来年度の診療報酬改定
引き上げか?引き下げか?

来年度の診療報酬改定をめぐり、財務省は社会保障費を抑えるため医師の人件費などの「本体」部分も引き下げたいとしているのに対し、日本医師会は新型コロナウイルスの影響で昨年度、病院の経営状況が悪化したことも踏まえ引き上げを求めていて、年内の決定に向けて議論が活発になる見通しです。

医療機関に支払われる診療報酬は
▽医師の人件費などにあたる「本体」部分と
▽薬の価格などの「薬価」部分で構成されていて
政府は年内に来年度・令和4年度の具体的な改定率を決定します。

財務省は増え続ける社会保障費を抑えるためには引き下げが続いている「薬価」だけでなく「本体」部分も引き下げるべきだとしています。

また健康保険組合でつくる団体なども、少子高齢化が進み社会保障の支え手が減少する中で引き上げる環境にないと主張しています。

これに対し日本医師会は病院の経営状況が昨年度、新型コロナウイルスによる受診控えなどの影響で大幅に悪化したことを踏まえ「本体」部分の引き上げを求めています。

また厚生労働省や与党内からは今後の新型コロナ対応や、政府が打ち出している看護師の処遇改善のために「本体」部分の引き上げを求める声も出ていて、年内の改定率の決定に向けて議論が活発になる見通しです。

“診療報酬 引き下げを” 健保連など厚労省に要請

大企業の健康保険組合でつくる健保連=健康保険組合連合会や、中小企業の従業員らが加入する「協会けんぽ」、それに、経団連や連合など、6つの団体の代表者が、24日、厚生労働省で濱谷浩樹保険局長と面会し、診療報酬の引き下げを求める要請書を手渡しました。

要請書では「少子高齢化は確実に進み、支え手が減少する中で、来年度からいわゆる『団塊の世代』が75歳に到達し始める。高い水準の医療費の自然増を考えれば、診療報酬を引き上げる環境になく国民の負担軽減につなげるべきだ」としています。

このあと、健保連の松本真人理事は、記者会見で「きょう公表された調査を見ても、医療機関の経営状況は予想以上に安定している。さらに月々の調査結果を見るとだんだん元に戻ってきていることはかなり顕著だ」と述べました。

日本医師会 中川会長「ちゅうちょなくプラス改定を」

日本医師会の中川会長は、記者会見で「医療現場は、新型コロナウイルスの感染拡大への対応で著しく疲弊しており、来年度の診療報酬改定ではちゅうちょなくプラス改定すべきだ。今後、新型コロナが収束していけば補助金は無くなるため、診療報酬できちんと手当てし、地域医療を立ち直らせることが必要だ」と述べ、医師の人件費などに当たる「本体」部分の引き上げを求めました。