土地価格「全体的に回復傾向」
マンションはバブル超も

ことし1月時点の全国の土地の価格は、住宅地と商業地などを合わせた全体の平均が去年に比べてプラス0.6%と2年ぶりに上昇しました。調査した国土交通省は「新型コロナの影響が徐々に緩和される中、全体的に地価の回復傾向が見られる」としています。

国土交通省が全国およそ2万6000地点を対象に1月1日時点の価格を調べる「地価公示」によりますと、ことしは住宅地と商業地などを合わせた全体の平均が去年に比べてプラス0.6%となりました。

上昇は2年ぶりです。

用途別に見ますと、
▽住宅地がプラス0.5%、
▽商業地がプラス0.4%で、いずれも2年ぶりに上昇に転じました。

また、東京、大阪、名古屋の「3大都市圏」の地価は、
▽全体の平均がプラス0.7%、
▽住宅地がプラス0.5%、
▽商業地がプラス0.7%で、こちらも2年ぶりの上昇でした。

一方、去年も上昇が続いた札幌、仙台、広島、福岡の「地方4市」の地価は、
▽全体の平均がプラス5.8%、
▽住宅地がプラス5.8%、
▽商業地がプラス5.7%で、そろって上昇幅を拡大させました。

今回の結果について、国土交通省は「新型コロナウイルスの影響が徐々に緩和される中、全体的に地価の回復傾向が見られる」としています。

上昇率・下落率が大きい地点は

去年と比べた地価の上昇率の大きさは、住宅地、商業地ともに北海道北広島市が全国で上位を占めました。

まず、住宅地です。
▽1位は北広島市共栄町1丁目のプラス26.0%、
▽2位は北広島市美沢3丁目のプラス23.7%、
▽3位も北広島市東共栄2丁目のプラス21.6%でした。

北広島市には来年、プロ野球 日本ハムの新球場が開業する予定で、隣の札幌市と比べて割安という見方から土地の需要が高まっているとされています。

続いて、商業地の地価の上昇率は、
▽1位が北広島市栄町1丁目のプラス19.6%、
▽2位が北広島市中央2丁目のプラス18.3%、
▽3位が福岡市博多区祇園町のプラス18.0%でした。

福岡市中心部では再開発が進んでいて、地価を押し上げているとみられます。

一方、下落率が全国で最も大きかったのは、
▽住宅地が福島県いわき市下平窪3丁目のマイナス8.1%でした。

▽商業地は大阪 中央区道頓堀1丁目のマイナス15.5%が全国最大の下落率で、外国人旅行者の落ち込みによる影響が色濃く出る形となりました。

北海道北広島市「住宅販売好調 宅地が不足」

住宅地の上昇率、全国上位10地点のうち、7つを占めたのが北海道北広島市です。
国土交通省によりますと、去年、北広島市で新たに着工されたマンションやアパートは163件、戸建ての住宅は209件と、それぞれ前の年より85%、27%増えました。

増加の背景には、市内で来年3月にプロ野球・日本ハムの新球場が開業するほか、JR北広島駅の西口では大規模な複合ビルの整備も計画され、住宅需要の増加が期待されていることがあります。
このうち、新球場からおよそ80メートルのところにある分譲マンションは、先月、118戸のうち、およそ6割を発売したところ、即日完売しました。

部屋によっては、倍率が10倍以上に上ったということです。

販売した不動産会社、「日本エスコン」北海道支店の大久保敬副支店長は「買った人からは将来のライフスタイルをイメージできるとか、将来の発展性を期待できるなどと言ってもらった。新球場の効果は相当ある」と話していました。
マンションだけでなく戸建ての住宅販売も好調で、すでに宅地が不足し始めているという声も出ています。

北広島市の不動産会社によりますと、市内の戸建て住宅が立ち並ぶ地域では、このところ一戸当たりの敷地の広さを半分程度に抑えて、その分、戸数を増やす動きが出ているということです。

このため会社では、高齢者が多い地区を中心に空き家が増えていることに着目しました。

市内で宅地が減る中、空き家を買って、リフォームしたり、建て直したりする個人の需要が増えるとみて、空き家の販売の仲介を増やし、収益を確保していきたい考えです。

不動産会社、「JMPサンライズ」の羽田好志社長は「空き家を活用することで、宅地の不足を解消できるうえ、新たな人が住み着くことで地域としても活気づく」と話していました。

最高価格の地点は

地価が全国で最も高かったのは、住宅地が「東京 港区赤坂1丁目」で、1平方メートル当たり500万円でした。

最高価格となるのは5年連続で、去年より3.3%上昇しました。

高級マンション向けの土地の需要が強いということです。

商業地は、東京 中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で、1平方メートル当たり5300万円でした。

16年連続の最高価格ですが、新型コロナの影響による外国人旅行者の落ち込みなどを反映して、去年より1.1%下落しました。

一方、工業地は、10年連続で「東京 大田区東海2丁目」の1平方メートル当たり71万4000円が最高価格でした。

ネット通販向けの物流施設の需要が伸びていることが要因だということです。

新築マンション バブル景気超え過去最高額

地価を下支えしているのがマンション需要の高止まりです。

調査会社「不動産経済研究所」によりますと、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で去年1年間に発売された新築マンションの1戸当たりの平均価格は6260万円でバブル景気の時期の1990年を超えて過去最高となっています。

このうち、東京23区の1戸当たりの平均価格は8293万円となっていて、特に都心エリアのマンションの需要が高くなっています。

●港区の億ション売れ行き好調

住宅地の地価の上昇率が去年の0.3%から2.4%に拡大した東京 港区。

港区の芝浦地区では今、32階建てのタワーマンションの販売が行われています。
このマンションでは、販売価格が1億円を超える物件が全体の半分ほどを占めていますが、売れ行きは好調だということです。

東急不動産販売部の松本高雄グループリーダーは「港区や品川区など都心部に通勤するファミリー層を中心に売れていて、利便性と資産性の高さが評価されていると感じる」と話していました。

●首都圏エリアのマンションも人気

都心エリアのマンションの販売価格が高騰していることから、マンション需要は首都圏の周辺の地域でも高まっています。

住宅地の地価の上昇率が去年の0.2%から1.1%に拡大した川崎市高津区。

JR南武線の津田山駅近くでは来年8月の完成に向けて6階建てのマンションの建設が進められています。

広さ68平方メートルの3LDKタイプで販売価格は4979万円。

都心の物件より割安なことから30代や40代のファミリー層を中心に引き合いが強く、先月から販売が始まった37戸のうち30戸がすでに契約済みだということです。

3LDKタイプの物件の購入を決めた40代の男性は「都心のマンションは部屋が狭くなってしまう。新型コロナでリモートワークが増えたことに加えて、2人の子どもを自宅で遊ばせることも考えて、部屋の広さと価格が条件に合う物件を選んだ」と話していました。

大和ハウス工業マンション事業部の須田夕貴販売事務所長は「新型コロナの感染拡大以降は家選びで広さを重視する人がとても増えた。今は都心に住んでいる人からも多くの問い合わせがきていて、郊外の物件にも目が向くようになっていると感じる」と話していました。

専門家「インフレの懸念に注意」

ことしの地価公示について不動産の調査やコンサルティングなどを行う「ジョーンズ ラング ラサール」の大東雄人シニアディレクターは「海外の経済回復が先行する中で、日本の不動産市場でも期待が先行して回復の兆しが見え始めリーマンショックなどの過去の危機と比べてもかなり速いスピードで回復している。在宅勤務が浸透し外国人観光客が減ったことでオフィスやホテルなどへの投資が控えられる一方、自宅に仕事用のスペースがほしいといった需要が増えた。住宅への投資も拡大し、実際に購入する消費者と投資の両面で住宅地の地価が下支えされている」と話しています。

またマンションの需要が高止まりしていることについては、「日本では超低金利の環境が続き借り入れが容易なためマンション購入の動機を後押ししている。さらに世界的な金融緩和で投資資金も拡大し、実際の需要と重なって投資資金も市場に流れ込んでいることも背景にある。ただ、都心部のマンション価格が高騰して手が届かなくなってきていて、アクセスが良い郊外の住宅にも人気が波及し、価格が上昇している」と分析しています。

そのうえで今後の見通しについては、「世界情勢が混とんとして先行きが見通せなくなっているが、少なくともエネルギー高や資源高からくるインフレの懸念は、注意して見ていかなければならない。今後は感染状況に左右されずいかに経済活動を回していくかが不動産市場にとって重要になる」と話しています。