日米豪印の首脳会談
日本で実施など合意

岸田総理大臣は21日夜、アメリカのバイデン大統領とオンライン形式で会談し、日米両国にオーストラリアとインドを加えた、クアッドと呼ばれる4か国の首脳会合をことしの前半に日本で開催する方針を確認しました。また経済分野の議論を進めるため、両国の外務・経済閣僚による協議の枠組みを新設することで合意しました。

岸田総理大臣は21日夜、総理大臣官邸で、アメリカのバイデン大統領とのオンライン形式での首脳会談に臨み、会談はおよそ1時間20分行われました。

会談で両首脳は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた両国の連携を強化するとともに、ASEAN=東南アジア諸国連合やヨーロッパなどの価値観を共有する同志国との協力をさらに深めていくことで一致しました。

そのうえで日米両国にオーストラリアとインドを加えた、クアッドと呼ばれる4か国の首脳会合をことしの前半に日本で開催する方針を確認しました。

そして両首脳は、地域情勢をめぐっても意見を交わし、中国を念頭に、東シナ海や南シナ海での一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対するとともに、香港や新疆ウイグル自治区での人権問題に対する深刻な懸念を共有しました。

さらに台湾海峡の平和と安定の重要性を確認し、両岸問題の平和的解決を促すとした上で、中国をめぐる諸課題に対し、日米両国で緊密に連携していくことで一致しました。

また、弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮の完全な非核化に向け、引き続き日米、日米韓3か国で緊密に連携していくことを確認したほか、岸田総理大臣が拉致問題の即時解決に向けた理解と協力を求めたのに対し、バイデン大統領は強い支持を表明しました。

このほか両首脳は、ロシアによるウクライナへの侵攻を抑止するため、両国で緊密に連携するとともに、岸田総理大臣は、いかなる攻撃に対しても強い行動を取ることについて、アメリカをはじめ国際社会と調整を続けていく考えを強調しました。

安全保障をめぐって、両首脳は、日米同盟の抑止力と対処力をいっそう強化することで一致し、岸田総理大臣は、新たな国家安全保障戦略などを策定し、日本の防衛力を抜本的に強化する決意を表明しました。

さらに岸田総理大臣は、いわゆる「敵基地攻撃能力」も含めてあらゆる選択肢を排除せず現実的に検討していくと説明し、バイデン大統領は、これを歓迎する考えを示すとともに、沖縄県の尖閣諸島に日米安全保障条約第5条が適用されると明言しました。

また両首脳は、在日アメリカ軍の施設区域などで新型コロナの感染が拡大したことを受け、感染拡大の防止に向けて緊密に協力していくことで一致しました。

一方経済分野では、岸田総理大臣が、みずからが掲げる「新しい資本主義」を説明したのに対し、バイデン大統領もアメリカの経済政策の考え方を説明しました。

そのうえで両首脳は、持続可能で包摂的な経済社会の実現のための新しい政策イニシアティブについて議論を深めていくことを確認し、経済分野の議論を進めるため、両国の外務・経済閣僚による協議、経済版のいわゆる「2プラス2」の枠組みを新設することで合意しました。

さらに岸田総理大臣は、アメリカによるインド太平洋地域の国際秩序への戦略的な関与という観点から、TPP=環太平洋パートナーシップ協定へのアメリカの復帰を望む考えを伝えました。

また両首脳は、核軍縮をめぐって21日にNPT=核拡散防止条約に関する日米共同声明が発表されたことを歓迎し、核兵器のない世界に向けてともに取り組んでいくことを確認しました。

会談のあと岸田総理大臣は記者団に対し「個人的な信頼関係も含めた関係を構築する上で、じっくり時間をかけてさまざまな課題について意見交換ができた。大変有意義だった」と述べました。

米政権高官「ことし春の遅い時期に日本公式訪問の意思表明」

アメリカのバイデン政権の高官は21日夜の日米首脳会談で確認した4か国の首脳会合に参加するためのバイデン大統領の訪日の時期について「大統領は春の遅い時期に日本を公式訪問する意思を示した」と明らかにしました。

21日夜、行われたオンライン形式での日米首脳会談について、バイデン政権の高官は記者団に「なごやかな雰囲気で行われた。大統領は『日本との関係により希望を持てるようになった』と言及した」と述べました。

そのうえで「バイデン大統領は春の遅い時期に日本を公式訪問する意思を示した」と明らかにし、首脳会談でことし前半に日本で開催する方針を確認した4か国の首脳会合に参加するためのバイデン大統領の日本訪問の時期について「春の遅い時期」になるという見通しを示しました。

また、両首脳が新設することで合意した外務・経済閣僚による経済版のいわゆる「2プラス2」の議題について高官は「これから詰めていくが輸出管理やサプライチェーン、技術に対する投資などについて議論することになる。アメリカと日本はより積極的な役割を果たすことができる」と述べました。

一方、弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮への今後の対応については引き続き外交による解決を目指す一方でさらなる挑発行為をやめさせるため日米韓の3か国が連携していくことを明確にしたということで、高官は「今後数日中に政府から何かしらの発表があるだろう」と述べました。

さらにホワイトハウスが会談後に発表した声明では、バイデン大統領は日本の防衛費の歳出の増加を歓迎し「こうした重要な投資を長期にわたって持続させることの重要性を強調した」としています。

またホワイトハウスは首脳会談の冒頭を撮影した映像を公開し、この中でバイデン大統領は画面上の岸田総理大臣に「またお会いできてうれしいです。グラスゴーでの懇談は楽しかったです」と呼びかけています。