拉致被害者家族「全員帰国へ 政府の主体的な取り組みを」

北朝鮮による拉致被害者の家族が東京で大規模な集会を開き、岸田総理大臣も出席する中、すべての被害者の1日も早い帰国の実現に向けた政府の主体的な取り組みを求めました。

東京・千代田区で開かれた集会には拉致被害者の家族や政府関係者などおよそ800人が出席しました。

はじめに家族会の代表で横田めぐみさんの弟の拓也さんがあいさつし「北朝鮮国内では新型コロナの感染が拡大しているが、すべての被害者の即時一括帰国を約束すれば、国際社会による制裁を逸脱しない範囲で日本が人道支援や医療支援を行うことに反対はしない。私たちは家族を取り戻したいだけだ」と述べ、キム・ジョンウン総書記の決断を求めました。

そのうえで「親世代の被害者家族には時間がない。拉致問題の解決はアメリカでも国際社会でもなく日本の責任だ」と話し、すべての被害者の1日も早い帰国の実現に向けた政府の主体的な取り組みを求めました。

このあと、横田めぐみさんの母親の早紀江さん(86)が、日朝首脳会談を早期に実現するよう求めたほか、田口八重子さんの長男の飯塚耕一郎さんも「ありとあらゆる手段を使って日朝首脳会談の実現に向けて動くべきで、総理大臣が直接ことばを発するなど、対外的なアクションを示すことが必要だ」などと訴えました。

集会では最後に▼政府に対し、すべての拉致被害者の即時一括帰国を早急に実現することを求めるとともに、▼北朝鮮に対してもすべての被害者の帰国をすみやかに決断するよう求める決議が採択されました。

横田早紀江さん「被害者が日本の土を踏めるように」

集会のあと、取材に応じた横田早紀江さんは、夫の滋さんが亡くなってから来月5日で2年となることについて「あまりに長い時間がかかっているので、何も動かないまま1年や2年という時間がたつことを当たり前に感じてしまいます」と話したうえで、「拉致問題が早く解決して欲しい、被害者が日本の土を踏めるようにしてほしいということだけを願っています」と強調していました。

また、横田拓也さんは「拉致問題を取り巻く状況が2年前と何も変わっておらず、天国の父も残念だろうし、母や私たち家族も『なぜ救出できないんだろう』という疑問と静かな怒りの気持ちを持っています。政府は、父や家族会の飯塚前代表が被害者との再会を果たせずに亡くなったことを真剣に受け止め、主体的、かつ具体的に行動してほしい」と話していました。

岸田首相「政府を挙げて全力で取り組んでいく」

北朝鮮による拉致被害者の家族らが開いた集会で、岸田総理大臣は「いまだに多くの被害者が北朝鮮に取り残されているのは本当に申し訳ない」と述べたうえで、みずからが先頭に立ち、拉致問題の解決に向けて全力で取り組む決意を強調しました。

この中で、岸田総理大臣は「2002年に5人の拉致被害者の方々が帰国されて以来、新たな被害者の帰国を果たすことなく20年の歳月が経過してしまう。いまだに多くの被害者が北朝鮮に取り残されているのは本当に申し訳ない」と述べました。

そのうえで、拉致問題は岸田内閣の最重要課題だとして、アメリカのバイデン大統領との先の日米首脳会談で、即時解決に向けて全面的な理解と協力を求め、支持を得たと説明しました。

さらに、国際社会への働きかけと同時に日本が主体的に動くことが重要だとして、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記と条件をつけずに直接向き合う決意を重ねて示しました。

そして「あらゆるチャンスを逃すことなく全力で行動する。すべての拉致被害者の1日も早い帰国実現に向け、総理大臣としてみずからが先頭に立ち、政府を挙げて全力で取り組んでいく」と強調しました。