緊急速報用メール
“取りやめ”いったん見送り

気象庁は災害の危険が迫った際にスマートフォンなどに一斉に送る緊急速報用のメールの一部の配信を、今月下旬に取りやめることにしていましたが、「避難に必要な情報を得られなくなる」といった懸念の声が相次いでいるとして、いったん見送ることを明らかにしました。全国の自治体で情報がどのように伝えられているかなどを確認し、今後も配信を続けるかどうか判断するとしています。

気象庁は、災害の危険性や避難の情報を速やかに知らせるため携帯電話事業者を通じてスマートフォンや携帯電話にメールで通知していますが
▽大雨や暴風などの特別警報と
▽噴火警戒レベルが4と5に当たる噴火警報の配信を
今月28日に取りやめると発表していました。

これについて斉藤国土交通大臣は15日の記者会見で「避難に必要な情報を得られなくなるのではないかという懸念の声が寄せられている。全国の地方自治体に気象庁の情報に基づいて住民に避難を促す情報提供が適切に行われているか確認したうえで、メール配信をどうするかということを決めても遅くないのではないか」と述べ、気象庁に調査と結果の説明を行うよう指示したことを明らかにしました。

このあと気象庁の担当者が取材に応じ「先日、配信を終了すると説明したが、その後、気象庁に『避難に必要な情報を得られなくなる』といった懸念の声が相次いでいる。国土交通大臣の指示を受け28日での配信の終了はいったん見送る」と述べ、配信の取りやめを一時、延期することを明らかにしました。

今後も配信を続けるかどうかは、自治体への確認を終えたのち判断するとしています。

気象庁企画課の室井ちあし課長は「自治体側の状況についてわれわれの認識不足や課題があるかもしれないということで再度、確認が必要と判断した。結果的に混乱させてしまったのであればおわびしたい」と述べました。

この問題をめぐっては防災の専門家から「できるだけ多くの手段で災害情報を発信する体制が整えられてきたのに逆行する動きだ」という指摘が出ていました。

これまでの経緯は

気象庁が取りやめるとしたメールサービスやその理由、これまでの経緯についてまとめました。

災害や避難に関する情報を対象の地域の人に速やかに知らせるため、携帯電話事業者は「エリアメール」や「緊急速報メール」といった名称で、スマートフォンや携帯電話に無料で国や自治体の情報を配信するサービスをしています。

気象庁はこのうち、6年前から始めた
▽大雨や暴風など気象に関する特別警報と
▽噴火警戒レベルが4と5にあたる噴火警報の配信に関して
今月28日にとりやめると発表しました。

緊急地震速報や津波警報・大津波警報は配信が継続されます。

取りやめの理由は

取りやめの理由について
▽すべての自治体が避難指示などの避難情報をメールで伝えられるようになったことや
▽民間などによるアプリで避難や気象情報の配信が拡大し「気象庁のメール配信の役割は終えたため」としています。

これについて自治体の担当者からは、以下のような声が上がっていました。
「防災体制に直ちに影響があるわけではないが、線状降水帯などで急な豪雨のおそれもあり最大級の警戒を呼びかけるメールが突然配信されなくなるのは戸惑いがある」(熊本市)
「気象災害をはじめ火山も抱えているので、住民に密接に関わる情報だ。誤解がないよう説明や周知をしてほしい」(鹿児島市)

また、災害情報の専門家(東京大学大学院 関谷直也准教授)からも「これまでは避難が遅れる人が出ないよう気象庁、自治体、民間事業者とできるだけ多くの手段で災害情報を発信する体制が整えられてきた。逆行する動きで拙速に廃止すべきではない」などといった指摘が出ていました。

継続には多額の費用が

また、取りやめの背景には気象庁の“厳しい懐事情”もあることが気象庁関係者への取材で明らかになっています。

気象庁によりますと、システムの運営には年間およそ1200万円がかかっていたということです。また、セキュリティー関連費用など配信を継続するための設備の更新におよそ3億円の費用がかかることが分かりました。

気象庁の年間予算が例年600億円前後ということを考えれば、決して少ないとはいえず、関係者は「これ以上、税金を使うのは難しいとの結論になった」とか「気象庁内でもいきなりやめることに理解が得られるのかといった意見があった」と話しています。

一連の経緯について、気象庁企画課の室井ちあし課長は配信取りやめの方針は予算とは関係がないとしたうえで「大臣から指示を受けこれから具体的な方法を検討して進めたい」と述べました。