北朝鮮拉致問題で日本を牽制
「完全に終わった問題だ」

北朝鮮外務省は岸田総理大臣の就任に言及し、日米首脳による電話会談で拉致問題をめぐって意見が交わされたことについて「われわれの努力によってすでにすべて解決され、完全に終わった問題だ」として、牽制しました。

北朝鮮外務省傘下の日本研究所は7日、外務省のホームページを通じて談話を発表しました。

この中で岸田総理大臣が今月5日、アメリカのバイデン大統領と電話会談を行い、拉致問題の即時解決に向けて理解と協力を求めたことを念頭に「岸田総理大臣は就任するやいなや一部の国の首脳との対話で拉致問題を取り上げた」としています。

北朝鮮の報道を分析している「ラヂオプレス」によりますと、北朝鮮が公式に岸田総理大臣の就任に言及したのは、これが初めてです。

談話では「拉致問題は日本の総理大臣がピョンヤンを訪問し、その後のわれわれの努力によってすでにすべて解決され、完全に終わった問題だ」と主張して、牽制しました。

そして「最初からボタンをかけ違えれば関係はさらに濃い暗雲の中に陥るだろう」としたうえで改めて植民地支配の謝罪と賠償を求めました。

拉致問題をめぐって岸田総理大臣は、拉致被害者の家族会の代表らに電話して岸田内閣でも最重要課題の1つだと伝え、すべての拉致被害者の帰国に向けて全力で取り組む考えを示しています。

松野官房長官“北朝鮮の主張 全く受け入れられない”

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「『拉致問題がすでに解決された』との主張は全く受け入れることができない。わが国としては、日朝ピョンヤン宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化の実現を目指す考えに変わりはない」と述べました。

そのうえで「拉致問題は内閣の最重要課題であり、ご家族も高齢となる中、拉致問題の解決には一刻の猶予もない。岸田総理大臣自身、条件を付けずに、キム・ジョンウン(金正恩)総書記と直接、向き合う決意を述べている。ご家族の皆さんの思いを胸に刻み、すべての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、政府一体となって全力で取り組んでいきたい」と述べました。