ウクライナから日本へ避難した人1040人に 就労など支援が課題
ロシアによる軍事侵攻から24日で3か月になります。ウクライナから日本に避難した人たちは1040人に上っています。避難生活が長期化し、ことばや就労などの支援が課題となる中、ニーズに応じた対応が求められています。
政府はウクライナからの避難民を積極的に受け入れる方針で、ウクライナから日本に避難した人たちは、岸田総理大臣が受け入れを表明したことし3月2日以降、22日までに1040人に上っています。
月別にみると、3月が351人、4月が471人、5月が218人です。
このうち少なくとも13人はすでに日本から出国しています。
政府は避難してきた人たちに90日間の短期滞在を認める在留資格を付与していて、本人が希望すれば就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更することができます。
22日の時点で在留資格を変更した人は、722人に上ります。
また、22日までに3人が難民申請を行ったということです。
政府はウクライナから避難した人たちのうち、日本に親族などの受け入れ先がない人については、一時的な滞在先としてホテルを確保し、受け入れ先となる自治体や企業などを探していて、これまでに6世帯11人が東京と京都の自治体などで受け入れが決まったということです。
一方、避難した人たちの中には、タイミングをみて帰国を望んでいる人たちもいるということです。
避難生活が長期化し、ことばや就労、教育などの支援が課題となる中、ニーズに応じた対応が求められています。
複雑な思い抱える避難者たち
ウクライナから避難した人たちの中には、日本にとどまり続けることに、複雑な思いを抱えている人たちもいます。
ウクライナ東部から避難したセルヒィ・ヴィルリッチさん(66)と妻のリボフ・ヴィルリッチさん(59)は、ことし3月10日に埼玉県に住む娘の根本ユリアさん夫妻を頼って、孫のブラッド・ブラウンさん(12)とともに入国しました。
3人は避難生活の長期化を見据え、先月、在留資格を90日間の「短期滞在」から就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」に変更しました。
夫妻は、地元の公民館で開かれる日本語教室に通っているほか、娘のユリアさんと一緒に買い物に出かけるなどして過ごしていて、妻のリボフさんは近くの病院で持病の治療も受けているということです。
ブラウンさんはオンラインでウクライナの学校の授業を受けていて、近所の小学校で日本の子どもたちと交流する機会もあるということです。
セルヒィさんは、持病がある妻を日本でサポートしたいという気持ちがある一方、もう1人の娘の家族が生活し、仕事も残してきたウクライナに帰国したいという思いも強いということです。
セルヒィさんは「日本にだいぶ慣れてきましたがウクライナにも家族が残っているので、サポートするために帰国したい気持ちもある。どうすればよいか迷っていて、苦しいです」と胸の内を明かしました。
妻のリボフさんは「ウクライナでは薬が手に入らないので戻るのはまだ難しいです。ウクライナに残っている娘が心配なので戦争はできるだけ早く終わってほしいです」と話していました。
また、孫のブラウンさんは「ウクライナの友達とオンラインではなく、一緒に勉強したいです。日本での生活は楽しくなってきましたが、家族に会いたいので一回、戻りたいです。ウクライナのみんなが無事でいることを祈ってます」と話していました。
ロシア軍の砲撃で大けが ウクライナ人男性 日本に避難し治療
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍による砲撃で大けがをしたウクライナ人の男性が今月21日、来日し、千葉市内の病院で治療を受けていることが分かりました。軍事侵攻以降、ロシア軍の攻撃でけがをしたウクライナの人が、支援者や病院の協力で日本に避難してきたのは初めてとみられます。
ウクライナから日本に避難し、治療を受けているのは、アントン・コルニシュクさん(37)です。
コルニシュクさんによりますと、ことし3月25日、ウクライナの首都キーウ近郊のイルピンで住民の避難を手助けしていたところ、ロシア軍による迫撃砲で大けがをしたということです。
ウクライナ西部のリビウにある国立大学で、日本語を学んでいて、指導教官が日本人の友人のつてをたどって支援を求めたところ、千葉大学医学部附属病院が受け入れを決めました。
コルニシュクさんは今月21日、ポーランドの首都ワルシャワ経由で成田空港に到着したあと、直接、病院に搬送され治療を受けています。
病院によりますと、コルニシュクさんは、右足やろっ骨が折れているほか、左足のアキレスけんの一部が切れていて、これから2か月入院して、治療やリハビリを受ける必要があるということです。
コルニシュクさんは、NHKの取材に対して「医師から『ゆっくり治していく』という話を聞いた。体調はよくなっていて、必ず体を治して、もし戦争が続いていれば戦う。戦争が終わっていれば、日本とウクライナの交流を担っていきたい」と話していました。
コルニシュクさんが治療目的で避難してきたことについて、出入国在留管理庁は「これまでに同様のケースがあったとは把握していない」としていて、ロシア軍の攻撃でけがをしたウクライナの人が、支援者や病院の協力で日本に避難してきたのは初めてとみられます。
避難者に困りごとなど聞き取り
日本へ避難してきた人の国内での生活の長期化を見据え、東京・港区は、生活に必要なことや困りごとを把握しようと聞き取りを進めています。
東京・港区では、ウクライナから避難してきた人たちの日本での生活が長期化することを見据え、生活に必要なことや困りごとを把握しようと、サポートしてくれる人の有無や生活費などに関する19項目について先週から聞き取りを始めました。
24日は区の職員2人が50代の女性が避難している住宅を訪問し聞き取りを行い、区の担当者によりますと、女性は「病気になった際に、適切な医療が受けられるか心配だ」と話していたということです。
これに対し担当者は在留資格に関する手続きなどを行うことで健康保険を使って医療を受けられることを説明したということです。
今後、港区では聞き取りを継続し、避難してきた人それぞれのニーズにあわせた支援を強化していきたいとしています。
港区ウクライナ避難民支援担当の太田貴二課長は「困りごとを把握することが支援につながる。避難してきた人の生活をどのように支えていくか、丁寧な聞き取りを行いながら決めていきたい」と話していました。