プーチン政権に近い
新興財閥資産凍結を決定

ウクライナ情勢をめぐり岸田総理大臣は、3日夜、記者会見で、ロシアによる軍事侵攻は、決して許すことはできないと強く非難し、プーチン政権に近い新興財閥の資産凍結を決定したと明らかにしました。

この中で岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「ロシアによる侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、ヨーロッパのみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為だ。明白な国際法違反の暴挙であり改めて厳しく非難する」と述べました。

その上で「今回のような力による一方的な現状変更を決して許すことはできない。国際秩序の根幹であるこの原則を守り抜くことは、東アジアの安全保障環境が急速に厳しさを増す中、わが国の今後の外交・安全保障の観点からも極めて重要だ。国際社会と結束してきぜんと行動していく」と強調しました。

さらに「ロシアの核抑止力部隊が警戒態勢を引き上げたことは言語道断だ。唯一の戦争被爆国で、被爆地・広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇も使用も万が一にも許されるものではないことを首脳外交や国際会議の場で強く訴えている」と述べました。

そして、日本はウクライナの国民とともにあるという姿勢を強調し、国際機関と協力し、1億ドルの緊急人道支援を行うほか、ウクライナからポーランドなど第三国に避難した人の日本への受け入れを進めていく考えを示しました。

また、国際社会とともにロシアに強い制裁措置をとっていくと明言し、プーチン大統領を含むロシア関係者らの資産凍結に加え、プーチン政権に近い「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥なども資産凍結の対象に決定したと明らかにしました。

さらに「欧米とともにロシアを国際金融システムや世界経済から隔離する」と述べ、SWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークからロシアの7つの銀行を排除するために必要な国内措置をとったと説明しました。

これに加え岸田総理大臣は、ロシアと同盟関係にあるベラルーシについても、ルカシェンコ大統領らの資産凍結など追加の制裁措置を決定したと述べました。

このほか、ウクライナに在留している日本人の保護について、ウクライナの西部リビウの連絡事務所や隣国ポーランドのジェシュフ市に設けた連絡事務所などを通じて、日本人の安全確保や出国支援に取り組む考えを重ねて示しました。

そして「首脳外交を積極的に展開していく。このあとも日米豪印の首脳テレビ会議に出席し、ウクライナ情勢への対応について意見交換を行う予定だ。情勢は日々変化しており、制裁などではG7各国との緊密な連携を図りつつ、アジア各国に働きかけるなど、わが国として事態打開に向けて貢献していく」と強調しました。

原油価格高騰 追加対策公表へ

一方、岸田総理大臣は、原油価格の高騰を受けて、国民生活や企業活動への悪影響を最小化するための追加対策を4日に公表すると明らかにし、今年度予算の予備費から3600億円あまりを活用する方針を示しました。

そして石油元売り会社への補助金の上限を現在の5円から25円に引き上げ、急激な石油製品の価格上昇を抑制するほか、漁業者や施設園芸農家、タクシー事業者に燃料価格の高騰分の補填を大胆に行い、地方自治体を通じて灯油の購入や暖房費の支援などを行い国民生活への影響を緩和すると説明しました。

また、野党の一部から、ガソリン税の上乗せ分の課税を停止する、いわゆる「トリガー条項」の凍結解除を求める意見が出る中「来年度も原油価格が上昇し続ける場合については、何が実効的で有効な措置かという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討し対応していく」と述べました。

「エネルギーの安定供給と安全保障状況把握し方針決定」

岸田総理大臣は記者会見で、日本も参加してロシア極東・サハリンで行われている石油・天然ガス開発事業「サハリン1」への対応について「エネルギーの安定供給と安全保障を最大限守るべき国益の一つとして対応していかなければならない」と述べました。

そのうえで「エネルギーの安定供給や安全保障の観点から、わが国としてどう対応するかは、状況をしっかり判断したうえで決定すべきことだ。今はさまざまな動きが報じられているが、状況をしっかり把握したうえで、わが国としての方針を決定していきたい」と述べました。

「日本の領空内 飛行禁止 状況踏まえ対応」

岸田総理大臣は記者会見で記者団が「ロシアの航空会社の日本の領空での飛行を禁止する制裁措置を行う考えはあるか」と質問したのに対し「ロシア国籍の航空機の領空内での飛行を禁止する措置をはじめとする追加の措置は、引き続き今後の状況を踏まえたうえで、G7=主要7か国や国際社会との連携を念頭に置きながら適切に対応していかなければならない。機動的に判断していくという方針で動向を注視していきたい」と述べました。

穀物価格高騰に備え各担当大臣に指示

岸田総理大臣は記者会見で、ウクライナへのロシアの軍事侵攻を受けた世界的な穀物価格への影響について「幅広い物価高騰に備えなければいけない。ロシアやウクライナは穀物の大産出国であり、穀物市場全体に対する影響を考えると、間違いなく日本にも影響がくる」と指摘しました。

そのうえで「特に輸入に依存するものは、さまざまな対策を考えていかなければならず、調達先の多様化などの取り組みが求められる。状況を丁寧に把握することに努め、影響が出ないよう、政府として考えていかなければならない。各担当大臣に、それぞれの分野でどのような影響が想定され、どんな対応が考えられるのかを検討するように指示したい」と述べました。

防衛力を抜本的に強化

岸田総理大臣は記者会見で、政府が年末までに改定する方針を示している国家安全保障戦略について「今回のロシアのウクライナ侵略を踏まえ、新たな国家安全保障戦略などを策定することになるが、その中で日本の国民の命や暮らしを守るために具体的に何が求められるのか、しっかりと議論しなければならない」と述べました。

そのうえで「結果として、防衛力を抜本的に強化していくことを考えなければならないと思っている。ぜひこういった姿勢で、国家安全保障戦略をはじめとする安全保障に関する文書の新たな策定について、しっかりと議論を深め、体制を整えていきたい」と述べました。

国民の命や暮らし守っていく覚悟

岸田総理大臣は記者会見で仮に中国が台湾に侵攻した場合の備えについて問われ「当然のことながら日々状況を把握し、国民の命や暮らしを守るために十分なのか点検している。わが国の安全保障体制や日米同盟による抑止力によって国民の命や暮らしをしっかり守っていく覚悟は政府として持っている」と述べました。

そのうえで「ミサイル技術をはじめとするさまざまな状況は絶えず変化しているので、検証していかなければならない。国家安全保障戦略をはじめとする文書の見直しの中で、しっかり検証することが重要だ」と述べました。

原油価格高騰 『トリガー条項』の効果考える

岸田総理大臣は記者会見で原油価格の高騰対策をめぐって、ガソリン税の上乗せ分の課税を停止するいわゆる『トリガー条項』の凍結解除を検討するか問われ「将来的にさらなる価格高騰なども考えられ、あらゆる選択肢を用意して準備を進めていく。『トリガー条項』の凍結解除の問題についても、何が実効的で、効果があるのか考えていく。運用の仕方なども含め、さまざまな選択肢の中で考えたい」と述べました。

北方領土問題 事態の緊張緩和が先

岸田総理大臣は記者会見で、北方領土問題を含むロシアとの平和条約交渉について「ご高齢になられた元島民の思いに何とか応えたいという私自身の思いは、いささかも変わらないが、いまの状況を鑑みれば展望について申し上げることはできない。まずは首脳外交などを通じて、事態の緊張緩和に向けて、変化させていくことが先だ」と述べました。

そのうえで「緊張緩和が進んだ場合に、具体的な条件の中で何ができるのかを考えていく。前向きに議論ができるような状況を実現するために、緊張緩和に向けて国際社会とともに力を合わせて貢献していきたい」と述べました。

制裁が遅いという指摘は当たらない

岸田総理大臣は記者会見で、ロシアへの制裁がアメリカやヨーロッパに比べて遅いのではないかと問われ「SWIFTについては日本にも参加をお願いしたいという要望を受けてその日のうちに対応しており、遅いという指摘は当たらない。基本的にはG7=主要7か国や国際社会との連携が重要だが、各国の対応は国益や事情に応じて違いがある。日本の立場としてどうあるべきなのか、しっかりと考え、主導すべき部分もあるという姿勢で臨みたい」と述べました。

エネルギー価格高騰で省エネに協力を

岸田総理大臣は記者会見で「ロシアのウクライナ侵略という極めて深刻な事態に直面している。エネルギー価格高騰によるわが国経済への悪影響を少しでも減らすべく、これまで以上の省エネに取り組み、石油やガスの使用を少しでも減らす努力をしていただくことが大切だ。国民お一人お一人にご理解とご協力をお願いする」と述べました。