自民党総裁選 公開討論会
エネルギー政策などで論戦

自民党総裁選挙に立候補した4人は、日本記者クラブが主催する公開討論会に臨み、エネルギー政策や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた医療提供体制などについて論戦を交わしました。

エネルギー政策

河野規制改革担当大臣は「私が言う『脱原発』は、耐用年数が来た原発を速やかに廃炉にし、緩やかに離脱していくことだ。それまでに石炭・石油の発電をなるべく早く止め、省エネでエネルギー消費を減らし、再生可能エネルギーを増やしていかなければならない」と述べました。

岸田前政務調査会長は「2050年のカーボンニュートラルの実現は私も共有する。クリーンエネルギーを用意しなければならず、再生可能エネルギーが最優先だ。核燃料サイクルは止めてしまうと、プルトニウムが積み上がり、外交問題に発展してしまうのではないか」と述べました。

高市前総務大臣は「デジタル化により消費電力量の急増が予測される。小型原子炉の地下への立地や、高レベルの放射性廃棄物を出さない核融合炉などにしっかりと研究開発費を投入していくべきだ。これがエネルギーの安定供給につながっていく」と述べました。

野田幹事長代行は「エネルギーは安定供給が前提で、その時代にあるものをしっかりと形にはめていくことが重要だ。日本の地熱発電の資源は世界3位で、ほかの国にお願いしなくてもよいエネルギーだ。『お金がかかる』という理由で進まなかったが、ぜひ進めたい」と述べました。

医療提供体制

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた、医療提供体制について、

河野氏は「非常時の指揮命令や権限は見直さなければならず、臨時病院の設置にも同じことが言える。これまでの対応では、遅れたと言わざるを得ない。重症化した人を入院させる一方回復した人を臨時病院や中等症・軽症の病床に移していくことがうまくいかなかった」と述べました。

岸田氏は「国がより強力な調整機能を発揮するには新たな工夫が必要だ。平素から中核病院のような指定を行い、診療報酬の上乗せなどの優遇を与えて半強制的に病床を出し、応じない場合はペナルティも考えるなどの仕掛けをつくって、国の強力な権限を維持していくことが大事だ」と述べました。

高市氏は「緊急事態に、国や自治体が医療機関や医療従事者に対して病床確保などの必要な対応を命令する権限を持つことも含めて法案化したい。総理大臣になったら、来年の通常国会に法案を提出する」と述べました。

野田氏は「自宅療養は、急変した時に手が届かないのでもう無理だ。病院で受け入れられないのであれば、『サブホスピタル』を国がつくり、検査で陽性になった人を速やかに送って、医療をしっかりサービスすることが肝要だ」と述べました。

対中国外交

河野氏は「中国に何かを起こさせない国際社会の強い意思を見せる必要がある。日中関係は安全保障だけでなく、経済や人的交流もあり、したたかに外交を繰り広げていかなければならない。首脳会談は定期的に実施し、しっかり意思疎通を図ることが大事だ」と述べました。

岸田氏は「権威主義的な姿勢が拡張する中普遍的な価値を共有する国々と、中国に大国としての振る舞いを訴えていかないといけない。台湾問題は、平和に解決するため努力するがもし有事が起これば、国民の命と安全を守るために平和安全法制の規定に従って対応していく」と述べました。

高市氏は「台湾有事の可能性は高いと考えて備えないといけない。日本でできることは特に軍事面で限られており、国防力の面でも限定されている。現実的には、抑止と対処に必要な能力をわが国が保有し、日米同盟で補完する方法が考えられる」と述べました。

野田氏は「アメリカと中国が対立する中、日本が現実的な対応をするかがカギになる。日本は戦後、平和主義のもとで非戦を誓ってきており、しっかりとした外交をトップがやっていくべき時期にきている」と述べました。

このほか、
河野氏は、年金制度改革について「構造的に今の保険料の制度では、最低保障の年金が出せないことは明らかだ。税金で賄って、一定以上の所得や資産がある人には、最低保障の部分は払わないということにするしかない。抜本的な改革をやらなければ若い人の将来の年金生活が維持できない」と述べました。

岸田氏は、財政健全化について「消費税は10年程度は上げることは考えない。財政は国の信用の礎で、財政再建の旗は下ろしてはならないが、すぐに増税で財政赤字を埋めることは全く考えていない。成長と分配の好循環を作り上げ、それに適した予算を精査して財政を考える」と述べました。

高市氏は、新型コロナ対策での「ロックダウン」=都市封鎖について「今すぐ『ロックダウン』の必要があるとは思わないが、変異株が入ってきて治療薬やワクチンが効かない事態など最悪の事態を想定した法整備をする必要がある。与野党で合同チームを作って合意を得て、国会に法案を提出するのが現実的ではないか」と述べました。

野田氏は、子どもに関する政策について「世界中の投資家は、この国が持続可能かどうか見ており、毎年70万人程度も子どもが産まれてこない国家は持続可能だと見なされない。集中的に投資して巻き返すという、大きなアジェンダとして取り組むべきだ」と述べました。