新しい資本主義実現会議
緊急提言案取りまとめ指示

岸田総理大臣は「成長と分配の好循環」の実現に向けて設置した「新しい資本主義実現会議」の初会合で、科学技術立国の推進や経済安全保障の強化など、最優先で取り組む課題について、来月上旬にも緊急提言案を取りまとめるよう指示しました。

総理大臣官邸で開かれた「新しい資本主義実現会議」の初会合には、岸田総理大臣や山際経済再生担当大臣のほか「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の孫の孫「やしゃご」にあたる、投資信託会社会長の渋沢健氏ら、民間の有識者が出席しました。

この中で、岸田総理大臣は「成長戦略によって生産性を向上させ、その果実を賃金の形で分配することで広く国民の所得水準を伸ばし、次の成長を実現していく『成長と分配の好循環』が重要だ」と述べました。

そのうえで、
▽デジタルやクリーンエネルギー技術を柱とする科学技術立国の推進や、
▽半導体分野などでの強じんなサプライチェーンを構築する経済安全保障の強化、
▽官と民の連携による人への投資など、
内閣が最優先で取り組む課題について、来月上旬にも緊急提言案を取りまとめるよう山際大臣に指示しました。

そして「デジタル田園都市国家構想実現会議」や「デジタル臨時行政調査会」を立ち上げるほか「新たな全世代型社会保障構築会議」を設置し、看護師や介護士などの所得の向上のため、報酬や賃金の在り方を検討する委員会を設ける考えを示しました。

松野官房長官「さまざまな視点から議論を」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「会議では今後、新しい資本主義や実現する具体的な施策を議論し、来春には取りまとめを行う予定だ。メンバーは、およそ半数が女性で、老壮青の各世代から構成され、いずれも各分野での経験や見識を持っている方だ。今後もマクロ経済の視点や国際的な視点、デジタルやスタートアップの視点、労働者や中小企業の視点など、さまざまな視点から議論していただきたい」と述べました。

山際経済再生相「方向性のあるもの出すイメージ」

山際経済再生担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「緊急提言の中身には経済対策も含まれる。さらには来年の通常国会に向けて、法改正などが必要になるものもゼロではなく、税に関して触れる可能性も十分ある。緊急提言なので、足元の経済対策が大きいとは思うが、ある程度、方向性のあるものとして出すことをイメージしている」と述べました。

立民 枝野代表「手順全く違い理解不能」

立憲民主党の枝野代表は、宮崎市で記者団に対し「岸田総理大臣にとって『新しい資本主義』は看板政策のようだが、きょうになって会議体をつくった。つまり、国民には何も示さずにすでに選挙を行っているというのは手順として全く違い、私にはちょっと理解不能だ」と批判しました。

経団連 十倉会長 “脱炭素 成長戦略の1つの柱に”

「新しい資本主義実現会議」の初会合に出席した経団連の十倉会長は、記者団に対して「成長か分配かという二者択一ではなく、まずは成長しないと分配政策にも限度があるので成長戦略にしっかり取り組む必要がある。そのためにはデジタル化や脱炭素による社会変革を進めないといけないが、中でも脱炭素は国内の投資にもつながるので、これはしっかりやらないといけない」と述べ、政府や経済界が進める脱炭素社会の実現に向けた取り組みを、成長戦略の1つの柱にすべきとの考えを示しました。

渋沢健氏「分配の機会は平等であるべき」

民間の有識者で「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の孫の孫「やしゃご」にあたる投資信託会社会長の渋沢健氏は記者団に対し「分配というのは、結果は平等ではないかもしれないが、機会は平等であるべきだ。ただ、結果は可視化できるが機会はなかなか可視化できていないのが課題だ。機会が平等であることをきちんと可視化することが大切なのではないか」と述べました。

米良はるか氏「よい指標を作りよい経営を」

民間の有識者で、IT企業CEOの米良はるか氏は記者団に対し「時価総額や利益の最大化の追求だけが会社の価値ではなく、ステークホルダーを重要視した地方企業の在り方がこれからは求められてくるのではないか。ただ、その価値を測るのは非常に難しいので、政府と民間が共同しながらよい指標を作り、それをもとに企業がよい経営をして、国民が楽しく元気に生きていけるよう今後話していきたい」と述べました。