オミクロン株の感染者
日本初確認 ナミビアから入国

松野官房長官は、30日午後の記者会見で、アフリカ南部のナミビアから入国した30代の男性が、新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に感染していたことが確認されたことを明らかにしました。

日本国内で、オミクロン株の感染者が確認されたのは初めてです。

岸田首相 水際対策など指示

岸田総理大臣は総理大臣官邸で午後5時から1時間余り、後藤厚生労働大臣ら関係閣僚と対応を協議し、水際対策と国内感染予防に全力を挙げるよう指示しました。

具体的には、この男性の濃厚接触者や飛行機の同乗者を把握したうえで、健康管理や検査、必要な隔離などの措置を徹底して行うとともに、感染が確認された場合は迅速なゲノム解析を徹底し、フォローアップを強化するよう指示しました。

また関係大臣が緊密に連携して対応にあたるとともに、関係省庁が具体的な対応策を協議するため、松野官房長官を議長とするタスクフォースを立ち上げることも指示しました。

感染確認は外交官の男性 後藤厚労相

協議のあと後藤大臣は記者団に対し、感染が確認された男性はナミビアの外交官で、2回のワクチン接種を済ませていたことを明らかにしました。

またこの男性と同じ飛行機に乗っていた70人全員について、検疫で検査した結果いずれも陰性だったものの濃厚接触者として扱い、アプリを使った管理や2日ごとの検査などを行う考えを示しました。

そのうえで後藤大臣は「国立感染症研究所は、個人の基本的な感染予防策としては、変異株であっても従来と同様、3密の回避、マスクの着用、手洗いなどの徹底などが推奨されるという見解を発表しており、国民の皆様には基本的な感染予防策への協力を強く呼びかけていきたい」と述べました。

タスクフォース 初会合開催

政府は30日夜、総理大臣官邸で松野官房長官をトップに新たに立ち上げた関係省庁の幹部らで作るタスクフォースの初会合を開きました。このあと松野官房長官は記者団に対し「緊張感をもって水際対策の徹底と状況把握を行うとともに、緊密に連携しながら対策を進めていくよう指示した」と述べました。

松野官房長官“当該入国者は医療機関で隔離”

松野官房長官は「ナミビアからの入国者について、国立感染症研究所で陽性検体のゲノム解析を行ったところ、オミクロン株であると確認されたとの1報が、厚生労働省からあった」と述べ、アフリカ南部のナミビアから入国した30代の男性が、新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に感染していたことが確認されたことを明らかにしました。

そのうえで「わが国でオミクロン株が確認されたのは初めてだ。現在、当該入国者は医療機関で隔離を実施していると厚生労働省から報告を受けている。感染者の同行者、または飛行機の隣席などの濃厚接触の疑いがある方はすでに把握し、保健所などに連絡している」と述べました。

さらに「今回の方は日本への入国前に空港での検疫で新型コロナ陽性であることを把握し、速やかに隔離した。わが国の水際措置が有効に機能していたものと考えている。引き続き水際措置の強化とゲノム解析の強化によるモニタリングを進め、感染防止対策を徹底したい」と述べました。

小池都知事「オミクロン株に十分な警戒必要」

東京都の小池知事は、30日の都議会で「十分な警戒が必要できのう政府に対して迅速な水際対策を要望した」と述べました。

そのうえで「感染再拡大の兆候を捉えた際は先手を打って対策を講じ、都の総力を挙げ早期の収束を図る。年末年始や再拡大時にも揺るがない医療提供体制を確保する」と述べました。

オミクロン株とは

オミクロン株は、新型コロナウイルスの新たな変異ウイルスで、WHO=世界保健機関が2021年11月26日に「VOC=懸念される変異株」に指定しました。

日本の国立感染症研究所も11月28日に「VOC」に位置づけています。

国立感染症研究所などによりますと、オミクロン株は「スパイクたんぱく質」というウイルスの表面にある突起のような部分におよそ30か所の変異があるということです。

このうちの15か所の変異はスパイクたんぱく質の中でもウイルスが感染する際にヒトの細胞と結合する「RBD」と呼ばれる部分で起こっています。

こうした変異がウイルスの性質にどのような影響を与えるのか、まだ(2021年11月30日現在)分かっていませんが、「H655Y」「N679K」「P681H」の3つについては感染力に関わる場所の近くで起こっているということです。

また、2020年から2021年にかけて国内でも流行した「アルファ株」などと同じ「N501Y」の変異も見つかっています。

国立感染症研究所によりますと、オミクロン株のウイルスを使った実験の結果などはまだ(2021年11月28日現在)報告されていませんが、アメリカの大学の研究グループが人工的にスパイクたんぱく質に20か所の変異を入れた合成のウイルスを作って実験を行ったところ、免疫から逃れる性質が確認されたということで、オミクロン株でも同様のことが起こる可能性が懸念されています。

オミクロン株の変異はスパイクたんぱく質以外でも見つかっていて、このうち「ヌクレオカプシドたんぱく質」という部分にある「R203K」「G204R」という変異は、アルファ株やガンマ株、ラムダ株にもある変異で、感染力や広がりやすさを高める可能性があると指摘されています。

こうしたことから国立感染症研究所は、年代別の感染性への影響や症状の重篤度、実際の社会でのワクチンの効果への影響などについて注視していく必要があるとしています。

オミクロン株 解析には数日

新型コロナウイルスのうち、オミクロン株など、新たな変異ウイルスに感染しているか調べる際には、特殊な装置を使ってウイルスの遺伝情報を詳細に解析する必要があり、結果が出るまでに数日程度の時間がかかるとされています。

アルファ株やデルタ株などが出てきた当初も、どの変異ウイルスに感染しているか調べるのには、遺伝情報の解析が必要で時間がかかっていましたが、その後、国立感染症研究所がPCR検査にかけるだけでその変異ウイルスに特徴的な変異を検出するための試薬を開発し、数時間で検出できるようにしてきました。

試薬は全国の地方衛生研究所に配られ、これまでに知られている変異ウイルスは各地で迅速に検出できるようになっていますが、オミクロン株に対応した試薬はまだ開発されていません。

オミクロン株 世界17の国と地域で確認(30日16:00時点)

NHKが30日午後4時時点でまとめたところ、新しい変異ウイルス、オミクロン株の感染は、世界の17の国と地域で確認されています。

日本以外では、
▽アフリカが南アフリカ、ボツワナ、
▽ヨーロッパがイギリス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、デンマーク、チェコ、オーストリア、スウェーデン、スペイン、
▽中東のイスラエル、
▽アジアでは香港、
▽オセアニアでは、オーストラリア、
▽北米では、カナダで、それぞれ感染が確認されています。