成人年齢18歳に引き下げ ローン契約などのトラブル防ぐ

4月1日から、成人年齢が18歳に引き下げられ、親などの同意なしにローンの契約を行うことなどが18歳から可能となりました。
政府は、消費者被害のターゲットにならないよう注意を呼びかけるとともに、教育や啓発に取り組むことにしています。
また金融庁は、新たに成人となる20歳未満の若者が重い借金を背負ったりトラブルに巻き込まれたりするのを防ぐため、貸金業者の監督を担う全国の自治体との連携を強化しています。

改正民法が4月1日施行され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたほか、女性が結婚できる年齢が16歳から男性と同じ18歳に引き上げられました。

成人年齢の引き下げは明治9年に定められて以来初めてで、飲酒や喫煙、競馬などの公営のギャンブルは、これまでどおり20歳未満は禁止とする一方、親などの同意なしにローンやクレジットカードの契約を行うことなどは18歳から可能となります。

このため政府は、消費者被害のターゲットにならないよう、買い物をする際の契約で困ったときなどは、消費者ホットライン「188」に相談してもらうなど、注意を呼びかけるとともに、教育や啓発に取り組むことにしています。

また金融庁は、新たに成人となる20歳未満の若者がローンの契約などでトラブルに巻き込まれるのを防ぐため、3月、重点的に対策に取り組む専門の役職を設けました。

貸金業者の監督を担う全国の自治体との連携を強化し、若者への貸し付けのデータや苦情の内容を分析するほか、トラブルが起きたら速やかに情報を共有して対応にあたることにしています。

また、金融庁は日本貸金業協会とともに、業者に対して20歳未満に貸し付けを行う際は金額にかかわらず収入の状況を示す書類を確認するよう求めていて、若者が金融関連のトラブルで被害にあわないよう警戒を強めています。

改正少年法施行 18歳と19歳を「特定少年」と位置づけ

改正少年法も施行され、新たに成人となった18歳と19歳を引き続き保護の対象とする一方で「特定少年」と位置づけ、家庭裁判所から検察に送り返す「逆送」という手続きの対象となる事件が拡大されるなど、扱いが厳しくなり、「特定少年」が起訴された場合は実名などを報じることも可能になります。

法務省は、犯罪や非行の反省を促しながら成人としての自覚や責任について考えてもらうため、少年院に入っている18歳と19歳の人を対象にした新たな矯正教育プログラムを導入するなど、罪を犯した若い人たちの更生や社会復帰などを支援していく方針です。

裁判員も18歳以上に 若者 賛成と反対が半々 日本財団調査


成人年齢を引き下げる民法改正と少年法の改正に伴い、裁判員に選ばれる年齢も「20歳」から「18歳」に引き下げられます。これに対する18歳前後の若者の受け止めは、賛成と反対が半々に分かれていることが、日本財団の調査でわかりました。

市民が殺人など重大な犯罪の刑事裁判に参加し、有罪・無罪や刑の重さを判断する裁判員制度。

裁判員に選ばれる年齢はこれまで「20歳以上」でしたが、成人年齢を引き下げる民法改正や少年法改正に伴い、法律上は4月1日から「18歳以上」になります。

裁判員に選ばれる年齢が引き下げられることについて、日本財団がことし1月、17歳から19歳を対象にインターネット上の調査で尋ねたところ、回答があった1000人のうち、
▼「賛成」▼「どちらかというと賛成」と答えた割合は合わせて49.1%、
▼「反対」▼「どちらかというと反対」は合わせて50.1%で、
賛否が半々に分かれました。

また「裁判員裁判に参加したいか」という質問では、
▼「参加したくない」▼「どちらかというと参加したくない」が合わせて48.1%で、
▼「参加したい」▼「どちらかというと参加したい」の合わせて28.1%を20ポイント上回りました。

「裁判員に選ばれた場合に不安に感じること」は、
▼「間違った判断をしてしまうこと」が複数回答で最も多く31.2%、

次いで
▼「重い刑罰を言い渡すことの責任」が27%、
▼「年齢が若く、十分な人生経験がないこと」が20.8%と、
判断することへの不安が多くなっています。

ことしの裁判員の候補者はすでに選ばれているため、実際に18歳や19歳の若者が選ばれるようになるのは来年以降になります。

成人年齢引き下げ “同意なし”での投資に期待と心配の声

成人年齢の引き下げに伴い、18歳になると株式や投資信託などの金融商品を親などの同意がなくても買えるようになります。早い段階から投資に親しめる一方で、親からは心配する声も出ています。

札幌市内の高校に通う山本響輝さん(16)は、去年1月、親の同意を得て、株式投資に使う証券口座を開設しました。

中学3年生の時に社会科の授業の一環で、株式投資の模擬体験をしたことをきっかけに興味を持ったということです。

貯金していた5万円を元手に、株式と投資信託を売買し、現在、およそ1万7000円の含み益を得ているということです。

投資を始めてからは、情報収集のため新聞を読むことが日課となり、株価に影響を与える政府の政策や国際情勢に関するニュースが身近に感じられるようになったといいます。

響輝さんの投資について、母親の明子さんは当初、投資に必要な知識が足りないのではないかと不安を感じましたが、取り引きの状況をチェックすることを条件に証券口座の開設に同意しました。

その後、響輝さんが新聞や金融に関する本を熱心に読んでいる姿を見て、投資が知見を広げる良い機会になったと捉えています。

明子さんは「高校生のうちは貯金した方が良いのではないかと思っていましたが、金融のニュースを見たり、世界情勢に興味を持ち始めたのでそこはすごく良かった」と話しています。

響輝さんは、18歳になって成人したら「信用取引」に挑戦してみたいと興味を示しています。

証券会社に資金や株式を借りることで、限られた資金で大きなリターンを狙うことができるからです。

しかし、明子さんは「18歳や19歳は興味で先走ってしまうことがあるので突然、息子から負債を抱えたという電話がかかってくることを考えると怖い。親に相談なく自分で口座を開けるとチェックも行き届かなくなるので心配だ」と不安を感じています。

響輝さんは「負債が大きくならないように、損切りするラインを設定する必要があると思っていますが、その線引きが難しいのでこれから勉強したい」と話していました。