“米の核兵器 同盟国で共有
政府として議論せず”

国会では2日、参議院予算委員会でウクライナ情勢などをテーマに集中審議が行われました。
岸田総理大臣は、今後の安全保障政策をめぐり、アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策について、政府として議論することは考えていないと明らかにしました。

午前中は、自民党と立憲民主党が質問に立ちました。

自民党の猪口元少子化担当大臣は、ロシアに対する経済制裁について「全面戦争の危険性を回避するためにエスカレーションを抑止する鍵となるのが主要経済国の団結だ。日本は主要経済国として経済制裁の隊列の中心を担うべきだ」と述べ、今後の対応を問いました。

岸田総理大臣は「国際社会はロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないと考えている。経済制裁を通じてG7=主要7か国をはじめとする国際社会との連携を重視しながら、断固とした行動を示していく姿勢が重要だ」と述べました。

また、制裁措置に伴う国民生活や日本企業への影響は避けられないとしたうえで「わが国の安全保障にもかかわる国際秩序の根幹を守るために、ウクライナ国民への連帯を示すべく行動することの重要性を理解してほしい。国民への影響をできるかぎり抑えるよう全力で取り組む」と述べました。

立憲民主党の田名部匡代氏は、アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策について、安倍元総理大臣が、さきにタブー視せずに議論すべきだと発言したことをめぐって、「岸田総理大臣は非核三原則を堅持するというわが国の立場から考えて認められないと答えているが、議論も認めないということか」とただしました。

岸田総理大臣は「平素から、自国の領土にアメリカの核兵器を置き、有事には自国の戦闘機などに核兵器を搭載、運用可能な体制を保持することで、アメリカの核抑止力を共有する枠組みを想定しているならば、非核三原則を堅持する立場や、原子力の平和利用を規定する原子力基本法をはじめとする法体系から考えても政府として議論することは考えていない」と明らかにしました。

一方、ロシアと同盟関係にあるベラルーシへの制裁について岸田総理大臣は「ロシアによる侵略に対する明白な関与に鑑み、ルカシェンコ大統領をはじめとする個人、団体への制裁措置や輸出管理措置を講ずる。週内にも実行したい」と述べました。

また、原油の安定供給に懸念が出ていることに関連して「IEA=国際エネルギー機関のもと、関係国が協調して石油備蓄の放出を行うことを決定した。さらなるエネルギー価格の高騰リスクに対応するため、IEAやG7などの枠組みを活用して、主要な消費国と一層連携して、産油国への働きかけを行っていきたい」と述べました。

さらに林外務大臣は、ウクライナとの連帯を示す各国のイルミネーションに関連して「私も洋服だんすの中を探して青と黄色の服装で来た。各国の都市で連帯を示すイルミネーションが実施され、日本でも東京都庁で行っている。連帯表明を歓迎しており、さらに推進していきたい」と述べました。

自民党の佐藤啓氏はロシアへの制裁措置や避難する人たちへの支援について「さらに踏み込んだ対応が必要でアジアのリーダーとしてASEANを中心としたアジア各国に制裁を呼びかけるべきではないか。避難民への人道支援に自衛隊を派遣する考えはないのか」と問いました。

岸田総理大臣は「アジアをはじめ、ASEAN諸国など多くの国々に意識を共有してもらい、行動をともにしてもらう働きかけは重要だ。難民支援は現在、国際機関やNGOなどが行っていて、わが国としては1億ドルの緊急人道支援を国際機関経由で着実に実現していく」と述べました。

立憲民主党の杉尾秀哉氏はSWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークからロシアの特定の銀行を締め出す措置について「人民元や暗号資産など、抜け穴があるという指摘がある。こうした抜け穴対策も含めて、さらなる金融制裁や強い措置をどう考えているのか」とただしました。

岸田総理大臣は「SWIFTからの排除について対象銀行などで、欧州諸国と緊密に連絡をとりながら調整を行っている。これをまずしっかりと実行し、効果を確認したうえで、金融の分野でさらに何か加えることがないか、引き続き考えていくべき課題だ」と述べました。

公明党の熊野正士氏はウクライナ情勢が国民生活に与える影響について「穀物の国際相場の高騰により国内の食料品価格が値上がりするのではとの不安の声も聞かれる。今後の国際情勢も踏まえ、食料の安全保障に真剣に取り組む必要がある」と指摘しました。

岸田総理大臣は「将来にわたって食料を安定的に確保するために、国内で生産できるものはできるかぎり生産していくという考え方は重要だ。農業の担い手を確保しつつ、国際競争や災害に負けない足腰の強い農林水産業を構築していきたい」と述べました。

国民民主党の川合孝典氏は林外務大臣とウクライナの駐日大使との面会について、「ウクライナ侵攻の予兆ともいうべき状況が見られていたことから、1か月も前に外務省に面会を求めたができていないという話がある。危機管理対応として極めて緩慢ではないか」とただしました。

林外務大臣は「双方の都合のよい日時を調整して、きょうの夕刻にお会いする運びとなった。私自身は大使からの面会要望は承知していなかったので、どういう事情だったかは確認しておきたい」と述べました。

また岸田総理大臣は「双方の日程などさまざまな事情があったと想像はするが、緊迫した事態の中で関係国と意思疎通を図っていくことは重要だ。意思疎通などの機会は、努力して設けるようにする姿勢は大切だ」と述べました。

日本維新の会の石井章氏は「イギリスのジョンソン首相は、ロシアの軍事行動からウクライナの独立を守るために支援しなければ、台湾に深刻な影響が及ぶと警鐘を鳴らしている」と述べ台湾情勢に与える影響を問いました。

岸田総理大臣は個別の事案への影響については差し控えるとしたうえで、「重要なことは今回のような力による現状変更をアジア太平洋、とりわけ東アジアで許してはならないということだ。台湾をめぐる問題は対話による平和的解決を期待するというのが一貫した立場であり引き続き関心を持って注視していきたい」と述べました。

共産党の井上 参議院国会対策委員長はプーチン大統領が核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたことについて「広島、長崎に続く、第3の戦争被爆地をうむことは絶対にあってはならないという被爆地の叫びをどう受け止めるか。核兵器の使用も威嚇も許さないと強く世界に訴えてほしい」と求めました。

岸田総理大臣は「情勢のさらなる不安定化につながりかねない、危険な行為だと認識している。唯一の戦争被爆国であり、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇も、ましてや使用もあってはならないことを強く訴え続けていきたい」と述べました。

一方、ヨーロッパ各国が自国の領空で、ロシアの航空会社の運航を禁止した措置に関連して、岸田総理大臣は、「わが国としては引き続き今後の状況を踏まえつつ、G7をはじめとする国際社会と連携したうえで、適切な対応を考えていかなければならない」と述べました。

また、日本の大手商社も出資するロシア・サハリンの石油・天然ガス開発事業、「サハリン2」からイギリスの石油大手シェルが撤退すると発表したことについて「今後の状況を注視しながら、対応を考えなければならない。制裁措置の影響なども鑑みて民間の相談に乗り、協力すべきところは協力する方針で臨んでいきたい」と述べました。