸送の弱点は、渋滞などで運行が安定せず、たとえば学校や会社に遅れそうになったりという経験がある人も多いと思います。
「BRT」で専用道路を通れば渋滞に巻き込まれず定時運行が可能になるのです。
また、バスなので、停留所を比較的簡単に増やすことができます。
鉄道の駅の設置の大変さに比べると、まちづくりに柔軟に対応できるという指摘もあります。
たとえば宮城県では、気仙沼駅から前谷地駅までの72.8キロを結ぶ「BRT」を設置しました。
東日本大震災の際、津波で壊れた線路の跡地をバス専用道路として整備し、鉄道では止まらなかった病院や道の駅などにも停車できるようにしました。

国土交通省によると、廃線後の線路を活用した「BRT」の導入は全国で5か所。
5月には、JR九州が、5年前の九州北部豪雨で被災したJR日田彦山線でBRTを導入し、来年夏の開業を目指すと発表しました。

Q)今後、鉄道から「BRT」に切り替える地域も増えるの?

A)そう簡単ではなさそうです。
鉄道は、長い間、その地域の通学などの足になっているところが多く、廃線には自治体の強い反発もあります。
鉄道に対する地元の愛着や、景観へのこだわりといった文化的な側面も大きいんです。

また、「BRT」に切り替えても、人口減少が進む中で、利用者の減少という問題とは向き合うことになります。
政府関係者は、「BRT」は廃線後の有力な選択肢になりえるとする一方、導入には自治体や沿線住民の意見も聞きながら、その地域の実情に合わせた丁寧な調整が必要になるとしています。
国は、今後の方向性を夏にも示したいとしています。
その後、全国各地の赤字路線を抱える鉄道事業者や自治体の間で調整が本格化する見通しです。
「BRT」が、“ポスト地方鉄道”の選択肢として広がるのか。
議論のキーワードのひとつとなりそうです。