JR西日本 地方路線30線区すべて赤字 今後の在り方議論へ

JR西日本は、人口減少やコロナ禍で利用者が特に少なくなっている地方路線について、線区ごとの収支の状況を初めて公表しました。30の線区すべてで赤字となっていて、会社は、バス路線への転換なども含め沿線自治体などと今後の在り方の議論を進めたいとしています。

JR西日本は11日、人口減少に加え、コロナ禍で利用者が特に少なくなっている地方路線の30の線区について、個別の収支を初めて公表しました。

1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人に満たない、近畿や中国、それに北陸地方の30の線区が対象で、2020年度までの過去3年間の平均の収支は、すべての線区で赤字となっています。

このうち、赤字額が最も大きいのは
▼山陰線の出雲市から益田の線区で35億5000万円、
次いで、
▼紀勢線の新宮から白浜の29億3000万円でした。

JR西日本は、新型コロナの影響による鉄道の利用客の落ち込みで、2020年度に2332億円の最終赤字だったのに続き、2021年度も最大で1165億円の最終赤字になる見通しで、経営の立て直しが急務となっています。

会社は、具体的な収支を公表することで、沿線自治体などと課題を共有し、地域の特性も踏まえながらバス路線への転換なども含めて今後の在り方についての議論を加速させたいとしています。

会見で、JR西日本総合企画本部地域共生部の飯田稔督次長は「経営が厳しい状況で、地方路線について自治体と議論することは待ったなしの状況だ」と述べ、議論を急ぎたい考えを強調しました。

JR西日本社長 維持難しい地方路線「自治体や国と考える必要」

JR西日本の長谷川一明 社長は、厳しい経営状況が続く中、維持が難しくなっている地方路線について「自治体や国とともに三位一体で考えていく必要がある」と述べ、JRだけでこれまでどおりの運行を続けるのが難しいとの考えを改めて強調しました。

長谷川社長は、13日の会見で「これまで会社の自助努力で地方の路線を維持してきたが、厳しい経営状況で非常に難しくなっている。今後は、自治体、国とともに三位一体で考えていく必要がある」と述べ、JR西日本だけでこれまでどおりの運行を続けるのは困難だとの認識を改めて強調しました。

そのうえで、バス路線への転換なども含め、沿線のニーズを踏まえた地域交通の在り方を模索したい考えを重ねて示しました。

一方、沿線自治体から路線の廃止につながりかねないと懸念の声も出ていることについて、長谷川社長は「収支の公表は議論のスタートラインであり、地域の輸送をどのようにしていくのか、議論をしていきたい」と述べ、結論ありきではなく、ゼロベースで議論を進めたい考えを強調しました。

30線区の2020年度まで過去3年間の平均収支は

JR西日本が線区ごとの収支の状況を公表したのは、1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人に満たない、近畿地方のほか、中国地方や北陸地方にある、合わせて30の線区です。

2020年度までの、過去3年間の平均の収支はいずれも赤字となっています。
線区ごとの状況です。

▽小浜線の敦賀から東舞鶴は、16億9000万円の赤字

▽九頭竜線の越前花堂から九頭竜湖は、8億1000万円の赤字

▽大糸線の南小谷から糸魚川は、6億1000万円の赤字

▽山陰線の城崎温泉から浜坂は、11億7000万円の赤字

▽山陰線の浜坂から鳥取は、8億1000万円の赤字

▽山陰線の出雲市から益田は、35億5000万円の赤字

▽山陰線の益田から長門市は、12億2000万円の赤字

▽山陰線の長門市から小串と仙崎は、9億6000万円の赤字

▽関西線の亀山から加茂は、15億7000万円の赤字

▽紀勢線の新宮から白浜は、29億3000万円の赤字

▽加古川線の西脇市から谷川は、2億6000万円の赤字

▽姫新線の播磨新宮から上月は、6億2000万円の赤字

▽姫新線の上月から津山は、4億3000万円の赤字

▽姫新線の津山から中国勝山は、4億2000万円の赤字

▽姫新線の中国勝山から新見は、3億5000万円の赤字

▽播但線の和田山から寺前は、6億7000万円の赤字

▽芸備線の備中神代から東城は、1億8000万円の赤字

▽芸備線の東城から備後落合は、2億2000万円の赤字

▽芸備線の備後落合から備後庄原は、2億8000万円の赤字

▽芸備線の備後庄原から三次は、2億8000万円の赤字

▽芸備線の三次から下深川は、13億円の赤字

▽福塩線の府中から塩町は、6億7000万円の赤字

▽因美線の東津山から智頭は、3億9000万円の赤字

▽木次線の宍道から出雲横田は、6億9000万円の赤字

▽木次線の出雲横田から備後落合は、2億6000万円の赤字

▽岩徳線の岩国から櫛ヶ浜は、5億6000万円の赤字

▽山口線の宮野から津和野は、9億3000万円の赤字

▽山口線の津和野から益田は、6億円の赤字

▽小野田線の小野田から居能は、1億9000万円の赤字

▽美祢線の厚狭から長門市は、4億7000万円の赤字