連合 新会長に芳野友子氏
ミシンメーカーで労働組合に

連合の定期大会が開かれ、新しい会長にこれまで副会長を務めてきた芳野友子氏が選出されました。
女性が会長に就任するのは初めてです。

連合の定期大会は6日、東京都内で開かれ、3期6年務めた神津会長の退任に伴う役員の改選が行われました。

その結果、新しい会長に、これまで副会長を務めてきた芳野友子氏が選出されました。

芳野氏は、55歳。

機械や金属産業などの中小企業の労働組合で作る「JAM」の出身で、2015年から連合の副会長を務めてきました。

1989年の連合発足以来、女性が会長に就任するのは初めてです。

また、事務局長には、日本教職員組合の委員長を務めてきた清水秀行氏が選出されました。

清水氏は62歳。

官公労系の労働組合出身者が事務局長に就くのも初めてです。

芳野新会長は選出後あいさつし「残念ながら女性には『ガラスの天井』があり、本人たちの気持ちとは裏腹に労働界から去る姿を見てきた。額に汗かく労働者のために現場に寄り添い、安心して働き続けられる環境を整えていくことが重要だ。コロナ禍で組合活動の在り方も岐路に立たされていて、1人でも多くの声を受け止め、運動を前進させていきたい」と述べました。

芳野新会長の経歴

芳野氏は、東京都出身の55歳。

1984年にミシンメーカー「JUKI」に入社し、ほどなくして会社の労働組合の活動に専従で携わるようになりました。

1999年からは機械や金属産業などの企業の労働組合で作る組織「JAM」の中央執行委員となり、中小企業で働く人たちの労働条件の改善などに向けた現場での活動を主導しました。

そして、2001年から連合の中央執行委員を務めたあと2015年には、連合と「JAM」双方の副会長に就任しました。

このほか、内閣府の「男女共同参画会議」などのメンバーも務めていて、女性の働き方の改善にも取り組んでいます。

芳野氏「ジェンダー平等の視点を重視」

女性として初めて連合の会長に選出された芳野友子氏は、NHKのインタビューでジェンダー平等の視点を重視し、働く環境の改善に取り組んでいく考えを強調しました。

この中で、芳野新会長は、選出の経緯について「まさか会長就任の推薦がくるとは思っていなかったので非常に戸惑い、困惑した。ただ『ガラスの天井』を突き破るチャンスを逃してはいけないと思い、覚悟を決めた」と述べました。

そのうえで「女性が連合のトップになる意義は大きい。連合による労働運動のすべてにジェンダー平等の視点を入れていくことが私の役割で、組織の意思決定の場に女性を登用していきたい」と抱負を語りました。

そして、働く人を取り巻く状況について「増加傾向にある非正規で働く人の処遇改善がとても重要で、最低賃金をもっと引き上げていく必要がある」と述べました。

また「育児や介護の休業制度などは整ってはいるが、女性が働き続けるためには、男性の働き方も変えていかなければいけない」と指摘しました。

一方、新型コロナウイルスの雇用などへの影響については「弱い立場の人への影響が明確になってきた。正規と非正規の雇用形態の違いや、障害者、若者、外国人など、さまざまな要素が複合的に混ざり合っている」と述べ、総合的な支援に取り組む考えを示しました。

松野官房長官「引き続きの活躍を期待」

松野官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で「芳野さんは、これまで、ジェンダー平等や多様性の推進などの取り組みを積極的に行ってきたと伺っており、会長になられても、引き続き、活躍されることを期待する」と述べました。

そのうえで「連合には、引き続き、労働者の代表として、厚生労働省の審議会での活発な議論などをお願いするとともに、新型コロナウイルスから国民の生活と雇用を守ることに全力で取り組んでいただきたい」と述べました。

一方、松野官房長官は、総理大臣と連合会長による定期的な意見交換「政労会見」を行うのかと問われたのに対し「連合とは、前政権でも、官房長官要請などの場で意見を伺ってきた。今後も、名称にはこだわらず、意見を伺っていきたい」と述べました。

連合とは

連合=日本労働組合総連合会は、1989年に結成された日本の労働組合を代表する中央組織です。

連合によりますと、傘下の組合員は、およそ704万人ということです。

働く人の地位の向上や権利を守ることを目指して取り組んでいますが、最近は、政府が直接、経済界に賃上げを求める「官製春闘」とも呼ばれる動きが続き、連合の存在感の低下を指摘する声も出ています。

また、昭和のピーク時は50%を超えていた各労働組合の組織率は、去年6月時点の厚生労働省の推計ではおよそ17%にまで下がっています。

一方で、働き方は多様化していて、非正規労働者の増加に加え、企業と雇用契約を結ばずに単発の仕事を請け負う「ギグワーク」と呼ばれる働き方も広がっています。

このため「正社員」以外の加入をどう図っていくのかなど、新たな課題にも直面しています。

連合会長の役割

連合の会長は、労働運動のけん引役としての情報発信や、春闘などを通じた経営側との交渉、それに、政策提言や政治課題をめぐる調整など、その役割は多岐にわたります。

労働界を代表して、経済や働き方改革に関する国の有識者会議などのメンバーに入るケースもあります。

初代会長は、当時政界にも大きな影響力のあった山岸章氏。

会長はこれまでに7人いてすべて男性です。

任期は2年で再選も認められていて、2007年以降、これまで7回は、主要な労働組合の代表者でつくる「役員推せん委員会」の事前の調整で、無投票で選出されています。

今回は事前の協議が難航し、先月下旬になって、芳野新会長が内定しました。

背景には、組織内の路線対立が影響したという見方もあります。

芳野新会長には、雇用や労働をめぐる課題への取り組みに加え、組織の融和をどう図っていくかも課題になりそうです。