ロシアへの追加制裁発表 石炭 機械類 ウォッカの輸入禁止

岸田総理大臣は8日夜、記者会見し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する追加の制裁措置を発表しました。ロシアからの石炭の輸入やロシアへの新規の投資を禁止するなどとしています。

この中で岸田総理大臣は「ロシアによる残虐で非人道的な行為がキーウ近郊のブチャのみならず、ウクライナ各地で次々と明らかになっている。ロシアはこれまでも民間人の殺害や原子力発電所に対する攻撃など重大な国際人道法違反を繰り返してきた。断じて許されない戦争犯罪だ」と述べました。

そのうえで「ロシアによる非道な行為の責任を厳しく問うていかなければならない。わが国としてICC=国際刑事裁判所による捜査や国連による独立した調査を支持する」と述べ、ICCへの分担金の支払いを前倒しで行うなどして捜査を後押しする考えを示しました。

追加制裁

そして岸田総理大臣はG7=主要7か国が発表した首脳声明を踏まえ、日本として5つの柱からなる追加制裁を科す方針を表明しました。

具体的には
▽ロシアからの石炭の輸入を禁止するほか
▽機械類や一部の木材、ウォッカなどの輸入禁止措置を導入することや

▽ロシアへの新規投資の禁止
さらに
▽ロシア最大の金融機関「ズベルバンク」や国内4位で民間最大の金融機関である「アルファバンク」の資産凍結
それに
▽プーチン大統領らに行っている資産凍結の対象にロシア軍関係者や議員など400人近くと、国有企業を含むおよそ20の軍事関連団体を新たに加える方針を明らかにしました。

石炭の輸入禁止は日本へのエネルギー供給に関わる初めてとなる措置で、岸田総理大臣は早急に代替策を確保し段階的に輸入を削減することでエネルギー分野でのロシアへの依存を低減させるとともに、夏や冬の電力需給ひっ迫を回避するため原子力や再生可能エネルギーなどを最大限活用すると説明しました。

そして石炭の輸入をいつまでに禁止するか問われたのに対し「具体的にこれだけの期間と言うことは控える。ぜひそれぞれの分野や業界で適切な対応をし、最終的には禁輸に持っていきたい」と述べました。

一方、ウクライナの周辺国への支援をめぐっては隣国・モルドバに今週から調査団を派遣していることに触れ、現地のニーズも踏まえながら速やかに保健医療分野での人的貢献の具体策を検討すると強調しました。

またウクライナからの避難民を受け入れるため政府がポーランドとの直行便の座席を借り上げた第一便が8日、日本に向けて出発すると明らかにし「ウクライナに在留する日本人についても自力で渡航手段を確保することが困難な方には、この便を利用できるようにする」と述べました。

このほかウクライナ情勢に伴う物価高について「国民の生活を守るために国際、国内双方で最大限の対策を迅速に講じていく。非道な侵略を終わらせ平和秩序を守るための正念場だ」と述べ、国民に対し理解と協力を呼びかけました。

そして「G7をはじめとした関係国と連携してロシアによる暴挙を決して許さないことと、日本がウクライナとともにあることを断固たる行動とウクライナの方々に寄り添った支援で示していく」と強調しました。

ロシア大使館の外交官ら8人追放措置について

このほか岸田総理大臣は日本に駐在するロシア大使館の外交官ら8人を追放する措置について「わが国として総合的に判断し、国外退去を求めることを通告したものだ。現下のウクライナ情勢も踏まえた措置だ」と説明しました。そのうえで「ロシア側が対抗措置を取る旨、述べたことについては承知している。ただ具体的な措置が明らかになっていない段階なので、それについて何か申し上げることは控えたい。引き続きロシアでの邦人や日本企業の活動の保護に政府として万全を期していきたい」と述べました。

「エネルギー全体のロシアへの依存度の低減に踏み込む」

ロシアからの石油や天然ガスの輸入の削減や禁止を検討するのか質問されたのに対し「G7=主要7か国の首脳声明ではロシア産石油への依存度低減に向けた取り組みなどを加速すると明記されており、この基本的な方針をしっかりと追求していきたい。日本としても石炭の禁輸や石油を含むエネルギー全体のロシアへの依存度の低減に踏み込むこととする」と述べました。
そのうえで「今後の追加措置について現時点で予断を持って申し上げることは控えるが、G7の方針を踏まえつつ引き続き国際社会と連携しながら適切に対応していきたい」と述べました。

日本への報復措置「日本側に責任転嫁 極めて不当」

ロシア外務省のザハロワ報道官が日本への報復措置をとると表明していることについて、ロシア側の発言一つ一つにコメントするのは適切ではないとしたうえで「今回の事態はそもそもすべてロシアによるウクライナ侵略に起因して発生しているものだ」と述べました。そのうえで「それにもかかわらず日本側に責任を転嫁しようとするロシア側の対応は極めて不当であり、われわれとしては受け入れることができない。わが国としては引き続きG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながらきぜんとした対応をとり、しっかりとした人道支援を進めていきたい」と述べました。

「防衛力 抜本的に強化していくことが重要」

また岸田総理大臣は「今回のロシアによるウクライナ侵略によって起こっている事態は国際秩序の根幹を揺るがす行為だ。このような情勢下で、わが国周辺でもロシア軍の活動が活発化していることは懸念すべきことで、このような活動を引き続き重大な関心を持って注視していかなければならない。わが国周辺におけるロシア軍の活動や動向について引き続き情報収集や警戒監視に万全を期していきたい」と述べました。
そのうえで「わが国の防衛政策や防衛力の整備は特定の国や地域を念頭に置いたものではないが、今後新たな国家安全保障戦略などを策定していく中であらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化していくことが重要だ」と述べました。

米 G20からロシアを排除「メンバーと議論」

アメリカがG20=主要20か国からロシアを排除すべきだという立場を示していることに関連し「国際社会はウクライナへの侵略によってロシアとの関係をこれまでどおりとすることはもはやできないと考えている。G20へのロシアの参加については、議長国のインドネシアをはじめG20のメンバーと議論していかなければならない。今後の情勢をよく踏まえたうえで適切に対応する」と述べました。

難民への対応「重要な課題として考えていく」

国際条約に基づく「難民」への対応をめぐり「難民に対する対応や基本的な考え方については政府としても国会での議論なども踏まえながら対応していかなければならない。今この時点で何か変更することは考えてはいないが、引き続き重要な課題として今後どうあるべきか国際情勢もしっかり踏まえながら考えていく」と述べました。

新型コロナ水際対策「これからの動向もしっかり踏まえて判断」

新型コロナの水際対策に関連し外国人観光客の入国を認める時期について「観光客は今後も感染状況や各国の動きを見ながら適切に判断していかなければいけない。具体的にいつからかという予定は確定していないが、水際対策全体の流れの中でこれからの動向もしっかり踏まえて判断したい」と述べました。